AMD RyzenシリーズのCPU(APU)ベンチマーク一覧・比較表まとめ!世代・型番別に解説
2017年に発売されたAMDのCPU「Ryzen」シリーズは、自作PCユーザーを中心に人気を集め、大手メーカーのPCにおいても採用例が増えています。
販売から数年が経過し世代交代と改良を重ねたこと、コロナ禍における家庭でのテレワークに伴うPC需要の高まり、家庭で過ごす時間が増えたことでPCゲームへの関心の高まりなど、様々な要因が重なりPCの需要が増えたことでRyzen CPUも確実に普及しています。
今回は歴代のRyzenについて比較と解説に加え、Ryzenのゲーミング性能について解説していきます。
AMD RyzenシリーズのCPU(APU)ベンチマーク・一覧比較表まとめ
AMDの「Ryzen」シリーズの CPU性能はどんなものなのか?それを数値化するのがベンチマークです。今回はPassMarkから、歴代のRyzenシリーズのCPU・APUをピックアップして性能を数値化しました。
まずは一覧の表をご確認ください。コア/スレッドやクロック(GHz)はCPUの処理性能を示す項目の1つ。詳細な解説は後述します。
ベンチマークスコアとベンチマーク順位は、PassMarkの評価値と全CPUをランキング化した際の順位です。評価値は高いほど性能が良いことを示し、順位も同様です。
価格は、記事制作時の価格を意味しています。
CPU | コア/スレッド | クロック(GHz) | PassMarkベンチマークスコア | ベンチマーク順位 | 価格(USD) |
---|---|---|---|---|---|
Ryzen9 5950X | 16/32 | 3.4-4.9 | 46,140 | 19 | 1,019.99 |
Ryzen9 5900X | 12/24 | 3.7-4.8 | 39,494 | 27 | 689.66 |
Ryzen9 3950X | 16/32 | 3.5-4.7 | 39,222 | 28 | 819.99 |
Ryzen9 3900X | 12/24 | 3.8-4.6 | 32,897 | 40 | 581.85 |
Ryzen7 3800X | 8/16 | 3.9-4.5 | 23,337 | 125 | 379.99 |
Ryzen7 2700X | 8/16 | 3.7-4.3 | 17,597 | 240 | 299.98 |
Ryzen7 2700 | 8/16 | 3.2-4.1 | 15,683 | 283 | 197.89 |
Ryzen7 1800X | 8/16 | 3.6-4.0 | 16,307 | 267 | 249.99 |
Ryzen7 1700X | 8/16 | 3.4-3.8 | 15,531 | 289 | 195.00 |
Ryzen7 1700 | 8/16 | 3.0-3.7 | 14,697 | 311 | 161.99 |
Ryzen5 3600X | 6/12 | 3.8-4.4 | 18,348 | 219 | 289.75 |
Ryzen5 3600 | 6/12 | 3.6-4.2 | 17,866 | 230 | 209.99 |
Ryzen5 2600X | 6/12 | 3.6-4.2 | 14,086 | 336 | 240.66 |
Ryzen5 2600 | 6/12 | 3.4-3.9 | 13,218 | 367 | 188.99 |
Ryzen5 1600X | 6/12 | 3.6-4.0 | 13,053 | 375 | 138.99 |
Ryzen5 1600 | 6/12 | 3.2-3.6 | 12,359 | 396 | 169.99 |
Ryzen5 1500X | 4/8 | 3.5-3.7 | 9,061 | 549 | 132.99 |
Ryzen5 1400 | 4/8 | 3.2-3.4 | 7,808 | 641 | 99.99 |
引用元:PassMark
まず目につくのがRyzen9 5950Xの19位という順位。同業他社の製品はもちろんの事、業務用の高性能CPUなども含めた上での順位です。
販売価格は高額ながらも、これが一般ユーザー向けとして店頭販売されています。現行で一般向けに流通しているCPUとしては、2021年6月時点では最高峰の性能と言えるでしょう。
さらにRyzen 7 2700XとRyzen 5 3600のスコアがほぼ同じという点も興味深いです。
Ryzen 5 3600はRyzen 7 2700Xに比べて2コア4スレッド少ないですが、1コア辺りの性能向上をさせることで同水準の性能まで引き上げたという事が分かります。同様の結果はRyzen9の5900Xと3950Xでも見られます。
Ryzenシリーズの個別の型番・機種については、以下の記事でもDDIYerのユーザーによる実機計測を行いベンチマーク数値を算出。詳細なレビューをしています。ぜひ参考にしてください!
