簡易水冷一体型のおすすめGPU(グラボ)まとめ!ビデオカードの水冷化のメリット
暑い夏や空気の流れが悪い環境では、高性能なCPU、GPUにとって「水冷」がとても重要になってきます。特にGPUは負荷が高い処理を行うと80℃~90℃前後まで温度が上昇することがあります。よって冷却化が必要。冷却手段として重用されている方法の1つが水冷に当たります。
水冷には大きく分けて2種類あり、1つは「本格水冷」と呼ばれるもので、2つ目が「簡易水冷」と呼ばれます。では、なぜ2種類あるのでしょうか?
そこで今回は手法ごとにどのような違いがあるのか、また水冷機能が一体となったおすすめのGPUをご紹介します。
水冷化の主な手法&各手法のメリット・デメリット
水冷には「簡易水冷」と「本格水冷」という2種類の手法があります。
前述の通り、水冷化は「セッティングが大変」「パーツが高価」という傾向がありますが「簡易水冷」を採用することでややコストを押さえることもできます。
それに対して「本格水冷」は「リザーバータンク」という冷却液を貯めておく場所を設ける必要があるなど、水冷化のための構造が複雑です。ここからは本格水冷と簡易水冷の違いや、各手法のメリット・デメリットをより細かく見ていきましょう。
本格水冷
本格水冷の構造は車などに付いている冷却装置(ラジエーターと呼ばれるもの)とほぼ同じ構造をしています。仕組みは以下の通りです。
- ラジエターから冷やされた冷却水が送られる
- リザーバータンクに冷却水を貯める
- ポンプを使って冷却水をヒートシンク(水枕)に送る
- 熱を吸収した冷却水をラジエーターに送る
- ラジエターに付いているファンで水を冷却する
- また1に戻る
本格水冷のメリットは「最高レベルの冷却性能がある」という点と「カスタマイズが可能」という点です。本格水冷は冷却水を自分好みの色に変更可能なので、自分次第でPCの魅せ方が大きく変わるのもポイントです。
逆にデメリットとしては「とにかく組み立てが大変」という点と「液漏れなどによるパーツ破損リスクがある」「コストがとてもかかる」という点があります。
本格水冷は冷却水の配管などについて、ある程度の知識がないと組み立てるのが難しく、またパーツが複雑なことに加え、パーツ1つ1つもそれなりに高価な物が多いのです。ラジエーター1つでも、高いものであれば1万円を超えます。
よって「どのレベルまで冷却が必要なのか」というのをしっかり考えながらパーツ選定をすべき。これもまた本格水冷が難しいポイントの1つになります。
メリット | デメリット |
---|---|
冷却性能が最高レベル | ある程度知識がないと組み立てが難しい |
カスタマイズが豊富であること | パーツが高価なので、お財布と要相談 |
セッティングに失敗するなどして液漏れが発生するとパーツが破損してしまう |
簡易水冷
続いて、簡易水冷とはどのような構造なのでしょうか?まずは冷却の仕組みからご説明します。
- ラジエターから冷やされた冷却水が送られる
- ポンプを使って冷却水をヒートシンク(水枕)に送る
- 熱を吸収した冷却水をラジエターに送る
- ラジエターに付いているファンで水を冷却する
- また1に戻る
簡易水冷にはリザーバータンクがないのが特徴です。簡易水冷のメリットは、なにより「取り付けが本格水冷に比べて簡単である」「比較的安価である」という点があります。
本格水冷の時は「配管を作り、繋げる」という作業がありますが、簡易水冷にはそのような作業は基本的に必要ありません。配管の取付等が苦手という方にもおすすめできる水冷方式になります。
また、簡易水冷は価格面でもコストが抑えられます。簡易水冷向けのクーラーはお手頃なものだと9000円台から導入が可能です。空冷ファンの導入を検討している方は、少額の予算追加で簡易水冷を始めることができます。水冷初心者は、簡易水冷からまず始めるのもアリです。
デメリットとしては、ファンの大きさによっては冷却性能がさほど高くなく、カスタマイズが出来ないという点があります。
