超ハイスペックPC・ハイエンドPCの「できること」「用途」とは?自作・BTOの構成例も
一般的なデスクトップPCやノートPCを大幅に上回る性能を誇るのが「超ハイスペックPC」「ハイエンドPC」です。Microsoft Flight Simulatorなど重量級のゲーミングタイトルのプレイや、仮想通貨のマイニング、ディープラーニングといった用途に使用されます。
今回は「ハイエンドPCの使い道」「どの様な分野で役立てられているか」等も併せて、おすすめのハイエンドPCをご紹介します。
目次
超ハイスペックPC・ハイエンドPCの「できること」「用途」
まずはハイエンドPCの主な用途と、その概要を表にまとめました。
用途 | 概要 |
---|---|
3Dゲーム | いわゆる「ゲーミングPC」としての用途。 軽量なゲームから4Kでのプレイを前提とした「FF15」「Microsoft Flight Simulator」までスペックは様々。価格帯はハイエンドないしフラッグシップクラスなら50~70万円前後。 |
動画編集 | YouTubeなどの動画作成に使われる。かつてはCPUエンコードが主流だったが、近年GPUエンコードが普及したため、構成がゲーミングPCと似た仕様に。大容量のデータを扱うためメモリやストレージの容量要求が高めであることが特徴。 |
PCゲーム配信 | YouTubeなどでのPCゲーム配信。PCゲームの負荷+リアルタイムエンコードの負荷が同時に発生するため、通常のゲーミングPC以上のスペックが必須。ゲーム用PC、配信用PCに分けた2PC運用をするケースもある。 |
3Dモデリング、3DCAD | 3Dゲームや動画の作成、3Dプリンターを活用する場面で使用される。 |
機械学習・深層学習(ディープラーニング) | AI開発用途。スーパーコンピューターの分野で、主に大学や研究機関などで運用されている。 |
マイニング | 仮想通貨の新規発行・取引に必要な暗号解読に手持ちのPCの計算能力を貸し出すことで、仮想通貨での報酬が得られる。 計算のコア数が重視されるため、GPUを大量に接続して運用する。 |
「機械学習・深層学習」について補足します。
最先端の人工知能研究の分野では、大学や各種研究機関でスーパーコンピュータを活用することがあります。
一方で個人でハイエンドPCを購入し、アルゴリズムの研究等を行うケースもあります。たとえば棋士の藤井聡太氏は、将棋の研究目的にRyzen Threadripperを採用した70万円前後のハイエンドPCを利用しています。
ハイスペックが要求されるゲームタイトルの例
ハイスペックが要求されるゲームタイトルの例には「マインクラフト」と「Microsoft Flight Simulator」が挙げられます。
引用元:マインクラフト
マインクラフトは基本的には家庭用ゲーム機でも動作する軽量タイトルです。しかしアドオンやMODといった拡張機能導入によって処理が重たくなります。
MODの場合、人気があるのが画面に影を落とす「影MOD」。それまで200~300fpsといったフレームレートを出していたPCでも、影MOD導入後は30~60fpsまで落ち込むのは珍しくありません。
マイクラにおけるMODや推奨スペックに関しては、過去にまとめた記事がありますので、こちらも参考にしてみてください。
一方で、2021年7月時点でトップクラスにハイスペックを要求するゲームタイトルが「Microsoft Flight Simulator」です。航空機の操縦を疑似体験できます。
現実世界をモデリングしているため扱うデータが膨大であり、フラッグシップ級ゲーミングPCでも4Kの最高品質において都市部を飛行すると、フレームレートが20~30fps台まで落ち込むこともあります。
アップデートによる処理の最適化とフレームレート改善が見込まれてはいるものの、2021年時点で屈指の重量級タイトルであることは間違いありません。
ハイスペックが要求されるアプリ開発や各種処理の例
ハイスペックが要求される各種処理の例としては、身近ながらも意外性があるものとして「天気予報」が挙げられます。
人力で常に変動する気象データを読み取るのは大変です。そこでスーパーコンピューターを使ってデータ処理を高速化し、より早期の気象災害予測や今後の地球規模での気候変動予想への活用が期待されています。
AIを活用した将棋研究にも、ハイエンドPCが活用されています。棋士の羽生善治氏によると「人間が局面を判断するのに用いる要素は、手番、厚みなどせいぜい10程度。しかし、AIを搭載した将棋ソフトは現在、1万以上のパラメータを使って局面を判断」するとのこと。多くの棋士が将棋の研究にAIとハイエンドPCを活用しており、前述の通り、藤井聡太氏の場合はRyzen Threadripperを利用しています。
仮想通貨のマイニングもハイエンドPCの代表的な用途です。
仮想通貨は「暗号資産」とも呼ばれ、通貨の新規発行には暗号解読が求められます。早く解読した人に成功報酬が支払われる仕組みで、計算するコアの数が多くて速いほど、解読が早くなります。よって仮想通貨のマイニング事業者らはハイエンドPCを使用しています。
超ハイスペックPC・ハイエンドPCのスペックの目安
