GeForce RTX 3070の性能レビュー&ベンチマークをDDIYerが検証!ゲーミング性能・平均FPSを実機計測
NVIDIAのGPUである「GeForce」は、RTX 30シリーズを迎えて大きな飛躍を遂げました。「GeForce RTX 3070」は2020年10月に発売された、ミドルレンジクラスのグラボです。ミドルレンジとはいえ、先代のハイエンドモデルとほぼ同等のスペックを誇ります。
GeForce RTX 3070の大きな特徴はコストパフォーマンスの良さです。4Kやレイトレーシングが可能でありながら価格が安く、しかもワットパフォーマンスも抜群。コストを抑えて高性能なゲーミングPCを自作したい人におすすめのグラボです。
今回はそんな「GeForce RTX 3070」について、スペックやDDIYerのユーザーによる実機計測したベンチマーク結果を交えて詳しく解説します。DDIYerが集まるDigital DIYerはこちら!
GeForce RTX 3070とは
「GeForce RTX 3070」は、NVIDIAが2020年9月から展開している「GeForce RTX 30シリーズ」のミドルレンジモデルです。ナンバリングとしてはミドルレンジですが、最大クロックが1725MHzで理論性能が20TFLOPSを超えるなど、スペックはハイエンド並み。
「Ampere」アーキテクチャを採用したRTX 3070は、RTX 2070やRTX 2070 Superの後継機種という位置づけです。NVIDIAは「RTX 2080 Tiの半額でほぼ同じスペック」を得られるとしています。まずは次の5つの観点から、RTX 3070のスペックを検証していきましょう。
- GPUエンジンの仕様
- メモリの仕様
- テクノロジサポート
- GeForce RTX 3070とGeForce RTX 2070の違い
- GeForce RTX 3070とGeForce RTX 3060 Tiの違い
なお、スペックはこちらを参考にしています。
GPUエンジンの仕様
GeForce RTX 3070のGPUエンジンの仕様は次のとおりです。
スペック | |
---|---|
NVIDIA CUDA® コア数 | 5888基 |
ベースクロック | 1.50GHz |
ブーストクロック | 1.73GHz |
引用元:https://www.nvidia.com/ja-jp/geforce/graphics-cards/30-series/rtx-3070/
他機種との比較は後ほど行いますが、注目すべきはCUDAコア数です。先代のハイエンドモデル「RTX 2080 Ti」のコア数は4352だったので、RTX 3070は1,536基も多いことになります。コア数はGPUの処理速度を左右する要素のひとつなので、とても心強いですね。
気になるクロック数は、先代から順当に向上しています。「RTX 2080 Ti」のブーストクロックが1545MHzだったので、RTX 3070はベースクロックでほぼ同等の速度を出るということです。コア数もクロック数も向上しているのは素晴らしいですね!
メモリの仕様
GeForce RTX 3070に搭載されているメモリの仕様は次のとおりです。
スペック | |
---|---|
標準メモリ構成 | 8GB GDDR6 |
メモリインターフェイス幅 | 256ビット |
上位モデルではGDDR6Xを大量に搭載していますが、RTX 3070のメモリ構成は先代のRTX 2070とほとんど同じです。RTX 2080 TiのVRAMが11GBだったので、そこから3GB減っていることになります。
詳細は後述しますが、RTX 3070のただひとつの不安点がVRAM容量です。4K環境が広まるにつれて、ゲームに要求されるVRAMはどんどん増えています。グラボを長期間使い続けるのであれば、この点に留意しておく必要があるでしょう。
テクノロジサポート
GeForce RTX 3070のテクノロジサポートは次のとおりです。
スペック | |
---|---|
レイ トレーシング コア | 第2世代 |
Tensor コア | 第3世代 |
NVIDIA アーキテクチャ | Ampere |
Microsoft DirectX® 12 Ultimate | 〇 |
NVIDIA DLSS | 〇 |
PCI Express Gen 4 | 〇 |
Resizable BAR | 〇 |
NVIDIA® GeForce Experience™ | 〇 |
NVIDIA Ansel | 〇 |
NVIDIA FreeStyle | 〇 |
NVIDIA ShadowPlay | 〇 |
NVIDIA Highlights | 〇 |
NVIDIA G-SYNC® | 〇 |
Game Ready ドライバー | 〇 |
NVIDIA Studio ドライバー | 〇 |
NVIDIA GPU Boost™ | 〇 |
NVIDIA NVLink™ (SLI-Ready) | × |
Vulkan RT API、OpenGL 4.6 | 〇 |
HDMI 2.1 | 〇 |
DisplayPort 1.4a | 〇 |
NVIDIA エンコーダー | 第7世代 |
NVIDIA デコーダー | 第5世代 |
R Ready | 〇 |
GeForce RTX 3070は、現在有効なテクノロジーの大半をサポートしています。注目点は「レイトレーシング」や「NVIDIA DLSS」です。レイトレーシングはリアルな光源処理を実現できる高負荷な処理ですが、RTX 3070では十分なパフォーマンスを出せます。
NVIDIA DLSSはディープラーニングによって、アンチエイリアシングの負荷を軽減できる技術。RTX 3070は新世代のTensorコアを搭載しているため、DLSSの効果もさらに高まっているようです。
ただし、RTX 3070は「NVIDIA NVLink」に対応していません。これはグラボを2枚接続する「SLI」を可能にする便利なテクノロジー。前世代のRTX 20シリーズではSLIを利用できましたが、RTX 30シリーズはRTX 3090以外では利用できないので注意が必要です。
GeForce RTX 3070とGeForce RTX 2070の違い
GeForce RTX 3070のカタログスペックについて確認した後は、他のモデルとの比較を行ってみましょう。まずは先代の「GeForce RTX 2070」との比較です。新世代になってどれほどの進化を遂げたのでしょうか?
