芸人初のプロゲーマー・裏切りマンキーコング西澤祐太朗さんインタビュー。人生を動かした「ゲーム愛」
お笑いコンビ「裏切りマンキーコング」として活動しながら、芸人初のプロゲーマーとなった西澤祐太朗さんにインタビュー! 芸人を目指すきっかけは「ゲームが好きだったから」という西澤さんのお話からは「ゲーム愛」があふれていました! 芸人兼プロゲーマとなった今、どんなスケジュールで毎日を過ごしているのか? 快適にゲームや動画配信の環境を作るためのPCへのこだわりについても伺います。
西澤祐太朗さん
青森県出身。お笑いコンビ「裏切りマンキーコング」として活動しながら、プロesportsチーム「YOSHIMOTO Gaming」のプロゲーマーとして活躍中。「Libalent」のスプラトゥーン2部門「Calamari」でもチーム活動をしている。大会実績及びイベント登壇、ゲームの解説・MCなど多数。ゲーム実況の際は「2438学園」名義で活動。
Twitter:@kong_2438gakuen
YouTubeチャンネル:Ch裏切りマンキーコング
ゲームをやるだけのコンビを組みたかった
──まずは芸人を目指したきっかけから教えてください。
もともと高校の頃から学園祭で漫才をやったりと、お笑いは好きだったんですが、上京のきっかけはゲームです。その当時主流だったSNS「mixi」で、僕がやっていた「スマブラ(大乱闘スマッシュブラザーズ)」の対戦会があったんですけど、ほとんどが東京での開催で。「もうこれは東京に出るしかない」と思い上京しました。
上京後はアルバイト以外のほとんどの時間をゲームに割いているような生活でした。でも、ゲームはお金にならないんです。今はYouTubeとか、お金にする方法がありますけど、当時はなかったので、「他にやること探さないとなぁ」と思ってNSC(吉本総合芸能学院)に入学しました。
よゐこの有野さんの番組、『ゲームセンターCX』が好きだったので、「芸人で売れたらゲームの仕事ができるかもしれない」という考えもありました。だから、ゲームの仕事をするために芸人を目指したようなものです。
──確かに芸人さんとゲームは結びつきやすいかもしれません。そして実際にプロゲーマーになられたわけですが、経緯を教えてください。
NSCを卒業してからはコンビで芸人をやっていたんですが、2年目くらいで解散して。そこから2年くらいはゲームばかりしていました(笑)。ちょうどその頃、YouTubeが流行り始めて、「今度コンビを組むなら、ゲームをやるだけのコンビを組みたい」と思って出会ったのが今の相方です。
──コンビ結成もゲームありきなんですね!
そうです。芸人と言いつつも、実はずっとゲームしかやってないんです(笑)。
──現在は「スプラトゥーン2」の大会で活躍されていますが、このタイトルを選んだのはどうしてですか?
「スマブラ」をやっていたんですけど、なかなかお金につながらなくて。今はものすごい人気ですけど、当時はシリーズによって人気不人気があったんです。タイトルを変えたほうがいいのかなと思っていたときに、ちょうど「スプラトゥーン」が出て、面白そうだと思ったのでやってみることにしました。
──そもそも、プロゲーマーはどのようにお金を稼ぐのでしょう。
賞金がある大会だったら、その賞金です。チームによってはスポンサーがついていて給料が出るパターンもあります。あとはイベントなどの出演費。でも、日本のプロゲーマーのほとんどのメイン収入は、動画の投稿と配信じゃないかと思います。
──なるほど。ゲームをしながら動画を配信することが収入につながるんですね。プロゲーマーとしての一日のタイムラインはどのような感じなのでしょうか?
「スプラトゥーン2」は4人でやるゲームなので、4人揃わなきゃ練習ができないんです。だからほぼ毎日、オンラインで集まって夜の8時くらいから12時くらい練習しています。僕が夜に仕事が入ったときは、練習は休みです。でも僕は仕事なので、基本休みはありません。
練習が終わったあとは、朝まで他のゲームを配信しながらプレイして、それから寝て昼くらいに起きる毎日です。もちろん、昼から仕事があるときは仕事に行きますけど。あとは「スプラトゥーン2」を、知らない人とチームを組んで、一人でもできるランクマッチを夜の練習時間までやることもあります。
──休みなくゲームをし続ける毎日は、過酷じゃないですか?
