マザーボードの規格・サイズまとめ!ATX・microATX・Mini-ITX・E-ATXとは?
「マザーボード」はパソコンのあらゆる機器を接続する基板で、その役割もデバイスへの電源供給から制御まで多岐にわたります。しかし様々な規格や製品があるため、どれを選べば良いか分かりづらいことがあります。
さらにマザーボードの規格(フォームファクタ)には大きく分けて「ATX」「MicroATX」「Mini-ITX」「E-ATX」の4つがあります。それぞれに特徴があるため、自作したいPCに適したモデルを選ぶことが大切です。この記事では、マザーボードの規格や選び方について分かりやすく解説します。
目次
マザーボードとは
引用元:intel
マザーボード(motherboard)とは、パソコンの各部品を接続するための「基盤」のことです。基盤には細かな電子回路が通っており、プラスチックなどの堅い非導電材料で作られています。マザーボードに取り付ける主なパーツは次のとおりです。
- CPU
- GPU
- メモリ
- マウス
- キーボード
- HDDやSSD
- 拡張スロット
- 各種周辺機器
上記のように、パソコンに必要なあらゆる部品がマザーボードに接続されます。マザーボードは人間にたとえると脊髄のように、パソコン全体に電源を供給したり各パーツの動作をコントロールしたり、極めて重要な役割を担っています。
ただし、マザーボードによって様々な規格やサイズがあり、それによって接続できる機器が決まります。せっかくCPUやGPU、メモリなどを購入しても、規格が合わずに使えないこともあるので注意が必要です。
マザーボードの4つの代表的な規格・サイズ
マザーボードの代表的なフォームファクタ(規格)には、次の4つのものがあります。各規格のサイズや特徴は次のとおりです。
規格 | ATX | MicroATX | Mini-ITX | E-ATX |
---|---|---|---|---|
サイズ(縦×横) | 244mm×305mm | 244mm×244mm | 170mm×170mm | 305mm×330mm |
拡張スロット数 | 最大7基 | 最大4基 | 最大1基 | 最大7基 |
メモリスロット数 | 4基~8基 | 2基~4基 | 1基~2基 | 4基~8基 |
特徴 | タワー型のデスクトップパソコンで一般的に採用されており、ゲーミングPCのスタンダード規格 | ATXを小型化した規格で、ミニタワーなど省スペース型のデスクトップパソコンに採用されている | MicroATXをさらに小型化した規格で、スリムタワーやキューブ型など小型のパソコンに採用されている | ATXを大型化した規格で、一般的な用途を超えたワークステーションやサーバーなどに採用されている |
引用元:intel
上記の内容を踏まえたうえで、「ATX」「MicroATX」「Mini-ITX」「E-ATX」の4つの規格について詳しく見ていきましょう。
ATX
「ATX (Advanced Technology eXtended)」は1995年にIntelが策定したマザーボード規格です。基板サイズは縦244mm×縦305mmで、個人用PCのマザーボード規格としては最大の規格。最大7基の拡張スロットと4基~8基のメモリスロットを備えています。
ATXは基板サイズが大きいため、機能性と拡張性に優れていることが特徴です。ハイスペックなCPUに対応できる冷却ファンや、大型化が続いている最新のグラフィックボードも搭載可能。ハイエンドからミドルエンドのゲーミングPCで一般的な規格となっています。
ATX規格のマザーボードはスペースに余裕があり、パーツやケーブルの接続が容易なことや、エアフローが良好でケース内の温度を下げやすいこともメリットです。ハイスペックな自作PCを構成する場合は、ATX規格を選んでおけばまず問題ありません。
MicroATX
「MicroATX」はATXを小型化した規格で、基板サイズは244mm×244mmです。サイズが小さいため機能性や拡張性はやや控えめで、拡張スロットは最大4基、メモリスロットは2基~4基となります。省スペースのマイクロタワーなどで主流の規格です。
MicroATXの特徴は省スペース性とコストにあります。MicroATX規格のマザーボードはATX規格より低価格なことが多いので、ミドルエンドからローエンドの自作PCを構成したい場合におすすめです。PCの設置スペースが限られている場合も、MicroATXが向いています。
ただし、MicroATXは基板サイズが小さくスペースに余裕がないため、大型のCPUクーラーやハイエンドのグラフィックボードは装着できないことがあります。そのため、ハイエンドPCを構成したい場合は、前述したATXを採用する方が無難です。
Mini-ITX
「Mini-ITX (Mini Integrated Technology eXtended)」は、台湾のVIA Technologies社が策定したマザーボード規格です。基板サイズは縦170mm×縦170mmで、主流規格の中では最小サイズの規格。省スペースを追求したキューブ型パソコンで採用されています。