GeForce RTX 3070 | GeForce RTX 2070 | 比較 | |
---|---|---|---|
アーキテクチャ | Ampere | Turing | 新世代へ |
コードネーム | Ampere GA104 | Turing TU106 | 新世代へ |
タイプ | デスクトップ | デスクトップ | 同じ |
発売日 | 2020年9月16日 | 2018年8月27日 | 約2年新しい |
シェーダープロセッサの数 | 5888 | 2304 | +3584 |
コア周波数 | 1500MHz | 1410MHz | +90MHz |
Boost周波数 | 1725MHz | 1620MHz | +105MHz |
トランジスタの数 | 174億 | 108億 | +66億 |
製造プロセス | 8nm | 12nm | -4nm |
消費電力(TDP) | 220W | 175W | +45W |
消費電力(TDP) | 220W | 175W | +45W |
テクスチャリングの速度 | 317.4GTexel/s | 233.3GTexel/s | +84.1GTexel/s |
Tensorコア数 | 184 | 288 | -104 |
RTコア数 | 82 | 36 | +46 |
VRAM帯域幅 | 448GB/s | 448GB/s | 同じ |
理論性能(単精度) | 20.31TFLOPS | 7.465TFLOPS | +12.845TFLOPS |
引用元:GPU CHECK
上記のとおり、ほぼすべての項目でスペックが向上しています。アーキテクチャが新世代へ更新されたことにより、プロセスが4nm縮小されてトランジスタ数も大幅に増加。クロック周波数が100MHz近く向上してコア数も倍増するなど、スペックの進化は明らかです。
なお、Tensorコアは先ほどご紹介したDLSSに使用されますが、そのコア数は先代より減少しています。しかし、Tensorコアの世代自体が更新されているため、処理速度はむしろ向上しているのです。理論性能を見ても、単純計算で倍以上の処理速度を実現しています。
参照:https://technical.city/ja/video/GeForce-RTX-2070-vs-GeForce-RTX-3070
同じCPU(Intel Core i9-10900K)を使用したベンチマーク結果によると、解像度に関わらずほとんどの場合で1.5倍のスペック向上を見込めるようです。例えば、RTX 2070で100FPSが出ていた場合は、CPUが同じ場合は150FPSくらい出せる可能性があります。
GeForce RTX 3070とGeForce RTX 3060 Tiの違い
先代モデルとのスペックを比較した後は、同世代の下位モデルである「GeForce RTX 3060 Ti」との比較も行ってみましょう。上位モデルの優位性はどれくらいあるのでしょうか?