AMD Ryzenシリーズのナンバリングの見方
AMD RyzenシリーズのCPUには、製品にそれぞれ型番が付けられており、性能などを見分けることが出来ます。例えば「Ryzen9 5950X」の場合なら以下の通りです。
- Ryzen:ブランド名
- 9:グレード。9、7、5、3とあり、数字が高いほどハイグレードとなる
- 1000番台の数字:世代を表しており、数字が大きいほど新しい
- 1000番台より後ろの3桁:型番であり、数字が大きいほど性能が高い
- X:製品のカテゴリーを表す印。無印が基本モデルで、「X」はより高性能化されたデスクトップ向け。他に「G」というのもあり、グラフィック機能を内蔵したデスクトップ向け製品という意味になる
詳細な内容は、以下記事で詳しくまとめています。
CPU(APU)の各スペックの比較項目に関する解説
CPUの比較表を先に見ていただきましたが、表の項目だけでは分かりづらいところも多いでしょう。各項目について解説していきます。
CPU
CPUは「Central Processing Unit」の略で、中央演算処理装置と訳される物。計算をを行うPCの頭脳と言えるパーツです。
CPUを製造しているメーカーとしてはIntel、AMD、ARMなどがあり、今回紹介しているRyzenはAMDが製造するCPUとなります。
APU
AMD製のRyzenは、基本的には内蔵グラフィックと言う物がなく、別途グラフィックボードが必要。一方でAMDはCPUとは別でAPU(Accelerated Processing Units)という名称で内蔵グラフィック機能を追加したRyzenを製造しています。
ノートPC向けのAPU製品が多いですが、デスクトップ向けにもラインナップされており、型番の末尾に「G」が付く製品がデスクトップ向けAPUとなります。
一方でPCゲームを楽しむユーザーからは「グラフィックボードを追加するから、内蔵グラフィックを取り除き、その分値引きして欲しい」という意見もありました。Ryzenは正にその意見と合致する製品であり、コストパフォーマンスも良好だったため、PCゲーマーからの支持を集めた玄人向けCPUとしてRyzenが好まれています。
コア/スレッド
CPU内部にある演算装置となるコアの数が、コア数と言われるものです。以前は1つのCPUにつき1コアでしたが、より多くのデータを処理するために、現在では複数のコアを搭載してデータ処理作業を分担させるのが主流となっています。
実際のコア数に対して、どのくらい作業の同時処理ができるかという数字がスレッド数です。1つのコアが2つの作業を同時にこなす能力があれば、1コア2スレッドとなります。この時OSは1つのコアで2つ分の処理が出来る事を認識すると、論理的には2コア存在しているのと同じと判断します。この事からスレッド数=論理コア数とも呼ばれます。
一般的にコア/スレッド数が多いほど、処理能力が高くて高性能なCPUと言われます。PassMarkのベンチマークのスコアでもこの傾向は出ています。ただし、これはCPUに適切な処理の振り分けが出来る場合=マルチスレッド性能でのスコア。マルチコアCPUが一般的とはなりましたが、ゲーム等においては今でも1コアで発揮できる性能=シングルスレッド性能が重視される傾向にあります。
クロック
クロック数は1秒間に出来る演算の回数です。1GHz=1ギガヘルツであれば、10億回という意味になります。実際には1回あたりに扱えるデータ量の差などによって、最終的な処理能力には違いが生まれます。
PassMark ベンチマークについて
PassMarkはCPUなどの性能を計測するベンチマークソフトのひとつ。決められた課題をPCに実行させ、課題の処理が完了するまでの時間を計測する事で処理能力を判定しています。この決められた課題をこなすのがPCにおけるベンチマークです。