ハイエンドPCのスペック及び構成例、価格の目安を紹介していきます。なお紹介する価格帯や構成例はあくまで個人向けを想定しています。
一般的なゲーミングPCの場合、おおよそ15万円~30万円が売れ筋。一般的なPCに比べれば、これでも十分ハイスペックです。
そのハイスペックを更に上回る「超ハイスペック級」のPCの場合、GPUだけで15万円は軽く超え、全体としては40万円~50万円以上のPCが組みあがることになります。
自作PCの場合の構成例
一例として予算50万円のハイエンドPCの構成例を、自作PC向けとして紹介します。
CPU | Intel Core i9 11900K BOX | 66,980円 |
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CPUクーラー | NZXT KRAKEN X63 RL-KRX63-01 | 16,485円 |
マザーボード | ASUS ROG MAXIMUS XIII APEX | 53,790円 |
メモリ | crucial Ballistix BL2K16G32C16U4B [DDR4 PC4-25600 16GB 2枚組] | 19,280円 |
GPU | GIGABYTE AORUS GV-N308TAORUS M-12GD [PCIExp 12GB] | 244,860円 |
SSD | WESTERN DIGITAL WD_Black SN850 NVMe WDS500G1X0E-00AFY0 | 14,990円 |
SSD2 | WESTERN DIGITAL WD Blue 3D NAND SATA WDS100T2B0A | 12,980円 |
HDD | WESTERN DIGITAL WD60EZAZ-RT [6TB SATA600 5400] | 10,588円 |
光学ドライブ | ASUS BW-16D1HT PRO [ブラック] | 8,992円 |
電源ユニット | Corsair RM1000x CP-9020094-JP | 21,900円 |
PCケース | Thermaltake Core V51 TG CA-1C6-00M1WN-03 | 12,980円 |
OS | マイクロソフト Windows 10 Pro 日本語版 DSP版 | 16,580円 |
合計 | 合計価格 500,405円 |
第11世代インテル CPUを採用したハイエンドPC構成。使用用途としてはゲーム+配信および動画編集のイメージです。近年では配信もGPUエンコード可能になったことで、CPUのコア数は少なくても大丈夫なので、CPUはシングルスレッド性能を重視しています。
メモリーはヘビー級タイトルを想定して通常よりも多い32GBに、ストレージはOS、ゲーム、動画と3台に分けています。
この構成を元に見直す場所があるとすればGPUです。構成では映像出力端子が多い、GIGABYTEのAORUSシリーズを選んでいます。単体でみればRTX3080Tiと3090差は小さいのですが、3090の方はSLI構成が可能。ただAORUSの空冷式RTX3090は3.5スロット厚占有なので、拡張スロットの間も広く取る必要があります。SLI前提であれば、もう少し薄いモデルを選んだ方が良いかもしれません。
BTOパソコンの場合の構成例
ではPCショップなどが手掛けるBTOパソコンの場合はどうでしょうか。
例としてドスパラの「GALLERIA XA7R-R39」の構成を見てみましょう。
CPU | Ryzen7 3700X |
---|---|
CPUクーラー | サイズ 虎徹 MarkⅡ(SCKTT-2000) |
マザーボード | ASRock B550 TW |
メモリ | 16GB DDR4 SDRAM(PC4-25600/8GBx2/2チャネル) |
GPU | NVIDIA GeForce RTX 3090 24GB (HDMI x1,DisplayPort x3) |
SSD | 1TB NVMe SSD (M.2 2280,読込速度 3200MB/s,書込速度 3000MB/s) |
HDD | なし |
光学ドライブ | 光学ドライブ無し (※カスタマイズで選択可能) |
電源ユニット | 850W 静音電源 (80PLUS GOLD) |
PCケース | ガレリア専用 SKケース (ATX) スタンダード(ガンメタリック) |
ケースファン | 14cm 静音FAN(フロント、トップ、リアの計3か所) |
OS | Windows 10 Home 64ビット |
合計 | 409,979 円(税込) |
ドスパラのゲーミングPCブランドでもあるガレリア。ゲーミングPCらしいLEDイルミネーションを採用、サイドパネルもアクリルウィンドウがありPC内部が見える構造に。
XA7R-R39のパーツ構成ですが、CPUが旧世代のRyzen7 3700Xを採用。5000シリーズを採用したモデルとの価格差を付け、差別化が図られています。マザーボードはASRock社製のオリジナルモデルで、一般販売はされていません。