でも、ゲームすること自体が好きでやっていることなので、辛くはないです。PCゲームもやりますし。最近だと「レインボウシックス・シージ」というゲームを芸人仲間とやって遊んでいます。
──上達するために、毎日の練習が必要だとは思いませんでした。
例えば、自分の思い通りにキャラクターを動かすことはもうできてはいるんですけど、4人のゲームなので、4人でどう連携をとるか、フォーメーションの練習がメインです。
昔はがむしゃらに長時間練習していたんですけど、今は時間を決めて練習するようにしています。そのほうが効率も、結果も良くなりました。
──芸人としての活動はいかがですか?
今はほとんどやっていない状態です(笑)。ゲーム好きな芸人の集団で、毎月1回開催しているライブでトークやネタをやってはいます。だから、「ゲームが好きな芸人」として舞台に立つ機会は多いのですが、「M-1に優勝するためにしっかり漫才のネタを書く」というようなことはしてないです。
──なるほど。ゲームがあって芸人もあるという感じなんですね。
まあ、どっちも趣味ですから。仕事をしないで趣味を続けているという感じです(笑)。
実は自作経験者! ゲームによってスペックを決める
「ありのままを見てもらうためにあえて片付けませんでした」と西澤さん
──西澤さんがゲームをやるときのPC環境を教えていただければと思います。
まずスプラトゥーンをやるときにはSwitchをモニターに接続してプレイしています。その右に2台のPCモニターがあるんですけど、配信するときはSwitchを接続しているモニターを見ながら、PCを使って配信する感じです。PCゲームをするときは、左側のSwitchモニターではなく右のモニターを使います。
PCモニターのうち1台は湾曲モニターなんです。最初は湾曲してると気持ち悪くなるかなと思いましたが、実際は初めて使ったときから気に入って、FPS(First Person Shooter)とかの銃撃戦するようなゲームにはすごくいいですね。
AOCの湾曲モニターがお気に入り
──そのほかの器材はどうですか?
キーボードなどは、以前はカチカチと音がなるタイプのものを使っていたのですが、配信に音が乗ってしまうので、今は音の出ないタイプを使っています。
マウスはPCゲームには欠かせない、サイドボタンがあるマウスです。サイドボタンのないマウスでやられる方もいますけど、僕はもう、サイドボタンがないとできないですね。あとはミキサー。これを使うとPCの音とテレビゲームの音を一緒に出力できるんです。「スプラトゥーン2」をやっているときもPCで通話することがあるので、その通話音とゲーム音を一緒に配信できるのはすごく快適です。
音の出ないタイプのキーボード
サイドボタンがあるマウス
──このPC自体はどのようなシステムですか?
PCはリバレントから支給されている、FRONTIER(フロンティア)さんのモデルで、スペック的には不満はありません。もっと新しいビデオカードにしたほうがいいのかもしれないんですけど、今は「フォートナイト」などのゲームが流行っていて、がっつりグラフィックの性能が必要なゲームは主流じゃないので、今のままで十分かなと。
ただ、配信をやっているので、メモリは重要です。配信ソフトがメモリ不足になるとカクカクした映像になってしまうんですよ。PCゲーム中心で配信している人は、ゲーム用のPCと配信用のPCの2台体制でやっていますから。僕は家庭用ゲームが中心で、PCゲームは配信しながらゆったり楽しむという感じなので、そこまでスペックを求めていないんですよね。
◎西澤さんのPCの主要スペック
CPU | Intel Core i7 |
ビデオカード | GeForce GTX 1080 |
メモリー | 16GB |
──初めてパソコンを持ったのはおいくつくらいのときですか?
中学3年の時にノートPCを買ってもらいました。オンラインで「ボンバーマン」をしていた友達がいて(笑)。やらせてもらったらめちゃくちゃ面白かったので、高等専門学校に進学する予定で必要だったということもあって、早めに買ってもらいました。
その後、東京に出てきてからデスクトップが欲しくなったので、そのときは自作PCを組んだんです。
──どうして自作しようと思ったんですか?
