グラフィックボード(GPU)の必要性とは?なぜ使う?ゲーム以外の用途も解説
グラフィックボード(GPU)はグラフィックス処理を行うための装置です。ゲームではGPUの役割が増しており、高画質なゲームを快適にプレイするためにグラボが欠かせません。
一方で、CPUに内蔵されているGPUもあり、用途によっては専用グラボなしでも十分なパフォーマンスを発揮できます。GPUを選ぶときは、プレイしたいゲームの推奨スペックや、ベンチマークスコアなどから比較することが重要です。
この記事では、GPUの必要性や選び方について解説したうえで、特におすすめなグラボとBTOパソコンを3点ずつご紹介します。PC選びの参考にしてみてください。
グラフィックボード(GPU)の必要性とは?
引用元:NVIDIA
「GPU(Graphics Processing Unit)」は、画像や映像の処理を行うための半導体チップです。昨今では、「Red Dead Redemption 2」や「Microsoft Flight Simulator」などの高解像度のゲームや、4K画質のYouTube動画が人気を集めています。解像度が高くなるほどGPUの描画範囲も広くなるため、それだけGPUへの負荷も高まります。
しかし、GPUの性能が不足しているとグラフィックス処理が追い付かず、ゲームのフレームレートが大幅に低下したり動画再生が不安定になったりします。快適なPC環境の構築のためには、GPUのスペックを意識してパソコンを選ぶことが大切です。
引用元:AMD
なお、GPUやグラフィックボードについては下記の記事で詳しく解説しています。GPUの選び方やおすすめ製品20選をご紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください!
高性能なグラフィックボード(GPU)を要求するゲームの例
要求されるグラフィックボード(GPU)のスペックは、ゲームタイトルによって大きく異なります。
通常通りの設定では低負荷なゲームでも、「MOD」を導入することで急激に負荷が高くなるケースもあります。MODとはゲームの公式および非公式の「拡張パック」を指し、MODを導入していない状態のゲームを「バニラ」と呼びます。MOD導入により、オリジナルにはないゲーム性や機能の追加が可能です。その代表例が「マインクラフト」の「影MOD」です。
引用元:マインクラフト
「マインクラフト」は負荷が軽く、APU内蔵のグラボで60fpsを維持できます。しかし、世界に影の描写を追加する「影MOD」を導入すると要求スペックが跳ね上がり、「GeForce GTX 1660」以上のグラボが必要となります。
なお、マインクラフトの推奨スペックや影MODについては、下記の記事で詳しく解説しています。マインクラフトをプレイしたい人はぜひ参考にしてみてください!
なおベンチマークソフトを使用すると、グラボのパフォーマンスを数値でより細かく評価できるので便利です。
たとえば「FF14」と「FF15」では、公式のベンチマークソフトが公開されています。どちらも国内のゲームタイトルの中では屈指の「重量級」に該当。FF15は特に負荷が高く、FF15のベンチマークで良好なスコアが出るグラボは、他のタイトルでも問題ないことが多いです。
つまりFF以外のタイトルをプレイする場合も、FF14やFF15でのベンチマーク結果が有効です。FF14とFF15の推奨スペックやベンチマークソフトの詳細は、下記の記事で詳しく解説しています。
ゲーム以外の主な用途
ゲーム以外のGPUの代表的な用途は「ディープラーニング」と「マイニング」です。
ディープラーニングはAIに人間の行動を学習させる技術、マイニングは仮想通貨取引を承認して収益を得る事業。いずれも高い演算能力が求められるためGPUが活躍します。
GPUはCPUよりも圧倒的に並列処理に向いています。例えば、AMDのCPU「Ryzen 9 5950X」は16コア/32スレッドなので、32の処理を同時に行えます。
一方で、NVIDIAのGPU「RTX 3090」には10496個のCUDAコアが搭載されています。ごく単純に数値だけで比較すると、RTX 3090は328倍も処理能力が高いと言えます。
引用元:NVIDIA
とはいえGPUは「条件分岐」が苦手という側面もあるため、必ずしもGPUの演算能力がCPUより優れているというわけではありません。CPU側で極力処理を単純化してGPUで並列演算を行いやすくするなど、CPUとGPUの連携が重要になってきています。
グラフィックボードは「いらない」?内蔵GPU・APUの性能上昇
グラフィックボードは必ずしも必要というわけではありません。なぜなら、グラフィックス機能を搭載したCPUも存在するからです。Intel製のほとんどのCPUや、AMD製のAPUはグラフィックスチップを内蔵していて、グラボなしでもゲームをプレイできます。