筆者としては「多くのゲーマーが求めるスペックを兼ね備えたゲーミングPC」という印象を受けました。たとえばストレージがSSDのみで1TBという大容量にされている点は、ゲーマーにとってはありがたいことです。動画編集やPCゲーム配信、3Dモデリングなどでも十分に活用できるでしょう。
ハイエンドPC向けのおすすめBTOブランド
ハイエンドPCの購入を考えている方に向け、おすすめのBTOブランドとPCをまとめました。まずはブランド一覧を紹介します。
ブランド | 特徴 | URL |
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LEVEL∞(レベル インフィニティ) | パソコン工房が手掛けるゲーミングPCブランド。プロゲーマーや配信者とのコラボモデルも多い。 ハイエンドPC LEVEL-G0X5-LCR59W-XAX-10G LEVEL-G02B-LCi9XE-XAXH など |
https://www.pc-koubou.jp/pc/game.php?pre=cmm_lga |
ガレリア | ドスパラが手掛けるゲーミングPCブランド。プロゲーマーをはじめ、多方面でのコラボモデルも多い。 【ハイエンドPC】 UA9R-R39、UA9C-R39 など |
https://www.dospara.co.jp/5gamepc/cts_gamepc_desktop |
G-GEAR | ツクモが手掛けるゲーミングPCブランド。会社としてはヤマダ電機の子会社でもあり、エントリーモデルからハイエンドな法人向けまで扱っている。 【ハイエンドPC】 G-GEAR neo GX9J-D212/ZT、G-GEAR neo GX9A-D212/XT など |
https://www.tsukumo.co.jp/bto/pc/game/ |
フロンティア | インバースネットが手掛けるBTOパソコンブランド(旧フロンティア神代)。 ヤマダ電機の子会社であり、一般向けPCも扱う。 【ハイエンドPC】 FRGBZ590/B、FRGBX570/C など |
https://www.frontier-direct.jp/direct/c/cdesktop/ |
おすすめの超ハイスペックPC・ハイエンドPC5選
ブランドに続き、実際に個人で購入可能なハイエンドPCを1つ1つ見ていきましょう。
ドスパラ GALLERIA ZA9R-69XT LC
引用元:https://www.dospara.co.jp/5shopping/detail_prime.php?tg=13&mc=10285&sn=0
CPU | Ryzen9 5900X |
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GPU | Radeon RX 6900 XT LC(簡易水冷) 16GB |
メモリ | 16GB DDR4 SDRAM |
SSD/HDD | 1TB Gen4 NVMe SSD / HDD 無し |
価格 | 439,980 円(税込)~ |
引用元:https://www.dospara.co.jp/5shopping/detail_prime.php?tg=13&tc=30&ft=&mc=10285&sn=0
100台限定で販売されているAMD社製CPUとGPUで固めたハイエンドPCです。
RX6900XTの簡易水冷はリファレンスデザイン。こちらはAMDから以前アナウンスされていたもので、完成品となったPCにのみ搭載されており、単体での販売予定は無いとされています。
GALLERIA ZA9R-69XT LC以外のRX6900XTの簡易水冷モデルは珍しく、ASUSから「ROG STRIX LC RX6900XT T16G GAMING」が販売されている程度。つまり日本では数少ない、簡易水冷RX6900XTを搭載したPCということになります。
CPUクーラーも「GAMMAXX L240 V2+」を採用して、簡易水冷化されており、より確かな冷却性能と静音性が期待できます。
フロンティア FRGBZ590/B
引用元:https://www.frontier-direct.jp/direct/g/g109383/
CPU | Core i9-11900KF |
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GPU | GeForce RTX 3090 |
メモリ | 32GB (16GB x2) PC4-25600 (DDR4-3200) DDR4 SDRAM DIMM |
SSD/HDD | 1TB M.2 NVMe SSD/2TB 3.5インチ S-ATA ハードディスク |
価格 | 439,800円(税込)~ |
引用元:https://www.frontier-direct.jp/direct/g/g109383/
Intel第11世代Core i9を採用したハイエンドPC。
組み合わせられるGPUもRTX3090を採用しており、ハイエンドPCの王道と言ったスタイル。メモリも32GBを標準装備としており、ヘビー級ゲームタイトルにも対応。