GeForce RTX 3070 | GeForce RTX 3060 Ti | 比較 | |
---|---|---|---|
アーキテクチャ | Ampere | Ampere | 同じ |
コードネーム | Ampere GA104 | Ampere GA104 | 同じ |
タイプ | デスクトップ | デスクトップ | 同じ |
発売日 | 2020年9月16日 | 2020年12月1日 | 約2か月古い |
シェーダープロセッサの数 | 5,888 | 4,864 | +1,024 |
コア周波数 | 1500MHz | 1410MHz | +90MHz |
Boost周波数 | 1725MHz | 1665MHz | +60MHz |
トランジスタの数 | 174億 | 174億 | 同じ |
製造プロセス | 8nm | 8nm | 同じ |
消費電力(TDP) | 220W | 200W | +20W |
テクスチャリングの速度 | 317.4GTexel/s | 253.1GTexel/s | +64.3GTexel/s |
Tensorコア数 | 184 | 152 | +32 |
RTコア数 | 82 | 38 | +44 |
VRAM帯域幅 | 448GB/s | 448GB/s | 同じ |
理論性能(単精度) | 20.31TFLOPS | 16.20TFLOPS | +4.11TFLOPS |
引用元:https://technical.city/ja/video/GeForce-RTX-3060-Ti-vs-GeForce-RTX-3070
基本的にはすべての点でRTX 3070の方がハイスペックです。アーキテクチャやコアの世代などは同じですが、CUDAコア数は1000近く多いですし、ベースクロックも100MHzほど高くなります。ちなみに、定価はRTX 3070が約7万円で、RTX 3060 Tiは6万円前後です。
Tensorコア数やRTコア数もRTX 3070の方が多く、理損性能でもRTX 3070の方が1.2倍ほど優れています。一方で、消費電力はRTX 3070が20W高いだけなので、RTX 3070のコストパフォーマンスやワットパフォーマンスの高さは明らかですね!
【実機検証編】GeForce RTX 3070のCPU性能・ゲーミング性能
ここまでは、GeForce RTX 3070の基本スペックや他機種との比較をご紹介してきました。しかし、一番大事なのは実際のパフォーマンスですよね。そこで、ユーザーから寄せられた声を元に、RTX 3070のパフォーマンス評価を行っていきましょう!
ROG-STRIX-RTX3070-O8G-GAMING × Core i9-9900K
Digital DIYerユーザーの「syake_2233」さんは、「ROG-STRIX-RTX3070-O8G-GAMING × Core i9-9900K」の構成でPCを組んでいます。
PCの詳しい構成は次のとおりです。
パーツ | 構成 |
---|---|
CPU | Core i9-9900K |
GPU | ROG-STRIX-RTX3070-O8G-GAMING |
メモリ | F4-3200C16D-16GTZR x2 計32GB |
マザーボード | ROG STRIX Z390-F GAMING |
ストレージ | SSD-3200C16D-16GTZR x2 計32G |
この構成に関する「syake_2233」さんのコメントは次のとおりです。
主な用途はゲームです。(VRを含む)よっぽど重いゲームでないか限り最高設定でプレイすることが可能であり、性能の不足を感じることはありません。その他にPhotoshopやPremiere Pro、After Effectsなども使用するのですが、基本的には快適に作業ができます。ですが、比較的重たい作業をする際には少しも動作がもっさりしてしまうこともあります。
この構成では、よほど負荷の高いゲームでなければ、最高設定の画質で快適にプレイできるようです。VRゲームでは基本的に90以上のフレームレートが必要ですが、VRゲームも満足にプレイできるスペックがあるようですね。
一方で、画像編集や動画編集を行うときに、負荷が高くなると動作が遅くなることがあるようです。動画編集は処理の内容によっては相当のスペックが要求されます。ただし、ゲーミング用途においては、十分な性能を発揮できるでしょう。
Cinebench
CPUのパフォーマンスを計測できる「Cinebench」でのベンチマーク結果は、マルチコアは8458、シングルコアで1077となりました。
CPUが「Core i9-9900K」というハイエンドモデルなので、ベンチマークの結果も優秀です。8コア/16スレッドなのでマルチコア性能が高く、どんなゲームでも十分な処理能力を発揮できます。この構成ならCPUがボトルネックになることはほとんどないでしょう。
FF15 ベンチマーク
ゲーミングでのパフォーマンスを計測できる「FF15 ベンチマーク」では、フルHDのフルスクリーン高品質設定で「10865」のスコアが出ました。
評価は「とても快適」なので最高水準ではありません。しかし、FF15は特に負荷の高いゲームなので、この結果は十分なものだと言えるでしょう。
上記のように、平均的なフレームレートは「144」となっています。一般的にゲーミングで必要なフレームレートは60なので、その2倍以上の数値を達成できるのは大きな魅力です。RTX 3070ならほとんどのゲームで十分なパフォーマンスを発揮できるでしょう。