しかも、近年は内蔵グラフィックス(オンボードグラフィック)の性能向上が著しく、ゲームタイトルによっては画質設定次第で60fpsを十分に維持できます。そのため、GPUは場合によっては必須ではないのです。CPU内蔵のGPUについて掘り下げていきましょう。
内蔵GPU(オンボードグラフィック)・APU
「内蔵GPU(オンボードグラフィック)」は、CPU内部に埋め込まれたグラフィックスチップです。AMD社の製品では、内蔵グラフィックスを搭載したモデルは「APU(Accelerated Processing Unit)」と呼ばれています。
オンボードグラフィックやAPUのメリットは、PCのコストを削減できることです。GPUは基本的にCPUより高価で、ハイスペックなモデルは10万円を超えます。内蔵グラフィックス搭載のCPUを採用すれば、ゲーミング環境が安価で手に入るのです。
内蔵GPUはIntel社とAMD社がそれぞれ開発しています。Intelのオンボードグラフィック「Intel HD Graphics」はCore iシリーズのすべて、AMDの「AMD Radeon VEGA」は末尾に「G」や「U」が付くモデルに搭載されています。
IntelのオンボードグラフィックやAMDのAPUの詳細は、下記の記事で解説しています。グラボなしのPCを検討するときは、ぜひ参考にしてみてください。
APUのベンチマーク性能例
特に有名なゲームタイトルをAPUでプレイした場合の、平均フレームレートを検証してみましょう。今回は第3世代APU「Ryzen 7 4700U」を使用しました。
「Grand Theft Auto V」と「ウィッチャー3 ワイルドハント」を720p(1280×720)の標準画質でプレイした場合、平均フレームレートは次のようになります。
ゲームタイトル | 平均フレームレート |
---|---|
Grand Theft Auto V | 60~70 |
ウィッチャー3 ワイルドハント | 30~40 |
「フォートナイト」と「Apex Legends」を1080p(1920×1080)の低画質でプレイすると、平均フレームレートは次のようになります。
ゲームタイトル | 平均フレームレート |
---|---|
フォートナイト | 50~60 |
Apex Legends | 40~50 |
ゲームのフレームレートは基本的に30以上だとプレイ可能で、60以上あれば快適に楽しめます。その点から考えると、AMDのAPUはかなり検討していると言えるのではないでしょうか。
さすがに1080pの高画質設定やAAAタイトルのプレイは困難ですが、プレイするタイトルや画質設定によっては、APU単体の構成も有効な選択肢のひとつです。Ryzen APUのパフォーマンスは下記の記事で詳しく検証しているので、ぜひ参考にしてみてください!
また、RyzenのAPUは基本的にCPU自体のスペックが高いので、普段使いにもおおむね問題ありません。ゲームをほとんどプレイしないのであれば、APU単体を搭載したPCを選ぶのも良いでしょう。
グラフィックボードが必要な人・不要な人
引用元:NVIDIA
次のすべてに該当する場合は、グラフィックボードは必要ない可能性が高いです。Intel Core iシリーズのCPU単体、もしくはAMDのAPU単体の構成でも特に問題ないでしょう。
- 主に低負荷なゲームをプレイする
- 画質や快適性にあまりこだわらない
- 動画の編集作業は滅多に行わない
ゲームの負荷が「低いか」「高いか」は、各GPUのベンチマーク数値を目安にすることができます。GPUのベンチマークソフトとして最も有名な「3DMark」の公式サイトでは、すべてのGPUのスコアが掲載されています。それによるとAMDの「Radeon Vega 8」のスコアは1000前後です。
つまり、プレイしたいゲームの推奨GPUの3DMarkスコアが1000以上なら、グラボの必要性が高まるということです。例えば、フォートナイトの推奨GPUは「NVIDIA GeForce GTX 660」や「AMD Radeon HD 7870」で、両者の3DMarkスコアは「1377」と「1815」です。
どちらのスコアも1000以上ではありますが、Radeon Vegaと大きくかけ離れているわけではありません。そのため、フォートナイトはAMDのAPUでプレイできるのです。ただし、推奨GPUのスコアが2000~3000以上の場合は、グラボが必要になるでしょう。
おすすめの自作PC・BTOパソコン
自作PCやBTOパソコンを選ぶときにどのようなGPUやAPUを検討すれば良いか、次の3つのパターンに分けてご紹介します。
- 内蔵GPUやAPU
- コスパ重視のGPU
- スペック重視のGPU
さらに、おすすめGPUやAPUを搭載しているBTOパソコンもご紹介するので、PCや自作パーツ選定時の参考にしてみてください!
