Steam DeckのスペックはゲーミングPCと比較してどれくらい?グラボ/CPUの性能比較
携帯できるゲーミングPCとして開発された「Steam Deck」は、携帯ゲーム機サイズにまでコンパクト化され、従来のゲーミングノートPCより扱い易さが増しています。また価格もゲーミングPCとしてはリーズナブルな点も魅力です。
しかし気になるのはそのスペックで、ゲーミングPCである以上ただゲームができるだけでなく、ゲーム機には無い映像品質が求められます。そこで今回は、Steam Deckのスペック/性能を解説します。
Steam Deckのスペック/性能 | 携帯機ながらエントリーモデル相当の性能
引用元:Steam Deck公式サイト
「Steam Deck」は2022年12月現在販売中です。1000円前払いの予約制ではありますが、在庫が確保されると72時間以内に購入可能となり、2022年12月17日よりユーザーの元に順次配送されます。
なお前提として、Steam Deckはゲーム機ではなく、ゲーミングPCとして機能するように作られています。そのため使用するパーツもパソコンと同等の物が使われています。
CPU | Zen 2 4c/8t、2.4~3.5GHz(最大448 GFlops FP32) |
---|---|
GPU | 8 RDNA 2 CU, 1.0~1.6GHz(最大1.6 TFlops FP32) |
メモリ | 16GB LPDDR5オンボードRAM |
ストレージ | 64GB eMMC(PCIe Gen 2(×1)) |
ストレージ | 64GB eMMC(PCIe Gen 2(×1)) 256 GB NVMe SSD(PCIe Gen 3(×4)) 256 GB NVMe SSD(PCIe Gen 3(×4)) 512 GB高速NVMe SSD(PCIe Gen 3(×4)) 上記に加えて高速microSDカードスロット搭載 |
OS | SteamOS 3.0(Archベース) Windows OSの導入も可能 |
CPUとしてはAMDのRyzen 4コア8スレッドCPU、そこに小規模のRadeon GPUが搭載されています。これは携帯ゲーム機のNintendo Switchよりもはるかに高性能なものです。
グラボ | PlayStation 4に相当するグラフィックス
GPU=グラボに関しては「RDNA2」アーキテクチャをベースにしたということで、「PlayStation 5」や「Xbox Series X」と同じ世代の物を採用しています。ただしチップの規模が異なりますので、性能としては「PS4を部分的に上回るが、PS5には遠く及ばない」といった仕上がり。
GPUとして一番近い性能と見られるのは、ノートPC向けCPUのRyzen 5 6600Uに内蔵された「Radeon 660M」でしょう。Steam DeckはRDNA2で8CUの規模、対してRadeon 660Mは6CUです。デスクトップ向けGPUで比較するなら、処理能力では「GTX1050」程度、アーキテクチャ的には「Radeon RX6400」が近いです。
ゲーミングPCの処理能力としては必要最低限といった感じですが、採用されているアーキテクチャがRDNA2ということもあり、FSRやRSRなどのアップスケーリング技術の活用によってフレームレートを稼ぐことができそうです。
CPU | Ryzen 3 3300Xに相当
Zen2アーキテクチャの4コア8スレッドAPU=グラフィック内蔵CPUとのことなので、「Ryzen 3 3300X」辺りが近い性能を持ったCPUということになります。Ryzen 3 3300XはZen2世代のCPUの中でも、とりわけシングルスレッド性能が優秀。ゲームでも高いパフォーマンスを発揮しています。
今回はSteam Deckに合わせた特注のAPUとのことなので、おそらくバッテリー駆動を想定した省電力化に適したものが選別されたと思われます。
【参考】主要コンシューマー機とSteam Deckのスペック比較
参考までに他のゲーム機も含めたスペック表にすると、以下の通りです。
Steam Deck | PS4 | PS5 | Switch | |
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CPU | AMD Zen2 4コア8スレッド | AMD “Jaguar”, 8コア | AMD Ryzen(Zen2)8コア16スレッド | ARM Cortex-A57 4コア+ARM Cortex-A53 4コア |
GPU | AMD Radeon RDNA2 | AMD Radeon 1.84 TFLOPS | AMD Radeon RDNA2 | NVIDIA 第2世代Maxwellアーキテクチャ |
メモリ | LPDDR5 16 GB | GDDR5 8GB | GDDR6 16GB | LPDDR4 4GB |
ストレージ | 64 GB eMMC 256 GB SSD 512 GB SSD 3種いずれか |
500GB HDD | 825GB SSD | 32GB eMMC+MicroSDカード |
電源 | 40Whrバッテリー | AC100-240V 250W | AC100-240 350W | リチウムイオンバッテリー 4310mAh |
一見するとSteam Deckの性能はPS5に近いようにも見えるのですが、先にも述べた通りCPUやGPUの規模が違うため、処理能力としてはPS4に近いといった印象が強いです。
Steam Deck相当のパソコンを自作PCで組むとどれくらいの予算が必要?