当時は自作したほうがだいぶ安かったんです。今は組んであるPCも安くなって、価格差がそれほどないですけど。パーツを探したりするのも面白くて、自作してみようと思いました。
PCに詳しい友達と相談しながら、秋葉原で価格を比較しながら、1週間くらいかけてパーツを選んで。全部で20万円くらいかけて作りました。
──20万円は結構かけましたね!
快適な環境でゲームがしたかったので(笑)。あと、ケースをカッコいいのにして、中の温度が見えるようにしたかったんです。確か、ケースがすごく高かった記憶があります。
自作したPCは4年くらい使いました。その後はすでに組んであるPCを買いました。その頃、「黒い砂漠」というハイスペックなPCが必要なゲームをやりたくて、自作機では追いつけなくなったというのもあり、買い替えたんです。
もう一度組もうかなとも思ったんですけど、パーツを選んで計算したら、BTOで売っているものとさほど値段が変わらなかったので、手間を考えて買った方がいいかなと。
──買い換えるときはどこを重視したんですか?
メモリです。すでに配信を始めていたので、メモリを多めにしました。あとはSSDにしたところですかね。みんな速い速いと言うので、使ってみたかったんです。使ってみて、「なんでもっと早く買わなかったんだ!」と後悔しました。ゲームを立ち上げるまでにかかる時間のストレスがまったくないですから。そして次が今のPCです。
──今後、アップグレードしたいパーツはありますか?
パーツというよりも、パソコンまわりのデバイスを無線化したいです。ケーブルをなくしてきれいにしたい。マウスも今は無線でも速いみたいなので、いずれ無線化したいです!
注目されていないけど面白いゲームを世に広めたい
──動画編集はどのようにされているんですか?
YouTubeの動画は、相方と1日おきで編集するという感じでやっていたんです。でも、YouTubeを始めて2年くらいで僕がプロゲーマーになったらまったく時間がなくなってしまい、相方にお任せしていたのですが、それでも効率が悪くて。今は、編集は別の方にお願いしています。
撮影はよしもとゲーミングが提供してくれているゲーミングハウスで行って、動画素材を渡して編集をしてもらい、最後に確認して配信しています。
ゲーミングハウスにあるPCは配信とゲーム用
──ゲーミングハウス! それは便利ですね。
本当にありがたいです。今までは自宅で撮影して、器材も用意しなくちゃならなかったので。ゲーミングハウス兼スタジオ的な使い方ができるので、本当に助かります。場所も都心なので、すごく便利なんですよ。吉本興業がゲームにお金のにおいを嗅ぎつけてくれて、本当によかったです(笑)。
──YouTubeチャンネル「裏切りマンキーコングCh」は、もうすぐチャンネル登録者が10万人を超えるんですね。
そうなんです。ただ……2年前からもうすぐ10万人なんですけど(笑)。ゲームは出始めが一番登録者が伸びるんですけど、その頃、練習に集中してしまい、あまり配信できなかったんです。だから、ゲームが上手いトッププレイヤーは、YouTubeではトップじゃないんですよ!(笑)
──これからどのようなスタイルで活動をしていかれるのでしょうか?
よしもとゲーミングが立ち上がったことによって、ゲーム関係のイベントや、地方の仕事が増えてきました。そういったイベントを盛り上げていきたいです。個人的な人気がないとそもそも呼ばれないので、YouTubeなどでもちゃんと情報を発信していかないと、とは思います。
プロゲーマーとしては、もう30歳なので疲れやすくはなってきました。それでも大会で優勝もできているので、まだまだやれるとは思います。今後も自分でチームを作るなどの活動を広げていきたいと思っています。
注目されてはいないけど、面白いゲームってたくさんあるんですよ。でも、そういうゲームは全然お金がまわっていないんです。なので、あまり注目されていない面白いゲームを紹介して、お金が回るような仕組み作りができたらとは思っています。
最初は淡々と質問に答えていた西澤さんですが、やはりゲーム関係の話題になると、俄然、熱のこもったお話に。「ゲームが好き」というところからスタートした西澤さんの芸人人生。プロゲーマーとしてさらにゲーム中心の生活となった今、快適なゲーム環境作りは重要です。自作経験者ということで、PC環境についても愛のあるお話を聞くことができました。今後も芸人兼プロゲーマーとして活動を続けていくとのこと。西澤さんがMCを務めるゲーム番組の誕生を心待ちにしています。
Photo by_岩田えり