元々は組み込みシステムのために設計されたものなので、拡張スロットは最大1基、メモリスロットは1基~2基と少なめ。他の規格と比べると機能性や拡張性に制限があり、スペースも狭いためミドルクラス以上のゲーミングPCを制作することは困難です。
また、基盤の小型化のためにコストが掛かっているため、ATXよりも割高なことがあります。一方で、設置場所などの都合からできるだけ小さいPCが必要な場合や、サブ機として控えめなスペックのゲーミングPCを構成したい場合はMini-ITX規格がおすすめです。
E-ATX
「E-ATX (Extended-ATX)」はATXを巨大化した規格で、305mm×330mmという圧倒的なサイズを誇ります。元々は個人用PC向けではなく、高度な演算処理が求められるワークステーションや、膨大なデータを管理する必要があるサーバーのために策定された規格です。
E-ATXの特徴はスペースの広さで、ATXよりも余裕があります。ハイエンドのグラフィックボードも容易に取り付けられるでしょう。しかも、マザーボードに直接接続する「M.2 SSD」に対応した製品や、CPUのオーバークロック用チップを搭載する製品も増えています。
自作PCのマザーボードにE-ATX規格を採用すると、ハイスペックなPCを構成しやすくなります。ハイエンドのパーツや大型の冷却装置などを組み合わせて、最高峰のゲーミングPCを制作したい人におすすめです。E-ATXの詳細は下記のページで詳しく解説しています。
【自作PC制作向け】マザーボードのチェックポイント
引用元:intel
マザーボードを選ぶ際、次の3つのポイントを特に意識することが大切です。いずれかの点を見落とすと、必要なパーツを接続できなかったり、思うようなスペックを確保できなかったりします。
- PCケースのサイズとマザーボードの相性
- チップセットとソケットの対応
- 拡張スロットやインターフェイスなどの仕様
PCケースのサイズとマザーボードの相性
マザーボードを選ぶときにまず考慮すべき点は、「PCケース」のサイズとの相性です。PCケースの内部スペースに余裕がなければ、マザーボードを設置できません。PCケースには5つのサイズがありますが、それぞれに適合するマザーボード規格は次のとおりです。
PCケースのサイズ | 適合するマザーボード規格 |
---|---|
フルタワー | E-ATX ATX Micro ATX Mini ITX |
ミドルタワー | E-ATX Micro ATX Mini ITX |
ミニタワー | Micro ATX Mini ITX |
スリムタワー | Micro ATX Mini ITX |
キューブ | Micro ATX Mini ITX |
最大サイズのE-ATXは、フルタワーのケースのみ適合します。他のサイズのケースには入らないので注意が必要です。通常のATXはフルタワーもしくはミドルタワーに使用可能で、ミニタワー以下のサイズのケースには設置できません。
Micro ATXやMini ITXは、どのサイズのケースでも基本的には使用できます。ただし、ケースによってはミニタワーでもMini ITXしか入らないものや、Micro ATXが入らないキューブもあるので要注意。あらかじめケースの仕様を確認しておきましょう。
メーカー | ソケット(コード名) | 代表的なCPU | チップセット | 対応マザーボード規格 |
---|---|---|---|---|
Intel | LGA 1200(Rocket Lake) | 第11世代CPU(Core i7 11700Kなど) | Z590 H570 B560 Z490 H470 |
ATX MicroATX Mini-ITX |
LGA 1200(Comet Lake) | 第10世代CPU(Core i7 10700Kなど) | Z490 H470 B460 H410 |
ATX MicroATX Mini-ITX |
|
LGA 2066(Cascade Lake) | 第10世代CPU(Core i9 10920Xなど) | X299 | ATX | |
LGA 1151(Coffee Lake) | 第9世代および第8世代CPU(Core i7 9700など) | Z390 B365 Z370 H370 B360 H310 |
ATX MicroATX |
|
LGA 1151(Kaby Lake, Skylake) | 第7世代および第6世代CPU(Core i7 7700, Core i7 6700など) | Z270 H270 B250 Z170 H170 B150 H110 |
MicroATX | |
LGA 1150(Broadwell, Haswell) | 第5世代および第6世代CPU(Core i7 5775C, Core i7 4770など) | Z97 H97 Z87 H87 B85 H81 |
MicroATX | |