内蔵GPU・APU「AMD Ryzen 7 4700U」
引用元:AMD
CPUの内蔵グラフィックスを採用したい場合は、AMD社の「Ryzen 7 4700U」がおすすめです。先ほどもご紹介したように、Ryzen 7 4700UはフォートナイトやApex Legendsをグラボなしでプレイできます。しかも、8コア搭載なのでCPUのスペック自体も高いです。
おすすめBTOパソコン:「FRONTIER」FRNA710/S
BTOパソコンメーカーとして有名な「FRONTIER」では、このRyzen 7 4700Uを搭載したノートパソコン「FRNA710/S」が販売されています。2021年7月に発売されたばかりの新モデルで、税込価格は104,800円とお得です。スペックの詳細を確認しておきましょう。
スペック | |
---|---|
OS | Windows 10 Home 64bit |
CPU | AMD Ryzen 7 4700U |
メモリ | 16GB DDR4-3200 |
GPU | AMD Radeon RX Vega 7 (内蔵GPU) |
GPU | AMD Radeon RX Vega 7 (内蔵GPU) |
ストレージ | 1TB M.2 NVMe SSD |
モニター | 15.6型フルHD非光沢液晶 |
重量 | 約1.65kg |
税込価格 | 104,800円 |
公式販売サイト | https://www.frontier-direct.jp/direct/g/g110394/ |
32GBメモリへ8,000円で、1TBのHDDへ10,000円でアップグレードできるなど、メモリとストレージのカスタマイズ項目が充実しています。また、このモデルは光学ドライブ非搭載なので、必要に応じてカスタマイズオプションで追加するようにしましょう。
引用元:FRONTIER
また、Ryzen 7 4700UなどのAPUを使用して自作PCを制作する場合は、マザーボードとケースのサイズをあまり小さくしない方が無難です。MicroATXマザーボードやミニタワーケースを選ぶと、後でグラボを増設したくなったときに入らないことがあります。
【コスパ重視】GPU「NVIDIA GeForce RTX 3060 Ti」
引用元:価格.com
コスパに優れたGPUならば「NVIDIA GeForce RTX 3060 Ti」がおすすめです。先代のハイクラスモデルの「RTX 2080」を上回るスペックがありながら、価格も求めやすいハイコストパフォーマンスモデルです。RTX 3060 Tiのスペックを確認しておきましょう。
スペック | |
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CUDAコア数 | 4864 |
ベースクロック | 1410MHz |
ブーストクロック | 1665MHz |
理論性能値 | 16.20TFLOPS |
VRAM | 8GB |
メモリバス | 256bit |
TDP | 200W |
グラボの長さ | 242mm |
グラボの横幅 | 112mm |
3DMarkスコア | 11004 |
参考価格 | 71,000円 |
おすすめBTOパソコン:「ツクモ」G-GEAR GA5A-F210/T
BTOパソコンメーカーの老舗「ツクモ」では、このRTX 3060 Tiを搭載したゲーミングPC「G-GEAR GA5A-F210/T」が販売されています。ただし、基本モデルのGPUはRTX 3060なので、カスタマイズ画面でRTX 3060 Tiを選択する必要があります。RTX 3060 Tiへ変更した場合の税込価格は196,300円で、詳細なスペックは次のとおりです。
スペック | |
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OS | Windows 10 Home 64ビット |
CPU | AMD Ryzen 5 5600X |
メモリ | 16GB DDR4-3200 |
GPU | NVIDIA GeForce RTX 3060 Ti 8GB |
ストレージ | 500GB NVMe SSD |
税込価格 | 196,300円 |
公式販売サイト | https://www.tsukumo.co.jp/bto/pc/game/2021/GA5A-F210T.html |
CPUはマルチスレッド性能に優れた「AMD Ryzen 5 5600X」なので、高負荷のゲーミングでも十分なパフォーマンスを発揮できます。GPUの性能を最大限に引き出してくれるでしょう。また、DVDスーパーマルチドライブを標準搭載しているため、ディスク媒体でゲームをプレイする場合も安心です。
引用元:ツクモ
ツクモではカスタマイズ項目が充実しています。例えば、CPUを「AMD Ryzen 7 5800X」へアップグレードしたい場合は、22,000円の追加料金で可能です。また、ツクモではカスタマイズ画面で「OSなし」モデルを選択できます。Windows OSをすでに所有している場合は、OSなしに変更すると5,500円安くなるのでおすすめです。
おすすめBTOパソコン:「ドスパラ」GALLERIA XA7C-R36T H570搭載
