自作PCはプラモデルより簡単ってホント? ゲーミングPCを自作したアナウンサー・平岩康佑が教えます
プロフィール
平岩康佑さん
1987年生まれ。東京都出身。大学卒業後の2011年にアナウンサーとして朝日放送へ入社し、『おはよう朝日です』(朝日放送テレビ)や『おはようパーソナリティ道上洋三です』(朝日放送ラジオ)などに出演。翌年にはプロ野球やJリーグのリポーターを務め、スポーツ関係でも頭角を現す。当時から実況に必要な各スポーツのデータをクラウド管理している”コンピューター通”で知られており、’17年からはOpenRec.TVやAbemaTVなどでゲームの実況も担当。’18年に独立するとスポーツアナウンサーの経験を生かしてeスポーツキャスターへ転身し、株式会社ODYSSEYの代表取締役に。以降、ビギナーからマニアまでわかりやすく、エキサイティングな実況ができるキャスターとして人気を得る。
Twitter:@kouhiraiwa777
子供の頃から大好きだったゲームに関わるため大胆転身
──なぜ大手放送局を辞めてeスポーツキャスターに?
朝日放送に入社し、アナウンサーという職業についたのが2011年。eスポーツが今ほどメジャーではない時代でしたね。私自身はアナウンサーやリポーター、番組進行司会などのキャリアを積み、徐々にスポーツ関連の仕事も増えていきました。
偶然にも私の成長とほぼ同じリズムでエレクトロニック・スポーツ、つまりeスポーツの認知度も高まり、世界的に無視できないカルチャーに成長。2017年にはサイバーエージェント運営のOpenRec.TVやAbemaTVなどで、私がゲームを実況させていただける時代となりました。
翌年、パワプロチャンピオンシップに実況者として参加。eスポーツの盛り上がりを強く感じ、「自分も積極的に関わらないと後悔する!」と思い、eスポーツキャスターへ2018年に転身しました。
──元々ゲームに興味があったのですか?
もちろん! 子供の頃から大好きで、中学生で海外のFPSタイトル(操作キャラクターの視点で進行するシューティングゲーム)にハマったほどです。独立したタイミングだと『コール オブ デューティ ブラックオプス3』に夢中でした。あとは『マジック:ザ・ギャザリング』、『シャドーバース』といったカードゲーム系も好物ですね。仕事が忙しくなった今でも、睡眠時間を削ってプレイすることもありますよ。
PCゲームをするため自作にチャレンジ
平岩さんが自作PC用に購入したパーツ類
──局アナ時代にもPCは使っていたと思います。あえて自作PCに挑んだきっかけは何でしょう?
最初に作ったのは2014年ですが、それまではコンシューマーゲーム(家庭用ゲーム機)で満足していたんです。ところが『DayZ』というオープンワールドのゾンビサバイバルゲームに興味を持ち……。
その頃は家庭用ゲームに対応しておらず、PCのみのリリースだったんです。しかし、自分の仕事用PCにインストールしてもスペック不足。学生時代に使っていたゲーミングPCがありましたが、もう時代遅れの代物で役に立たず。だったら自作してしまおうと思い、挑戦したのがきっかけです。
──なぜ既製品ではなくDIYを選んだのですか?
まずはコストですね。あくまで僕の感覚ですが、既製品だと30万円必要になるスペックでも、自作なら20万円程度の予算で作れます。それに、パーツを見たり集めたりするうちに楽しくなってくるんですよ。もっと高機能なものを、より安く手に入れようと、いろいろ調べる過程も宝探しのようで面白いです。もちろん、画質追求のためにグラフィックボードをグレードアップしたり、メモリ増強でストレスなく動くようにしたりと、自分が求める要素に応じてパーツを換装できるのも魅力です。
自作PCはプラモデルより簡単!
現在はファンによる一般的な空冷式PCを愛用
──パーツ選びや組み立ての難易度、面倒さは気になりませんでしたか?
特に抵抗はなかったです。今の時代ネットで検索すれば、パーツ選びのアンサーは得られますから。プレイしたいゲームの推奨スペックを参考にして、欲しいCPUやグラフィックボードの名前を調べるだけなので簡単です。
組み立てに関しても、関連のYouTubeを見ればスムーズにできますよ。基板から組むのは大変でしょうけど、基本的にはパーツを換装するだけなんです。ハンダ付けや小さい電子部品まで学ぶ必要がないのが自作PCの魅力。ドライバー1本あれば機械に疎い人でも簡単だと思います。
──プラモデルより簡単という声もありますよね。
そうですね。実際、今のプラモデルってものによってはスゴく細かくて、ちょっとビギナーには手が出せない場合も多いんですよ。
──初の自作PCは問題なく稼動しましたか?