Steam Deckはストレージの違いで3モデル用意されていますが、いずれもリーズナブルな価格設定です。(参考:https://store.steampowered.com/steamdeck)
- 64GBモデル:59800円
- 256GBモデル:79800円
- 512GBモデル(最上位モデル):99800円
今回はSteam Deckの最上位モデルを意識して、デスクトップのゲーミングPC構成を考えてみました。Steam Deckの最上位モデルを、自作PCで組んだ場合、以下のパーツと予算が目安として必要となります。
パーツの種類 | 品番・モデル | 価格 |
---|---|---|
CPU | AMD Ryzen3 4100 | 約10,000円 |
GPU | ASRock Radeon RX 6400Challenger ITX 4GB | 約18,000円 |
マザーボード | ASUS PRIME A320M-K | 約8,500円 |
メモリ | crucial CT2K8G4DFRA32A [DDR4 PC4-25600 8GB 2枚組] | 約5,800円 |
ストレージ | キオクシア EXCERIA G2 SSD-CK500N3G2/J | 約5,500円 |
電源 | 玄人志向 KRPW-L5-500W/80+ | 約5,500円 |
ケース | Thermaltake Versa H17 | 約3,500円 |
OS | Windows 11 Home DSP版 | 約14,000円 |
合計 | 約70,800円 |
CPUはタイミングよくZen2アーキテクチャの、4コア8スレッドCPUであったためRyzen3 4100を採用。グラボはCU数が最も近いRX6400となり、他メモリやストレージはSteam Deckの容量などに合わせつつ、最安値付近の物を使っています。
結果として価格は近くなったものの、無理矢理価格を合わせた感が強いです。コストパフォーマンスに優れたパーツも使えなかったので、デスクトップのゲーミングPCとしては物足りなさを感じます。
加えて「持ち運べるかどうか」も大きな違いです。利便性とデザイン性は自作PCでは再現できず、やはり「携帯できる点」に魅力を感じるかどうかが大きなポイントでしょう。
Steam Deckのメリット | エントリークラス相当のゲーミングPCを携帯可能
Steam Deck相当の自作PCを組むには、モニターが別途必要で、なおかつ可搬性にも乏しいです。安さを追求するあまり性能も犠牲になり、デメリットが大きく目立ちます。
対してSteam DeckもゲーミングPCとしての処理能力は必要最低限のエントリークラスとなっていますが、その分ケースをコンパクトにし、ノートパソコン以上に持ち運びしやすいパッケージとしている点が大きなメリットとなります。
また他のゲーム機と違い、Windows OSの導入も可能。ChromeやFirefoxなどのウェブブラウザも使えます。基本的にはパソコンという位置付けなので、パソコンでできることは一通りこなすことができます。
Steam Deckのデメリット | Steam Deck対応ゲームはまだこれから増える段階
Steam Deckのデメリットは、「SteamがサポートするゲーミングPCでありながら、Steamにて配信されているゲームとの互換性は確保されていない」ということです。そもそもSteam Deckのゲームパッドからの入力を受け付けてくれない場合は、事実上の非対応となります。
現段階ではSteamにて配信されている膨大なゲームタイトルから、互換性の確認作業が進められ、少しずつ対応タイトルがリストアップされている段階です。
【注意点】外部出力用のドックは別売り
引用元:https://steamdeck.komodo.jp/product/steam-deck/
Steam Deckを据え置き型のゲーミングPCとして使いたい場合、より大きなモニターへ外部出力するため、DisplayPortやHDMIなどの出力ポートが必要となります。
その外部出力のポートを追加するには、専用のドッキングステーションが必要となります。こちらは別売り(14,800円)となっています。
まとめ
CPUやGPUの冷却機構を組み込む必要性から、ゲーミングPCは大きさによって限界スペックが決まります。本体重量700gを切る大きさのSteam DeckのゲーミングPCとしてのスペックは、それほど高いものではありません。
ただその点を加味しても、ノートパソコン以上に手軽に持ち運べるというのは大きなメリット。モニターに関しても小さい画面であるため、低解像度でも画質の荒さが目立ち難い=ゲーム内設定で低画質にすることのデメリットが小さいので、携帯機として考えるなら十分な処理能力でしょう。
総じて「携帯できるゲーミングPC」としての魅力は、価格を鑑みても十二分です。
一方で拡張用のドッキングステーションに関してですが、オマケ機能程度に考えたほうが良いでしょう。大きなモニターに出力するにはそもそもパソコンとして力不足ですし、据え置きするのであればミニPCという選択肢もあります。