たとえば120mmファンの場合だと、モノによっては空冷と同等レベルの冷却性能の場合もあります。簡易水冷は本格水冷よりは価格は安いものの、空冷よりは安くはありません。冷却性能が高くないのであれば「空冷で十分ではないか」と感じてしまうこともあるでしょう。
また簡易水冷は既に組みあがった状態の商品であるため、カスタマイズは出来ません。冷却水の変更や配管の変更は一切できないので、配管作業に抵抗感がない方にとってはある意味「物足りない」かもしれません。
メリット | デメリット |
---|---|
取付に専門的な知識はさほど必要ない | 場合によっては空冷と冷却性能が同等 |
本格水冷より安価なので水冷初心者におすすめ | 本格水冷のようなカスタマイズは不可能 |
本格水冷と同様に液漏れによるパーツ破損リスクはある |
簡易水冷一体型のおすすめグラフィックボード(GPU)3選
ここから先は、簡易水冷に着目して簡易水冷一体型のおすすめGPUをご紹介します。簡易水冷は別途の取り付けも可能ですが、GPUと簡易水冷が一体となっている製品も販売されています。
簡易水冷は本格水冷と比較するとお手軽ですが、空冷よりも高価かつ製品によっては空冷と同等程度の冷却性能になってしまうケースもあります。簡易水冷一体型のGPUを購入することで、安定した冷却性能が見込めます。それでは詳しく見ていきましょう。
GIGABYTE AORUS GeForce RTX 3080 XTREME WATERFORCE 10G
引用元:Amazon
価格:432,781円(2021年8月時点)
GeForce RTX 3080を搭載した高性能簡易水冷一体型GPU。RTX 3080は非常に高性能なGPUです。排熱もかなりのものなので、空冷ではなく水冷は特に夏場は必須でしょう。
「GIGABYTE AORUS GeForce RTX 3080 XTREME WATERFORCE 10G 」は簡易水冷タイプなので、組み立ても難しくなく、初心者にはおすすめの製品です。
GIGABYTE AORUS GeForce RTX 3090 Xtreme WATERFORCE 24G
引用元:Amazon
価格:673,477円(2021年8月時点)
こちらもAORUSからですが、GeForce RTX 3090を搭載したモデルになります。文句なしのハイエンドGPUになるため、水冷を搭載する意味はあると言えるでしょう。
構造としては先程の「GIGABYTE AORUS GeForce RTX 3080 XTREME WATERFORCE 10G」とほぼ同じ。
ちなみに、このタイプのGPUのいいところは、ファンのドレスアップが出来る点です。簡易水冷の欠点として、冷却水のカスタマイズができないなど「ドレスアップする点が少ないこと」を例に上げました。その点をファンでカバー出来る作りになっているので、装飾好きなユーザーにはおすすめです。
EVGA GeForceRTX 3090 KINGPIN
引用元:Amazon
価格:572,568円(2021年8月時点)
EVGAはアメリカのメーカー。日本ではAORUSやMSIなどが有名なので、あまり広く知れ渡っていませんが、簡易水冷一体型のGPUを販売するメーカーとして海外では有名です。
良い点は価格面と冷却性能の高さです。
まず価格からですが、執筆当時(2021年8月時点)でAmazon.co.jpにて572,568円となっております。先程の「GIGABYTE AORUS GeForce RTX 3090 Xtreme WATERFORCE 24G」と比べるとかなり価格が低いです。
そして冷却ファンが「ラジエーター側」と「GPU側」に付いているという、二重装備タイプ。GPU側は空冷ではありますが、GeForce RTX 3090の排熱にも耐えうる高い冷却性能を誇ります。ぜひとも予算に余裕がある方は購入を検討されてはいかがでしょうか?