AMD | Socket sWRX8(Ryzen Threadripper) | Ryzen Threadripperシリーズ(Ryzen Threadripper 3990X, Ryzen Threadripper 3970Xなど) | WRX80 | E-ATX |
Socket AM4(Ryzen) | Ryzenシリーズ(Ryzen 9 5950X, Ryzen 7 5800X, Ryzen 5 5600X, Ryzen 3 3300Xなど) | A320 B350 X370 B450 X470 A520 B550 X570 |
ATX MicroATX Mini-ITX |
上記のように、Intel製CPUにはさまざまなタイプのソケットがあり、対応しているマザーボード規格も異なります。LGA 2066採用の新しいモデルはATX専用で、LGA 1150などの古いモデルはMicroATXしか対応していないなど、マザーボードの選択には注意が必要です。
一方で、AMD製CPUの場合はソケットの種類は2つで、プロフェッショナル用途も視野に入れた「Ryzen Threadrippe」シリーズはE-ATX専用となります。通常のRyzenシリーズは3サイズのマザーボードに対応しているため、選択の幅が広がりやすくなるでしょう。
拡張スロットやインターフェイスなどの仕様
ハイスペックなゲーミングPCを構築したいのであれば、拡張スロットやインターフェイスの仕様も確認しましょう。マザーボードの機能性や拡張性が決まる重要な要素になります。特に「PCI Express」と「M.2 SSD」は意識すべきポイントです。
「PCI Express」はグラフィックボードや、キャプチャーボードの装着に欠かせない拡張スロットです。「x16」「x8」「x4」「x1」という4つの規格があり、それぞれ接続できるパーツが異なります。使用するパーツに適合するものを選ばないと接続できません。
「M.2 SSD」はデータ転送を高速に行うためのSSD規格で、ハイスペックなマザーボードにはM.2 SSD接続用のスロットがあります。M.2には「2230」「2242」「2260」「2280」「22110」の5つの規格があり、基本的には「2260」を搭載していれば問題ありません。
マザーボードの選び方
マザーボードはPCの機能性や拡張性を左右する重大なパーツです。そのため、マザーボードを選ぶときは、次の9つのポイントを意識しましょう。
- CPUソケット
- フォームファクタ(規格)やチップセット
- メモリスロット数およびメモリクロック
- 拡張スロット(PCI ExpressやSATA)の搭載数と位置
- USB Type-CやThunderbolt 3などインターフェイス
- SLIやCrossfireなどのオプションへの対応
- VRMフェーズ(電源制御機能)
- オーディオチップ
- 無線LAN
CPUソケットや規格、チップセットに関しては先ほどご紹介したとおり。メモリスロット数はメモリを挿入できる枚数で、多い方がCPUのメモリ容量を増やせます。メモリクロックはメモリの速度で、数値が高いとCPUの処理速度に有利です。
拡張スロットや各種インターフェイス、SLIやCrossfireへの対応はPCの使いやすさや拡張性に大きな影響を与えます。マルチGPUは近年では下火になりましたが、採用する場合はPCI-Express 16xを2基以上搭載したATX規格のマザーボードが必要です。
CPUを限界までオーバークロックさせたい場合はVRMフェーズ、サウンドの音質を重視する場合はオーディオチップがポイントです。マザーボードの選び方は下記のページで解説しています。さまざまな要素を考慮する必要があるため、ぜひ参考にしてみてください。
【規格・サイズ別】おすすめマザーボード4選
マザーボードの選び方は考慮すべき点が多いため、具体的にどれを選べばいいか分かりづらいかもしれません。そこで、「ATX」「MicroATX」「Mini-ITX」「E-ATX」それぞれの規格で、おすすめ製品を1点ずつご紹介します。下記のページも併せて参考にしてみましょう。
ASUS TUF GAMING H570-PRO
引用元:ASUS
「ASUS TUF GAMING H570-PRO」は、IntelのH570チップセットを搭載したマザーボードです。最新の「Rocket Lake (第11世代)」のCPUに対応しているため、ハイエンドPCを制作したい人に適しています。
フォームファクタ(規格) | ATX |
---|---|
CPUソケット | LGA 1200 |
チップセット | H570 |
詳細メモリタイプ | DIMM DDR4 (2400MHz) |
参考価格(税込) | 16,980円 |
特徴 | IntelのH570チップセット搭載ゲーミングマザーボード Intel第11世代Core iプロセッサー対応 PCIe 4.0やUSB 3.2 Gen.2 Type-Cなどの次世代インターフェイスをサポート |