低予算でしたが、CPUだけはケチらずインテル® Core™ i7-3770Kにして、グラボ(グラフィックボード)を少しリーズナブルなGeForce GTX 1660に。’14年当時は『DayZ』をはじめ、最先端のタイトルでもヌルヌル動いてくれました。
とはいえ、ゲームの進化は早く、今ではロートル。新しめのタイトルは低レートに設定しないと動きません。グラボの違いが大きいようです。特に最近はGTXからレイトレーシング採用のRTXシリーズに世代交代し、新旧の差が顕著になりました。
──実際、組み立てにはどの程度の知識が必要だと感じますか?
必要なパーツの相性さえ確認すれば、初心者の方でも問題なく組めると思います。ただ、メモリを刺す場所や相性は判断が難しいかも。上位のパーツに代えたり、増設したりした途端に、グレードアップしたはずなのに逆に遅くなることがあります。必ず参考になるので、WEB上で紹介されている各種パーツのレビューを読むのがオススメです。
不安なら必要なパーツが揃っている自作PCセットを買うのも良いでしょう。また、実店舗の店員さんに聞いても丁寧に教えてくれますよ。個人的にTSUKUMO、ドスパラは親身になってくれる専門ショップだと感じています。
人気VRゲームをプレイするため今もPC作成中
──現在も新PCにアップデート中だそうですね。
はい。PCにモニターを2つ接続して、さほどスピードが求められないカードゲームをしながら、大会の動画を見たり資料を作ったりと、複数の作業を並行させるのが常なんです。そのため、メモリは常に不足しがち。さらに最近だと高スペックを要求されるVRソフトも気になるので、グレードアップに勤しんでいます。
──どのようなスペックですか?
大きく変えるのがCPU。今までインテル一辺倒でしたが、初めてRyzenを使ってみようとRyzen7 3700Xにしてみました。最新版を待ちきれなかったので最高クラスよりワンランク落ちますが、ゲーム向きだと聞いたものですから。
目指しているのは往年の名作をVR化したタイトル『Half-Life: Alyx』がストレスなく遊べる性能です。VRって低スペックだと動きが悪く、3D酔いしちゃうんですよ。だから高性能グラボが欠かせず、釣り合うCPUやメモリも必要になります。
すでに使っている自作PCに諸々買い足す形なので、今回の費用は8万円ほど。トータルで約18万円です。今は完全にゲーム専用機予定ですが、いずれ仕事でも使うでしょうね。
──仕事でも自作PCの方がアドバンテージがありますか?
ゲームメインなのでグラフィックに注力して組んでいますが、それに伴ってメモリも増強する必要があります。自作するまで知らなかったのですが、メモリに余裕があるとエクセルやワードも驚異的に早くなるんです。
例えば、エクセルにまとめてある実況に必要な選手データは、場合によって140以上のタブが必要になりますし、モニターも多く使用しますが、それでも重くなって止まるなんてことはありません。市販モデルより格段に仕事の効率が上がります。
新しく自作PCを組むにあたってケースも一新。配線が見えないように仕上げるなど、見た目のカッコよさにもこだわっているそう
──自作PCは良いところだらけですね!
欲しいスペックを追求したり、随時最新パーツに変更したりって、ノートPCだと無理ですしね。自作なら3年前のモデルでも、グラボを変えるだけ飛躍的に現行顔負けになってくれます。仕事だけに使うなら3万円程度の予算で、グーグルのタブを100個開いても平気なマシンが自作できるのでは。
──今後挑戦したいPC作りはありますか?
水冷モデルに挑戦したいですね。駆動音が小さくなり、クーラント液で染色した冷却水を使えば見た目もカッコよくデコレーションした、主張するMOD PCっぽくできますし。DIYが盛んな海外ではPCをケースごと作ってしまうユーザーが多く、引き出しの中にPCを組んでしまうビルトイン系などユニークなモデルも見られます。自分でもやってみたいですね。ただ、今は時間がなくて(笑)。
今後はYouTubeでの活躍にも要注目!
──PC作り以外の野望を教えてください。
弊社はeスポーツ専門キャスターが五人所属していて、ありがたいことに個々の仕事も増えていっています。まずは、社員の業務のクオリティを上げていきたいですね。そのうえで全員のYouTubeチャンネルを開設したいです。それぞれが様々な動画にアフレコをつけたり、ゲーム以外のコンテンツで実況したり。一応、今月中には実行できると踏んでいます。あとは私が運営しているYouTubeチャンネル『異世界ニュース』の更新を頑張ること。YouTuberの先駆者たちに倣い、編集を自分で全てやっているので大変なんです。
そうそう、年末に角川書店から書籍を上梓します。勇気を持った転職の話なので、興味のある方はぜひ!
全世界で1億人以上の競技人口を誇り、観戦者も4億人近いといわれるeスポーツ。日本ではまだ成長中のカルチャーですが、近年の盛り上がりを見ればさらに浸透するのは間違いありません。
そのブレイクを牽引するであろう平岩さん。実況解説するタイトルは必ず100時間以上プレイするというプロ意識の高さは、まさにeスポーツキャスターの第一人者といって良いでしょう。その彼による自作PCのススメ。ハイスペックでリーズナブル、しかも簡単とくれば、誰だってチャレンジしたくなるはずです!