グラフィックボードの水冷化の注意点
ここまで見ると水冷が万能な冷却方法にも思えますが、もちろん弱点もあります。
最後に水冷の弱点について紹介します。
本格水冷の場合は組み立てが難しい
本格水冷については配管周りの作業などは非常に難しく、特に繋ぐ作業が難しくなります。しかしこの作業を怠ると、後々冷却水が漏れるようなこともあるため、非常に重要な作業になります。それでいてミスは許されないという、非常に難しい作業が求められます。
コストが高く、故障した場合他のパーツに影響を及ぼす可能性がある
水冷は空冷と比べると構造が複雑な関係のため、故障率が高い傾向にあります。よく故障するのがウォーターポンプで、万が一水漏れしてしまった場合は、他のパーツにも影響を及ぼす可能性があります。
このような面も考慮しつつ、水冷にするべきかどうかは検討すべきでしょう。故障時のパーツの買い直しも含めて考えると、水冷ではなく、冷たい空気を外部から取り込み、それをGPUに当てることで温度を下げる仕組みの「空冷」を導入すべきというケースもあります。よりハイクラスの空冷を導入する方が「自分の環境にはマッチしている」ということも珍しくはないのです。
室温が高すぎる場合、水冷でも冷やすことが難しくなる
室温が高すぎる場合、水冷でもパーツを冷やすことが難しくなる場合があります。ちなみに「水冷でもパーツを冷やすことが難しい」とされる温度条件は30℃ほどです。よって室温が高すぎる場合は、エアコンも使って室温も下げる必要があります。
グラボの水冷化や簡易水冷についてよくある質問
最後に、グラボの水冷化や簡易水冷についてよくある質問をまとめていますので、ぜひ参考にしてみて下さい。
コスパ面重視であれば「iCUE H150i RGB PRO XT CW-9060045-WW(Corsair)」がおすすめです。
1番のおすすめポイントは性能に対する価格の安さ。1万5千円~1万6千円前後の価格帯のため、初心者の方でもさほどためらわずに購入することが出来ます。
また性能重視の場合、「ROG RYUJIN II 360(ASUS)」もおすすめです。
自作erの中では知らない人はいないほど、ROGは有名な簡易水冷向けクーラーです。Corsairが最大37dBAに対してROGは最大29.7dBAと、静音性が優れています。最大冷却時の音が気になる!という場合はこちらにするのもありかもしれませんね。
もっとも、Corsairもファンコンでファンの最大回転数を調整出来るので、設定次第で静音化も可能です。
簡易水冷向けクーラーを外付けすべきグラボとは?
クーラーを外付けする必要がある環境というのは以下のような場合が考えられます。
- 小型PCやスリムPCなどでエアフローが極端に悪い場合
- クーラーを設置する場所がない場合
この場合外付けをしないと、サーマルスロットリング(高温により性能を一時的に下げる機能)の発動で本来の性能を発揮出来ない可能性があります。また温度が高い状態が続くと、製品寿命も縮まります。温度と寿命の関係性についてはこちらの記事を参考にしてください。
BTOパソコンに簡易水冷クーラーを外付けすることは可能?
カスタマイズメニューにクーラーが付いている場合は、外付けされた状態で納品されます。
とはいえ簡易水冷一体型GPUを取り扱っているBTOメーカーは少ないため、カスタマイズを希望する場合は事前にメーカーに確認することをおすすめします。
たとえばBTOメーカーのサイコムでは、簡易水冷仕様のBTOパソコンを販売しています。
なお、BTOパソコンについてもっと詳しく知りたい方は以下の記事にてBTOメーカーを複数紹介しているのでご覧ください。
「簡易水冷一体型がおすすめな人」と「外付けがおすすめな人」はどんな人?
簡易水冷一体型クーラー、外付けクーラーそれぞれのGPUについては、以下のような方におすすめです。
簡易水冷一体型 | 外付けGPUクーラー |
---|---|
空冷以上に冷却能力が欲しい エアフローが悪く、空冷では十分に冷却出来ない |
スリムPCなど、クーラーを配置する場所がない 水冷にしてもケース内が高温になってしまうPC |
簡易水冷一体型は、空冷では冷却性能が不足しがちと感じた方におすすめで、外付けはケース内にクーラーが収まらない場合などにおすすめです。
一方、外付けにするとどうしてもファンの音が大きくなる点がネック。予算に余裕がある場合はPCケースを買い替えるのもおすすめです。
まとめ
今回は水冷化のメリット・デメリットや簡易水冷一体型のGPUについて紹介しました。筆者はGPU及び家でのエアコンの利用頻度を総合的に考えて、現時点では空冷を採用しています。とはいえ性能の高いパーツでは、空冷では不十分になる場合が多々あることも事実。簡易水冷の導入も積極的に検討していきたいと考えています。
今回ご紹介したように水冷には取り付けが難しい点や、万が一破損した場合のコスト、および冷却水漏れが発生した場合に他のパーツに影響が出るなどのデメリットもあります。
また外付けクーラーにもメリット、デメリットがあります。両方をしっかりと理解した上で、どの冷却方法が自分に向いているか検討していきましょう。