FF14 ベンチマーク
同じくゲーミングのパフォーマンスを計測する「FF14 ベンチマーク」では、フルHDの高品質設定で15214のスコアが出ました。
FF14のベンチマークでは、7000以上のスコアを出せば「非常に快適」となります。FF14はかなり負荷の高いゲームですが、RTX 3070のスペックがあれば問題なく動作するようですね。なお、出力されるテキストファイルには、次のように記載されています。
- SCORE: 15214
- 平均フレームレート: 112.4873
- 最低フレームレート: 52
- 評価: 非常に快適
- 非常に快適に動作すると思われます。お好みのグラフィック設定でお楽しみください。
重要なのはフレームレートです。一般的なゲームではフレームレートが60あれば十分ですが、この構成では倍近くの112も出ています。VRゲームで要求されるのが90FPSなので、VRも高画質で快適に楽しめるということでしょう。
なお、最低フレームレートが52となっています。60以下なので低いように感じるかもしれませんが、最低フレームレートは負荷が集中したごく一瞬の数値です。平均値はそれよりもずっと高いので、カクつきなどが気になることはまずありません。
GeForce RTX 3070の特徴・性能評価
GeForce RTX 3070のスペックやベンチマーク結果について詳しく見てきました。これまでの内容を踏まえて、GeForce RTX 3070の特徴やスペックの最終的な評価を行っていきましょう。RTX 3070の重要なポイントは次の3点です。
- RTX 2080Ti並みのスペックが半額以下で手に入る
- ハイスペックかつ圧倒的なワットパフォーマンスを誇る
- 汎用性が高いが最高スペックを求める場合は不向き
RTX 2080Ti並みのスペックが半額以下で手に入る
RTX 3070のスペックは、前世代のフラッグシップモデルであるRTX 2080Tiとほとんど同じです。しかも、RTX 2080Tiの定価は約16万円だった一方で、RTX 3070は半額以下の約7万円。コストパフォーマンスの高さは圧倒的です。
もちろん、RTX 3070はハイエンドモデルではないので最高スペックではありませんが、フルHDやレイトレーシングなしの4Kゲーミングには十分な性能です。レイトレーシングも解像度や画質設定次第では問題なくこなせます。
コストを抑えてハイスペックなマシンを制作するなら、RTX 3070はベストな選択肢です。RTX 3080は10万円以上で、RTX 3090は20万円を超えます。RTX 2080Ti並みの性能が7万円ほどで手に入るのはRTX 3070ならではの強みです。
参照:https://gpu.userbenchmark.com/Compare/Nvidia-RTX-3070-vs-Nvidia-RTX-2080-Ti/4083vs4027
ハイスペックかつ圧倒的なワットパフォーマンスを誇る
RTX 3070は現在販売されているGPUの中で、最も高いワットパフォーマンスを誇ります。ワットパフォーマンスとは、1ワットあたりに発揮できる性能です。RTX 3070はどの解像度でも、トップクラスのワットパフォーマンスを出せます。
RTX 3070のTDPは220Wなので、決して低い消費電力ではありませんが、このクラスのスペックを220Wで実現できるグラボは他にありません。実際に、ほとんど同じスペックを持つRTX 2080TiのTDPが250Wでしたが、RTX 3070はそこから30Wも減っています。
とにかくスペックを重視する場合は、ワットパフォーマンスは気にならないでしょう。しかし、多くのゲーマーにとって消費電力は重要です。ハイスペックを低めの消費電力で実現できるRTX 3070は、間違いなく万人向けのグラボだと言えるでしょう。
汎用性が高いが最高スペックを求める場合は不向き
RTX 3070はコストパフォーマンスもワットパフォーマンスも高いため、汎用性が高く万人に向いているグラボです。しかし、4K解像度でレイトレーシングをONにするなど、負荷があまり高い場合はスペック不足を感じるかもしれません。
また、RTX 2080TiはVRAMを11GB搭載していたのに対し、RTX 3070は3GB少ない8GBとなっています。フルHDやWQHD(2560×1440)などでは、8GBでも十分です。しかし、4Kゲーミングの場合は、画質設定によっては8GBでも足りないことがあります。
4Kを最高画質設定でプレイしたい場合は、10GBのVRAMを搭載しているRTX 3080を選ぶ方が良いかもしれません。このように、使用目的によってはスペック不足を感じる場合もあるので、RTX 3070とRTX 3080のどちらが良いか慎重に検討してみましょう。
まとめ
RTX 3070は現在のところ、最もコストパフォーマンスとワットパフォーマンスが優れたグラボです。前世代のフラッグシップモデルと同レベルのスペックが、半額以下の価格で手に入るのは大きな魅力だと言えるでしょう。
近年注目を集めているレイトレーシングも、RTX 3070なら十分なパフォーマンスを発揮できます。新世代のTensorコアでDLSSの効果も高まり、4Kゲーミングも快適です。ハイスペックでありながら消費電力も低め。
ただし、VRAMが8GBなので4K解像度には物足りない場合があるため、RTX 3080の方が良いこともあります。コスパを重視するならこれ以上最適なグラボはないため、自作PCを制作するときはぜひ検討してみましょう。