AMD Ryzen5 3500U の性能レビュー&ベンチマーク検証!ゲーミング性能・平均FPSを実機計測
コストパフォーマンスの高いAPUのAMD Ryzen 5 3500U。ノートPCとしては「スタンダード」な製品に位置づけられ、テレワークなどに適した性能を持ちます。
今回は3500Uの総評的なレビューに加え、Ryzen 5 3500Uのベンチマークをゲームタイトル別に取得し、ゲーミング性能を実機計測し検証した結果をご紹介します。購入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
AMD Ryzen5 3500Uとは
2019年1月に販売されたRyzen 5 3500U。このAPUは薄型のスタンダードタイプやモバイル向けのノートPCに採用されています。デュアルモニター環境や動画視聴、オンライン会議はもちろん、デザイン作業もこなします。
反面、ゲームや実況など重い作業はカバーしきれないため、注意が必要です。重い処理を要求する作業の場合は、ワンランク上のAPU Ryzen 7 3700Uなどを選択する方が望ましいでしょう。
仕様
CPUコア数 | 4 |
---|---|
スレッド数 | 8 |
GPUコア数 | 8 |
基本クロック | 2.1GHz |
最大ブースト・クロック | 3.7GHz |
L1キャッシュ合計 | 384KB |
L2キャッシュ合計 | 2MB |
L3キャッシュ合計 | 4MB |
アンロック | いいえ |
CMOS | 12nm |
PCI Expressバージョン | PCIe® 3.0 |
サーマルソリューション | 利用不可 |
デフォルトTDP/TDP | 15W |
最大温度 | 12-35W |
cTDP | 105°C |
対応OS | Windows 10 – 64ビット版 RHEL x86 64ビット Ubuntu x86 64ビット *対応するオペレーティングシステム (OS) は製造元により異なります。 |
メモリ
最大メモリー速度 | Up to 2400MHz |
---|---|
メモリ・チャネル | 2 |
グラフィックス仕様
最大メモリー速度 | 1200 MHz |
---|---|
グラフィックス・モデル | Radeon™ Vega 8 Graphics |
グラフィックス・コア数 | 8 |
Ryzen のAPUはグラボとの併用は可能?
APUとグラボの併用は「可能ではあるものの、コストパフォーマンスが高いとは言えない」組み合わせです。APUはCPUとGPU、および周辺回路が一つのチップに収められた製品。今回紹介しているRyzen 5 3500UもAPUの一種です。
APUで要求スペックの高い3Dゲームなどを楽しみたいときは、内蔵グラフィックスを無効化し、グラフィックボードを増設するのが一般的な手法です。
APUとグラボの併用のコストパフォーマンスが低い理由は「メモリ」にあります。単体でGPUを使う場合、GPUはクロック周波数の高いGDDR5などを占有することができます。一方、APUの場合はCPUとGPUがDDR4などのメインメモリをシェアし合います。メモリの帯域を奪い合うことになり、GPUを併用したとしても性能の上昇幅がやや限られます。
AMD Ryzen 5 3500UとAMD Ryzen 5 3500Xの違い・比較
Ryzen 5 3500Uと、同じくAMD製の「Ryzen 5 3500X」の性能を比較してみましょう。
Ryzen 5 3500X | Ryzen 5 3500U | |
---|---|---|
タイプ | デスクトップ向け | ノート向け |
シリーズ | AMD Ryzen 5 | AMD Ryzen 5 |
アーキテクチャ | Matisse | Picasso |
コア | 6 | 4 |
スレッド | 6 | 8 |
基本周波数 | 3.6GHz | 2.1GHz |
最大周波数 | 4.1GHz | 3.7GHz |
ソケット | AM4 | FP5 |
TDP | 65W | 15W |
RAMの種類 | DDR4 Dual-channel | DDR4 Dual-channel |
内蔵GPU | – | AMD Radeon RX Vega 8 |
