DLSSとは?「幻塔」を例にメリット/デメリット解説 | ゲーム軽量化&高画質化
優れた機械学習の成果をゲームに反映させた、NVIDIAの「DLSS(=ディープ・ラーニング・スーパー・サンプリング」。例えばMMORPG「幻塔」がバージョン2.0へのアップデートにより、DLSSが実装されました。フレームレート上限に達する環境においては大きな差が見られないものの、消費電力などからGPUの負荷が低減しています。
そんなDLSSはGPUが高負荷となる状況にて力を発揮するものであり、また使用するGPU=グラボにも制約がある機能です。ではDLSSを上手く活用するにはどのようなPC環境が必要なのか?この記事で解説していきます。
目次
DLSSとは? | 「幻塔」を題材に実例を解説
DLSSは機械学習法の一つである、深層学習(=ディープラーニング)を取り入れた高画質化技術。同じゲーム画面の高画質と低画質のデータを取得・比較して学習し、低画質から高画質へと変換するのが目的です。
仕組みは「ゲーム内の高画質と低画質の両方をサンプルとして取得・学習し、最終的には低画質から高画質へと変換出力を可能とさせる」というものになります。この時GPUそのものは低画質で出力しているため、高いフレームレートを出しながらも、変換によって高画質化も同時に実現できるというわけです。
DLSSの効果については、DLSSのオン/オフを切り替えてそれぞれのグラフィックの違いをチェックするのが分かりやすいです。「幻塔」でDLSSをオンにした画面の、スクリーンショット例は以下です。実際に筆者が、幻塔のDLSSをオンにしてゲーム内で撮影してみました。
高画質化する技術とはいえ元は低画質を参照しているため、本来であればDLSSをオフにした状態が一番綺麗であるはずです。
そしてこちらがDLSSをオフにしたもの。ネイティブ画質なので、理論上はこちらの方が綺麗であるはずなのですが…?
正直どちらが変換をかけているのか判別できないレベル。むしろDLSSでの変換時に補正をかけることも可能であるため、DLSS有りが好みという方もいるでしょう。
ちなみに筆者が撮影したときの環境はこんな感じです。最高設定である「オリジナル」をベースに細かい設定を弄っています。
DLSSのオン/オフも画質設定から選択可能で、DLSSのタブをクリックするだけで切り替え可能です。
レイトレーシングとDLSSは相性が良好
DLSSは高画質化に伴うフレームレート低下を防ぐことが期待できる機能です。
つまり高画質化を目的とした「レイトレーシング」と併用すると、高画質・高フレームレートの両立が可能。
実際にレイトレーシング有効時にはGPU使用率が大きくなるのですが、DLSSを使う事でGPU使用率が下がり、フレームレートも安定する傾向にあります。
【筆者の場合/DLSS無効】「幻塔」でRyzen7 5800X3D×RTX3090で120FPS
幻塔では120fps上限があり、フルHD対応グラボで十分に狙える値であるため、RTX3090ではオーバースペックとなっていました。
まずこれがDLSSを利用しない従来型GPUでの挙動となります。
【筆者の場合/DLSS有効】「幻塔」でRyzen7 5800X3D×RTX3090で120FPS
DLSSをオンにすると、GPU消費電力が50〜100Wほど下がります。GPUは120fpsを低画質で出力している状態なので、その分負荷が下がっていることが分かります。
DLSSのメリット/デメリット
DLSSのメリットはGPU負荷低減による高フレームレート化と、高画質・高品質の両立が可能となる点にあります。これはゲームにおいては大きなメリット。
一方でDLSSには使用できるグラボの制約と、高画質化への変換に伴うデメリットもあります。
まずDLSSは専用の深層学習用演算ユニットである「Tensor コア」が必要。これはNVIDIA GeForce RTXシリーズに搭載されている物なので、AMD RadeonシリーズやNVIDIA GeForce GTXシリーズではDLSSは使えません。
また低画質から高画質化への変換に伴い、ネイティブ出力に比べると劣化します。場合によっては変換に失敗して大きく乱れることもありますし、そもそもゲーム自体がDLSSに対応している必要があります。
DLSSに対応しているゲームタイトルの例
今回「幻塔」を例にしてDLSSを解説しましたが、幻塔はDLSSを採用したゲームタイトルの内のひとつ。他にもDLSSを採用したゲームがあります。
バトルフィールド 2042
大規模戦闘が魅力のFPSゲーム。前作までは20世紀の大戦を舞台にしていましたが、2042では現代戦をベースとした近未来を舞台にしています。