「ASUS TUF GAMING H570-PRO」は、2021年4月に発売された最新のマザーボードです。各種インターフェイスの次世代をサポートしているので、機能性や拡張性も優れています。下記のサイトで購入できるので、ぜひ検討してみてください。
ASUS TUF GAMING B560M-PLUS
引用元:ASUS
「ASUS TUF GAMING B560M-PLUS」は、IntelのB560チップセットを搭載したマザーボードです。最新の「Rocket Lake (第11世代)」のCPUに対応しているため、省スペースでハイスペックなゲーミングPCを制作したい人に向いています。
フォームファクタ(規格) | MicroATX |
---|---|
CPUソケット | LGA 1200 |
チップセット | B560 |
詳細メモリタイプ | DIMM DDR4 (2400MHz) |
参考価格(税込) | 13,427円 |
特徴 | IntelのB560チップセット搭載ゲーミングマザーボード Intel第11世代Core iプロセッサー対応 PCIe 4.0やUSB 3.2 Gen.2などの次世代インターフェイスをサポート |
「ASUS TUF GAMING B560M-PLUS」は、2021年3月に発売された新しい最新のマザーボードです。M.2用ヒートシンクや光デジタルオーディオ端子なども装備されているので、機能性も高まっています。下記のサイトで購入できるので、ぜひ検討してみてください。
ASRock B550 Phantom Gaming-ITX/ax
引用元:ASRock
「ASRock B550 Phantom Gaming-ITX/ax」は、AMDのB550チップセットを搭載したマザーボードです。第3世代AMD RyzenのCPUに対応しており、MicroATXでありながら機能性が高いため、極力スペースを抑えてゲーミングPCを制作したい人におすすめです。
フォームファクタ(規格) | MicroATX |
---|---|
CPUソケット | SocketAM4 |
チップセット | B550 |
詳細メモリタイプ | DIMM DDR4 (2400MHz) |
参考価格(税込) | 21,927円 |
特徴 | AMDのB550チップセット搭載ゲーミングマザーボード AMD第3世代Ryzenプロセッサー対応 IEEE802.11ax無線LAN規格やUSB3.2 Gen2を採用するなど機能性も高い |
「ASRock B550 Phantom Gaming-ITX/ax」は、小型でありながら高い機能性が特徴。M.2 SSDスロット2基、最新のIEEE802.11ax規格の無線LANなど、2万円以上の価格に見合うだけのスペックがあります。下記のサイトで購入できるので、ぜひ検討してみてください。
GIGABYTE X570 AORUS XTREME [Rev.1.0]
引用元:GIGABYTE
「GIGABYTE X570 AORUS XTREME [Rev.1.0]」は、AMDのX570チップセットを搭載したマザーボードです。第3世代AMD RyzenのCPUを搭載可能で、E-ATXのサイズを活かした圧倒的なスペックが魅力的。最高峰のゲーミングPCを構成したい人におすすめです。
フォームファクタ(規格) | E-ATX |
---|---|
CPUソケット | SocketAM4 |
チップセット | X570 |
詳細メモリタイプ | DIMM DDR4 (4400MHz) |
参考価格(税込) | 89,800円 |
特徴 | AMDのX570チップセット搭載ゲーミングマザーボード AMD第3世代Ryzenプロセッサー対応 PCI-Express 16xとM.2ソケットを3基ずつ搭載するなど機能性や拡張性が極めて高い |
「GIGABYTE X570 AORUS XTREME [Rev.1.0]」は、フェーズダブラー撤廃によるスムーズな電源供給や、16個のVRMフェーズを活かした最大限のOCが可能。メモリクロックも4400MHzと圧倒的です。下記のサイトで購入できるので、ぜひ検討してみてください。
まとめ
マザーボードには「ATX」「MicroATX」「Mini-ITX」「E-ATX」の4つの規格(フォームファクタ)があり、基板サイズやスロットの数などが異なります。規格によって機能性や拡張性に大きな違いが出るため、自作PCの構成時は適切なタイプを選ぶことが大切です。
E-ATXはとにかく最高峰のゲーミングPCを構成したい人に向いています。スペックを高めつつも選択肢を増やしたい人は最も一般的なATXを選ぶと良いでしょう。できるだけ小スペースに抑えたい人は、Mini-ITXやE-ATXを検討してみることをおすすめします。
ただし、搭載するCPUによって適合するマザーボードが異なることや、同じ規格でもメーカーやグレードによって品質やスペックに違いがあることに注意が必要です。今回ご紹介したマザーボードに関する情報を、ぜひ自作PC制作時の参考にしてみてください。