自作PCの電源の計算方法~パーツごとの消費ワット数
目次
電源ユニットの目安は「最大消費電力の2倍」
電源ユニットを購入する際の目安は「消費電力の2倍」といわれています。
電源ユニットの容量に対する消費電力の比率を負荷率と言いますが、負荷率が80%や90%の状態が長く続くと、後述する電気の変換効率が下がるだけでなく、電源に負荷がかかり続けることにより故障のリスクも高まります。
また。自作の醍醐味ともいえるパーツの増設や交換を行う際にも、電源の容量に余裕がないと新たに高性能な(消費電力の大きな)パーツを搭載することができなくなってしまうので、容量には余裕をもたせておきましょう。
電気変換効率と負荷率
電源ユニットは、家庭用のAC電源をDC電源に変換してPCに電源を供給するパーツです。しかし、AC電源からDC電源に変換する際、供給される電源は電源ユニットそのものの駆動などによりロスが発生し、100%そのまま変換されるわけではありません。
このAC電源からDC電源に変換する際の効率を電気の変換効率と呼びます。電源ユニットには変換効率の指標として「80PLUS」という共通規格があり、 StandardからPLATINUMまで5段階のグレードが設定されています。
「80PLUS」の認証がついた電源ユニットは、どれも80%以上の変換効率を誇り、グレードが上がれば上がるほど変換効率も高いものになります。変換効率は、負荷率にも影響され、前述のように消費電力に対し電源の容量が2倍(容量に対し50%負荷率)の状態が一番、変換効率が良いとされています。
「80PLUS」認証の各グレードと、負荷率ごとの変換効率をまとめましたので、電源ユニットを購入する際の参考にしてください 。
負荷率20% | 負荷率50% | 負荷率100% | |
80PLUS Standard | 80% | 80% | 80% |
80PLUS BRONZE | 82% | 85% | 82% |
80PLUS SILVER | 85% | 88% | 85% |
80PLUS GOLD | 87% | 90% | 87% |
80PLUS PLATINUM | 90% | 92% | 83% |
上記のように負荷率が低い(20%)の場合も50%の場合と比べて変換効率は落ちます。消費しない電力が多すぎても変換効率は落ちるので、電源ユニットを選ぶ際は、使用するパーツの消費電力を計算して、負荷率50%に近い状態を作ることが重要です。
部品の劣化防止
負荷率が高い状態で電源ユニットを使い続けると、発熱などによりパーツに負担がかかり、どんどんパーツが劣化していきます。特に80%や90%という高負荷な状態が続くと、電源ユニットへの負担は大きく、故障のリスクが一気に高まりますので、新しいパーツを増設したり、交換したりする場合も、消費電力をしっかりとチェックして、電源ユニットに高い負荷をかけ続けないよう留意しましょう。
今後の拡張のためのバッファ
自作の醍醐味といえば、パーツの交換や増設です。最初から負荷率80%や90%の状態でPCを組んでしまった場合、前述のように電源ユニットに負担がかかり続けるだけでなく、増設やパーツ交換の余地もなくなってしまいます。
負荷率50%以下でPCを組んでおけば、パーツの交換や増設を行う際のバッファも確保できますので、50%を目安に、近々で新たなパーツを増設する予定があるなら、50%以下の状態にしておくのがベストでしょう。
電源ユニットと消費電力の関係に続いては、各パーツの消費電力の目安を見ていきましょう。メモリやストレージ、マザーボードの消費電力は、どのパーツを選んでもそこまで大きな差はありませんが、電力を必要とするCPUやGPUは高性能なものほど、消費電力が高くなる傾向があります。
CPUの消費電力(ワット数)目安
CPUは製品にもよりますが、ローエンドからミドルエンドのモデルで100W程度、ハイエンドのモデルですと200W台のものも多く、250Wに迫るハイエンドモデルもあります。
以下に代表的なCPUと最大負荷時の消費電力をまとめましたので、消費電力を計算する際は参考にしてください。
CPU | 最大負荷時 |
Core i9 9980XE | 245 W |
Core i9 7960X | 224 W |
Ryzen TR 2990WX | 249 W |
Ryzen TR 2950WX | 179 W |
Core i7 9700K | 200 W |
Core i7 8700K | 160 W |
Ryzen 7 2700X | 125 W |
Core i5 9600K | 119 W |
Ryzen 5 2600X | 111 W |
Core i3 8350K | 99 W |
GPUの消費電力(ワット数)目安
グラフィックボードに搭載されているGPUもCPUと同様に性能と比例して消費電力が大きくなる傾向があります。ローエンドのものは100W以下、ミドルエンドのものは150W程度、ハイエンドのものは200W以上の電力が必要で、300Wに迫るモデルも登場しています。
以下に代表的なGPUとゲーミング時の消費電力をまとめましたので、消費電力を計算する際は参考にしてください。
GPU | ゲーミング時 |
RTX 2080 Ti | 279 W |
RTX 2080 | 226 W |
RTX 2060 | 158 W |
RX Vega 64 | 293 W |
RX 590 | 238 W |
GTX 1080 Ti | 276 W |
GTX 1070 Ti | 180 W |
RX 570 | 158 W |
GTX 1050 Ti | 67 W |
GT 1030 | 32 W |
メモリの消費電力(ワット数)目安
メモリの消費電力は容量よりも搭載する枚数によって左右されます。消費電力は規格や製品によって異なりますが、概ね1枚につき5W程度と考えておけば問題ないでしょう。4GBのメモリを2枚搭載しても10W程度しか電力を消費しませんので、メモリの消費電力はあまり気にしなくてもよいでしょう。
ストレージの消費電力(ワット数)目安
SSDやHDDといったストレージも、容量よりも搭載する台数によって消費電力が左右されます。おおまかにSSDは一台につき10~15W程度、HDDは一台につき25W程度の電力を消費するものと考えておけば問題ありません。
ストレージの消費電力も決して高いものではありませんが、大量のデータを保存するため五台、十台といった単位で搭載する場合は、それなりの電力が必要になりますので、しっかり計算しておきましょう。
マザーボードの消費電力(ワット数)目安
マザーボードの消費電力もモデルによりますが、最大50W程度です。マザーボードを複数搭載することはありませんので、どんなPCを組む場合もマザーボードで30Wは電力を消費するものと覚えておけば問題ありません。
まとめ
電源ユニットは消費電力の2倍の容量(負荷率50%)の状態で最もパフォーマンスを発揮します。消費電力が大きなパーツはCPUとGPUなので、まずはこの二つをチェックして消費電力を計算したら、他のパーツの消費電力も考慮しつつ、全体の消費電力の2倍程度の容量を持つ電源ユニットを購入しましょう。その際、電源ユニットの性能を表す。「80PLUS」認証のグレードもチェックしてみてください。