Passmark | 13363 | 7946 |
コアやスレッドの数、周波数は性能に直結する項目です。多くの項目がRyzen 5 3500Xが上回っており、Passmarkによるベンチマーク結果でもRyzen 5 3500Xが大きく勝っています。Ryzen 5 3500Uはノート向けだけあって、デスクトップ向けのRyzen 5 3500Xとスペックの差が顕著。唯一、スレッド数のみ勝っています。
タイプが違うため、ソケットはそれぞれ違うものを採用しています。互換性に関しては、AM4を採用しているRyzen 5 3500Xの方が使いやすいでしょう。しかし、TDP(消費電力)はRyzen 5 3500Uが勝っています。
Ryzen5 3500Uのベンチマーク性能比較
こちらはPassMarkを使用したベンチマーク結果を比較した表になります。Ryzen 5 3500U及び、AMDの型番が近しいCPUと比較をしました。
CPU Mark(higher is better) | Rank(lower is better) | |
---|---|---|
Ryzen 5 3500U | 7,946 | 648 |
Ryzen 5 3500X | 13,363 | 380 |
Ryzen 5 3500 | 12,895 | 395 |
Ryzen 5 3600 | 17,858 | 242 |
CPU Markはベンチマークの値です。数値が大きいほど性能が高いことを意味します。Rankはベンチマークの値を順位化したものです。こちらは数値が低いほど性能が高いことを指します。
こうしてみると、Ryzen 5 3500Uの値が控えめなことがわかります。重い処理を任せるにはすこし不安が残りますね。
【実機検証編】 Ryzen5 3500U のCPU性能・ゲーミング性能ベンチマーク
それではRyzen 5 3500UのCPU性能を、ベンチマークで検証してみましょう。
Ryzen 5 3500Uはモバイル向けのAPUでもあり、やや低めの数値が並ぶものの、その中でもある程度快適に動作するタイトルも存在します。
【40FPS】GTA 5
カメラアングルを変更する動画内0:05:58付近は、視点が定まらなくなる現象が発生しています。しかし全体的には40前後のFPSをキープしており、APUとしての描画能力が十分に発揮されています。
後半で解説しますが、Ryzen 5 3500Uを搭載したノートパソコンは8万円を切る価格帯で入手可能です。GTA 5クラスのゲームで40前後のFPSをキープできる端末としては、コストパフォーマンスの面でかなり魅力的ではないでしょうか。
使用したノートPCは「ASUS VivoBook 14 M409DA-EK146T」です。
【37FPS】ウィッチャー3
FPSは高い値ではありませんが、ゲーム自体を遊ぶことは可能です。
動画0:00:04辺りのカメラアングルの変更はやはり処理が追いついてない感があります。騎乗状態の躍動感が大事なシーンですが、あまり滑らかな動作ができていないため、気になってしまう人もいそうですね。
とはいえコストとの兼ね合いを踏まえて考えると、若干の処理の「もっさり感」は許容範囲内のレベルでしょう。ウィッチャー3をプレイしようと思っている人にとっては、APUとして良い選択肢と言えます。使用したノートPCは「ASUS VivoBook 14 M409DA-EK146T」です。
【23FPS】Apex Legends
銃撃戦など、多数のオブジェクトが映り込む場合はFPSが下降しやすくなります。そのため、平均FPSは「23」と数値に落ち着きました。動作はするものの、快適にプレイを楽しむには厳しい値です。動画の0:00:20辺りで既に動きがカクカクしていることがわかります。また動画0:00:45付近のカメラアングル変更では、一瞬視点が定まらなくなります。
Apex Legendsは対戦ゲームです。実際に戦闘へ入ったとき、動作のカクツキやカメラアングル変更時の視点のブレが勝敗を分ける可能性もあります。滑らかな動作でないとストレスを感じる人も多いでしょう。また画面を注視することが多いゲームなので、画面酔いする人もいるかもしれませんね。
構成は以下の通りです。
- GPU: Vega 8 igpu