また1TBのMVMe SSDと2TBのHDDを備えていますので、読み込み速度を重視するゲーム=SSD、大きな容量を要求する動画や写真=HDD、という使い分けも出来ます。ゲームだけでなく仕事道具としても高性能なPCに仕上がっています。
パソコン工房 LEVEL-G0X5-LCR59W-XAX-ZETA DIVISION
引用元:https://www.pc-koubou.jp/products/detail.php?product_id=833417
CPU | Ryzen 9 5950X |
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GPU | GeForce RTX 3090 |
メモリ | 32GB(16GB×2)DDR4-3200 DIMM (PC4-25600) |
SSD/HDD | 1TB NVMe対応 M.2 SSD/HDDなし |
価格 | 511,478円(税込)~ |
引用元:https://www.pc-koubou.jp/products/detail.php?product_id=833417&ref=ryzen_5000_level_desk
プロゲーミングチーム「ZETA DIVISION(ゼータ ディビジョン)」とのコラボレーションPCです。
ゲーマーから多くの支持を集めているRyzen9 5950XとRTX3090の組み合わせとなっており、1フレームたりとも妥協しないという意思が伝わってきます。
メモリも32GB、SSDも1TBと大容量で、ヘビー級ゲームタイトルにも対応。CPUクーラーも3連ファンラジエーター搭載の簡易水冷を採用しており、高い冷却性能と静音性が期待できます。
ツクモ G-GEAR neo GX9A-D212/XT
引用元:https://www.tsukumo.co.jp/bto/pc/game/neo/2021/GX9A-D212XT.html
CPU | Ryzen9 5900X |
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GPU | GeForce RTX 3080Ti |
メモリ | 32GB (16GBx2枚) DDR4-3200 |
SSD/HDD | 1TB SSD(M.2規格 / NVMe Gen4接続)/HDDなし |
価格 | 479,800円(税込)~ |
引用元:https://www.tsukumo.co.jp/bto/pc/game/neo/2021/GX9A-D212XT.html
AMD製CPUとNvidia製GPUによるハイエンドゲーミングPCです。
簡易水冷が多用されるハイエンドPCですが、こちらのパソコンは空冷クーラーを標準としています(簡易水冷CPUクーラーのオプション有)。品質が良くなったとはいえ水漏れのリスクは常にありますので、水冷システムが不安な人にピッタリなハイスペックPCと言ええそうです。
パソコン工房 SENSE-FWTZ-LCRT3X-QRX
引用元:https://www.pc-koubou.jp/products/detail.php?product_id=816312
CPU | Ryzen Threadripper 3990X |
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GPU | RTX A6000 48GB GDDR6 |
メモリ | 128GB(32GB×4) DDR4-3200 ECC Unbuffered DIMM (PC4-25600) |
SSD/HDD | 1TB NVMe対応 M.2 SSD/HDDなし |
価格 | 1,373,980円(税込)~ |
引用元:https://www.pc-koubou.jp/products/detail.php?product_id=816312&pre=bct3682_bnr
64コア128スレッドのRyzen Threadripperを採用したワークステーションPCです。仕事にもつかえるゲーミングPCではなく、仕事道具としてのスペックを追求したパソコンとなります。
使用されているGPUもゲーム向けのGeForceではない業務用のRTX A6000となっており、メモリーは128GBもあります。ゲームをプレイする事も可能ではありますが、使用用途としては何かしらの研究目的であったり、ゲームを作る為のパソコンです。
まとめ
ハイエンドPCの用途やおすすめ機種をご紹介しました。スペックの高いPCはデータ分析をしたり、仕事をしている人にとっては端末の性能が上がることは生産性向上に直結します。
筆者もPCを使ってゲームのベンチマークデータを取り、それを執筆内容として組み込むなどして使用しています。そのため、ハイエンドPCを導入することで、業務等の生産性が上昇することが期待される場合は十分に購入の価値があります。
またいきなりフルスペックのハイエンドPCを購入することに不安がある場合は「自作PC」もしくは「BTOパソコン」がおすすめです。
ひとまず使用目的を満たす性能のPCを組み、性能に不満が出てきたタイミングでパーツをハイエンドなものにしていくと良いでしょう。性能を正しく理解すれば、ハイエンドPCは決して高い買い物ではないでしょう。