元々リアル系ということでグラフィックは作り込まれています。レイトレーシングも採用しておりGPUへの負荷も大きいのですが、DLSSを使用することでGPU負荷が低減されます。
マインクラフト(統合版)
様々なブロックを精製して楽しむサンドボックス型ゲーム。こちらはPCにてMODを導入するjava版と、様々なプラットフォームからアクセスできる統合版があります。
レイトレーシングが使えるのはWindows10の統合版になる「MINECRAFT WITH RTX」で、MODが使えない代わりにレイトレーシングによる映像美が表現できるようになっています。
こちらもレイトレーシングを有効にすると動作が重たくなりますので、DLSSとの併用がおすすめです。
DLSSを有効化したゲームプレイにおすすめのグラボ・CPUの組み合わせ
DLSSは総じて負荷が重いゲームにて効果を発揮しますので、GPUの処理能力も重要な要素。あくまでもDLSSは補助機能にすぎないのです。DLSSを有効化したゲームプレイにおすすめのグラボとCPUの組み合わせ例を紹介します。
RTX4090×Core i7-13700K
引用元:Amazon
2022年10月30日時点で最も強力なGPUはRTX4090になります。先代のRTX3090より大幅に性能向上をしており、DLSSやレイトレーシング関係の機能も強化されています。
組み合わせるCPUとしてはインテル第13世代のCore i7以上がおすすめです。こちらも前世代より機能向上が図られています。これらを組み合わせたゲーミングPCが、現状におけるハイエンド構成と言えます。
注意点があるとすればRTX4090の消費電力の大きさ。性能を突き詰めるあまり、8ピンの補助電源4本を変換する専用のケーブルが新たに実装されているので、理論上は500~600W相当の消費電力がグラボだけで使われることになります。
RTX3060Ti× Core i5-12400
引用元:Amazon
DLSSとレイトレーシングは一緒に実装されることが多い機能です。つまりレイトレーシングによる高負荷をDLSSで軽減して、ゲームを楽しむことが想定されているわけです。
そう考えるとGPUはレイトレーシングの負荷にも耐えられる、ミドルクラスでもやや強めのRTX3060Ti以上がおすすめ。これならレイトレーシング環境でもゲームを楽しみやすいかと思います。
組み合わせるCPUはCore i5-12400以上であれば、ミドルクラスのゲーミングPCとしてバランスよく組み上げられます。
DLSSの美麗グラフィックを楽しむには「モニター」も重要
DLSSを有効にすることで高フレームレートと高品質・高画質の両立が可能になります。そしてDLSSとレイトレーシングは同時に実装されるケースも多いです。
この映像を体験するには、映像を忠実に映し出せるモニターも必要になってきます。
おすすめモニター:Acer NITRO XV240YPbmiiprfx
引用元:Amazon
こちらは筆者が使っているモニターで、23.8インチで画質はフルHDでHDR対応、最大リフレッシュレート165Hzとなっています。
かつては応答速度が低くゲームには向かないとされていましたが、近年のIPSパネルモニターの応答速度は遜色ないほどに向上しています。レイトレーシングのような映像美を楽しむにはIPSパネルが適していますので、レイトレーシングとDLSSを併用できるゲームにおすすめです。
おすすめモニター:ASUS ゲーミングモニター ROG Swift PG32UQ
引用元:Amazon
4K画質のIPSパネルモニターです。サイズは32インチでリフレッシュレートは144Hzと、4Kモニターとしては高リフレッシュレートの部類になります。
画質を上げることで綺麗な映像となりますが、視野に入りきらない程大きいとゲームには不向きとなり、加えてゲーム用途なら高いリフレッシュレートも必要です。
このモニターであれば4K画質を活かせる大きさで比較的視野に収まり易く、4Kモニターとしては高いリフレッシュレートも備えています。
まとめ
DLSSはGeForce RTXシリーズで使える機能の一つ。レイトレーシング対応ゲームと合わせて使う事で、GPU負荷の低減が期待できます。
なおDLSSはNVIDIA GeForce RTXシリーズでのみ使える機能。AMDが推進する「FSR」や「RSR」とは異なるものとなりますので、グラボ選びの際には注意が必要となります。
DLSSではネイティブ画質と比べれば品質が落ちるといわれますが、フレームレート向上のメリットも大きいですし、ゲームによっては補正具合も変えられます。DLSSが使えるゲーム環境であれば、画質設定と同様にとりあえず試してみるのがおすすめです。