BTOパソコンメーカーの大手「ドスパラ」でも、RTX 3060 Tiを搭載したゲーミングPC「GALLERIA XA7C-R36T H570搭載」が販売されており、税込価格は199,980円とお得です。このモデルのスペックは次のようになっています。
スペック | |
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OS | Windows 10 Home 64ビット |
CPU | Intel Core i7-10700 |
メモリ | 16GB DDR4-2933 |
GPU | NVIDIA GeForce RTX 3060 Ti 8GB |
ストレージ | 1TB NVMe SSD |
税込価格 | 199,980円 |
公式販売サイト | https://www.dospara.co.jp/5shopping/detail_prime.php?tg=13&tc=30&ft=&mc=10272&sn=0 |
CPUは9,878円でオーバークロックモデルのCore i7-10700Kへアップグレードできます。32GBメモリへ17,380円で、1TBのHDDへ6,380円でカスタマイズ可能です。光学ドライブは非搭載なので、必要な場合は8,778円でブルーレイドライブを搭載しましょう。
引用元:ドスパラ
なお、自作PCでRTX 3060 Tiを搭載する場合は、PCケースのサイズに注意が必要です。グラボの奥行きが25cmほどあるため、ミニタワーなど比較的小型のケースでは入らない可能性があります。少し余裕のあるサイズを選ぶ方が良いでしょう。
【性能重視】GPU「NVIDIA GeForce RTX 3080」
引用元:価格.com
とにかくGPUのスペックを重視する場合は「NVIDIA GeForce RTX 3080」が特におすすめです。先代のハイエンドモデル「RTX 2080Ti」を大きく上回る性能を誇り、4Kゲーミングも余裕をもって楽しめます。RTX 3080の詳細スペックは次のとおりです。
スペック | |
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CUDAコア数 | 8704 |
ベースクロック | 1440MHz |
ブーストクロック | 1710MHz |
理論性能値 | 29.77 TFLOPS |
VRAM | 10GB |
メモリバス | 320bit |
TDP | 320W |
グラボの長さ | 285mm |
グラボの横幅 | 112mm |
3DMarkスコア | 15963 |
参考価格 | 152,900円 |
おすすめBTOパソコン:「パソコン工房」LEVEL-R0X6-R58X-VAXH
大手BTOパソコンメーカー「パソコン工房」では、RTX 3080搭載のゲーミングPC「LEVEL-R0X6-R58X-VAXH」が販売されています。ハイエンドスペックでありながら、税込価格は307,978円と求めやすい設定です。このモデルのスペックを確認しておきましょう。
スペック | |
---|---|
OS | Windows 10 Home 64ビット |
CPU | AMD Ryzen 7 5800X |
メモリ | 16GB DDR4-3200 |
GPU | GeForce RTX 3080 10GB |
ストレージ | 500GB NVMe SSD 2TB Serial-ATA HDD |
税込価格 | 307,978円 |
公式販売サイト | https://www.pc-koubou.jp/products/detail.php?product_id=780876&pre=bct1874_bnr_amd |
CPUは8コア/16スレッドでマルチスレッド性能が非常に高く、RTX 3080の性能を最大限に引き出してくれます。光学ドライブはDVDスーパーマルチを標準搭載です。また、すでにOSを所有している場合は「OSなし」に変更すると5,500円安くなります。
引用元:パソコン工房
RTX 3080を自作PCに搭載する場合は、マザーボードとケースのサイズにご注意ください。グラボの長さが30cmほどあるため、少なくともATX規格のマザボやミドルタワーのケースが必要です。また、TDPが320Wと高いので、電源ユニットは750W以上を選びましょう。
まとめ
プレイするゲームの負荷や解像度、画質設定などが高いほど、グラフィックボード(GPU)の重要性が増します。フルHD以上の解像度でゲームをプレイしたい場合は、グラボはまず必須だと考えて間違いないでしょう。
ただし、フォートナイトやApex Legendsのような比較的負荷が軽いゲームは、画質設定次第でCPU内蔵のグラボでもプレイできます。AMD社のAPU「Ryzen 7 4700U」は、内蔵グラフィックスとCPUのスペックバランスが特に優れています。
コスパの良いグラボを選びたい場合は、NVIDIA社の「RTX 3060 Ti」がおすすめです。高画質なゲームをプレイしたいなら、ハイスペックな「RTX 3080」が適しています。用途に合うグラボを上手に選んで、理想のゲーミングPCを構築してみましょう。