- CPU: 3500U Processor 4x 2.10 GHz TurboBoost to 3.70 GHz
- RAM: 8GB and 4GB DDR4 2400 MHz
- SSD: M.2 512GB
- Display: 1920 x 1080 Pixel (Full HD)
- OSD: FPS Monitor
- OS: Windows 10 64 bit
【平均FPS:25】サイバーパンク2077
平均FPSは25。動画内0:05:16付近で顕著な通り、動作は滑らかとは言いづらいでしょう。動画0:05:45辺りでは描画されるオブジェクトも多く、このFPS値だと目が疲れる人もいるかもしれません。
とはいえ、滑らかさには欠けるものの、設定次第で遊ぶこと自体は可能。CPUやGPUにコストをかけずに遊びたいのであれば、Ryzen 5 3500Uは選択肢に加えても良いでしょう。
使用したノートPCは「ASUS VivoBook 14 M409DA-EK146T 」です。
【24FPS】Red Dead Redemption 2
映り込むオブジェクトの数が多く、動画内0:09:02から0:0:9:10辺りまで非常に目が疲れる状態です。また、0:09:20付近でカメラが寄るシーンでも違和感を覚えますね。
3Dゲームは没入感がウリです。上記のように細かなところで気になるシーンが増えてくると、遊びづらさを感じる人が多いでしょう。特に画面酔いする人は注意が必要です。
使用したノートPCは「ASUS VivoBook 14 M409DA-EK146T 」です。
【総評】Ryzen5 3500Uの特徴・性能評価
Ryzen 5 3500Uは、ノート向けとしては、オールラウンドの性能を持っているコストパフォーマンスが高いAPUと言えます。最後に3500Uのメリット、デメリットをそれぞれまとめました。購入時の参考にしてみてください。
Ryzen 5 3500Uを選ぶメリット
動画視聴やWEBデザイン、ビジネスから軽めの3Dゲームまでなら対応できるため、コスト重視で購入するのであれば十分選択肢に入ると考えられます。GTA5やウィッチャー3も動作する性能です。
Ryzen 5 3500Uを選ぶデメリット
要求スペックの高い処理を行うには、やや不向きなAPUです。もし、重めの3Dゲームや実況に使おうと思っているのであれば、ワンランク上の製品を購入するか、素直にデスクトップ向けの製品を購入するのが望ましいでしょう。
総評
コストパフォーマンス重視でAPUを選ぶ場合、Ryzen 5 3500Uはおすすめしやすい製品です。ビジネス利用などは問題なくこなせるほか、軽めの3Dゲームであれば動作します。GTA5クラスのタイトルで40FPSを、低価格帯のAPUながらキープできる点は大きな長所です。
反面、事実として動作が難しい3Dゲームも多いです。APUという製品の性質上、グラボの増設時のコストパフォーマンスも高くはありません。ゲーミング目的のCPUやGPUを探している方は、ワンクラス上の製品を買うことがおすすめです。
Ryzen 5 3500Uを購入するには
Ryzen 5 3500U を搭載したおすすめノートPCは以下の2つです。いずれもLenovo製で、新品価格で8万円を切る価格帯です(※2021年8月1日現在)。
高度なゲーミング性能があるとは言い難いものの、テレワーク用途や簡単な画像編集などには耐えうる性能。またカクツキは気になるものの、重量級のタイトルも全くプレイできないわけではありません。持ち歩きが可能な安価なノートパソコンを探している方や、サブのパソコンを探している方に特におすすめです。
Lenovo IdeaPad Slim 350
引用元:Amazon
78,800円(2021年8月1日現在)
Lenovo ThinkPad X395
引用元:Amazon
79,980円(2021年8月1日現在)
まとめ
重い動作には不向きですが、コストパフォーマンスの高いRyzen 5 3500U。かなりコストを抑えてノートPCを購入できるようになるという大きな利点があります。ビジネス目的や軽めの3Dゲームのプレイを考えている方には、非常に魅力的な選択肢となるでしょう。
価格以上の性能を手に入れることができますので、これを機会にRyzen 5 3500Uを搭載したノートPCを購入してみてはいかがでしょうか。