またPassMarkは個々のPCの構成と、それによるベンチマーク結果を集計しています。その掲載サイトが「PassMark Software – CPU Benchmark Charts」となります。またPassMarkではCPU以外に、GPUやHDDのベンチマーク結果も掲載しています。
AMD Ryzenシリーズの代表的なCPU(APU)のベンチマーク
ここからは実際にRyzenを使用しているユーザーのゲームプレイ動画を参考に、代表的なCPU(APU)のベンチマーク数値をチェックしていきます。
PCにおけるベンチマークはPassMark以外にも、PCMarkや3DMark、CINEBENCHなどがあり、ゲームをベースにしたものであればFF14、FF15などがあります。
今回は近年においても稀に見るヘビー級タイトルとされる「Microsoft Flight Simulator」をプレイしたRyzenシリーズユーザーの動画を参照しましょう。
Ryzen 9 5900X
こちらの動画はRyzen9 5900XとRTX3090の組み合わせ。PCとしては4Kゲーミングを意識した印象。2021年5月時点で手に入るゲーミングPCとしては、最高クラスの性能となります。
4K画質、設定も最高設定という事で、全体を通してフレームレートは30fps程度。夜間のシーンになると20fpsという場面も見られました。Microsoft Flight Simulatorの前評判などから推察するに、これはおそらくRTX3090=グラフィックボードの性能不足によるものです。
RTX3090は2021年5月時点で手に入る4Kゲーミング対応のフラッグシップモデルですが、4K対応ゲームタイトルの中でもトップクラスに重たいMicrosoft Flight Simulatorの前では、処理が追い付いていないという印象です。
Ryzen 7 5800X
Ryzen7 5800XとRTX3070の組み合わせ。PCとしてはフルHDからWQHDゲーミングを意識した物と思われます。ややヘビーユーザー向けのゲーミングPCといった感じです。
画質としてはフルHD~4Kまでプレイされており、4Kでは20fps、フルHDでは40~50fpsですが東京駅上空で20fpsまで低下。ただCPUとGPUの使用率が共に下がっており、東京駅という地形データの多さが予想される場所なので、データの読み込みによる一時的なものだと思われます。
Ryzen 5 3600
5000シリーズの一世代前となるRyzen5 3600とGTX1660の組み合わせ。やや軽めのフルHDゲームタイトル向けのPC。ゲーミングPCとしてはライトユーザー向けの入門機といった感じ。
画質はフルHD固定で、設定をLow~Ultraまで変えて比較されています。Ultraでは30fps前後、Lowでは90fps前後を記録。RTX3090でさえ処理落ちする設定が存在する一方で、設定を下げればミドルクラスGPUでも十分に動作するという事が分かります。
全体的な印象としてはGPU使用率が90%以上であるのに対して、CPUの使用率が50%を下回るシーンが多くみられたのが印象深いです。Microsoft Flight Simulatorに限った話ではありませんが、いかにPCゲームにおける処理のGPU依存度が高いかという事がわかります。
まとめ
Ryzenは2017年の初登場以来、着実に支持層を拡大しています。
当初はコスパの良さで歓迎されると同時に、内蔵グラフィックが無いCPUという事で、ゲーマー向け、玄人向けのややマニアックな製品になるのではないかという声もありました。実際のところ大手メーカー製PCでの採用例も増えていますが、Ryzen人気はゲーミングPCなどを含めた自作PCを好む人達によるものも大きいです。
これから新たにPCを購入する計画を立てている方は、AMDのRyzenを選択肢の一つとして覚えておいて損はないはずです。