CPUの殻割りで性能がアップする?メリットとデメリットを徹底比較!
初心者にはあまりお勧めできない…!自作PC達人だけに許された「CPUの殻割り」とは
- 殻割りはCPUを分解する危険な荒業
CPUの殻割りとは、CPUをカッターナイフなどで分解し、内部で使われている熱伝導グリスを変更する行為です。CPUはPCの頭脳とも呼ばれる繊細で複雑なパーツで、高性能な最新CPUは5万円を超えることもある高価なパーツ。ただでさえ扱いに慎重さが求められるパーツなのに、わざわざ分割してしまうというのは、自作PC初心者の人からすれば信じがたい行為に映るかもしれません。
- 殻割りはCPUの熱伝導率を高めて発熱を抑えるのが目的
殻割り行為が知られるようになったのは、2012年にリリースされたIntel(インテル)のIvyBridge世代のCPUがきっかけです。その前年にリリースされたSandyBridge世代のCPUは、今でも名機として語られるほど爆発的な人気を博しました。当然その後継CPUにあたるIvyBridge世代のCPUには、自作PCユーザーから熱い期待が寄せられることとなります。ところがIntelは製造コストを抑えるために、IvyBridge世代から熱伝統効率が悪いグリスに変更してしまったのです。
通常の使用はまだしも、オーバークロックのような過激な使い方をすると、どうしてもCPUの温度が高くなりすぎてしまい、性能を発揮できないという現象が見られました。その原因が変更されたCPU内部の「熱伝導グリス」です。
このグリスを熱伝導効率が高いものと入れ替えるため、一部の自作PCユーザーがCPUを殻割りして内部に手を入れだします。元からあったグリスを熱伝導率の高いグリスに変更すると、CPUの発熱が劇的に抑えられ、性能も高くなったという報告が相次いだのです。これらの経緯でCPUの殻割りが一気にメジャーなものとなっていきました。
CPU殻割りのメリットとデメリット
- メリット:熱伝導率が上がりCPU本来の性能を発揮できる
CPUの殻割りはCPUの性能をフルに引き出すために行います。でもなぜ殻割りによってCPUの性能が上がるのでしょうか?殻割りによって熱伝導効率が高いグリスに変更されると、CPUの温度が下がりやすくなります。通常の用途ではそこまで問題になりませんが、以下のようなシチュエーションでは、CPUの温度はCPU本来の性能を阻害する原因となってしまいます。
- オーバークロック(OC)でクロック周波数を上げる
- ゲームなどで長時間CPUをフル稼働させる
- 夏場など室内の温度が高い
グリスの熱伝導効率を高めれば、CPUファンや水冷などの効果が高まりCPUの温度は確実に下がります。
- デメリット1:殻割りに慣れていないとCPUを壊してしまう可能性が高い
殻割りにはメリットだけでなくデメリットも存在します。カッターナイフなどでCPUを分解するわけですから、壊してしまう可能性は大いにあります。不慣れな人が殻割りをしてしまうと、あっさりCPUが破損して起動しなくなるでしょう。
- デメリット2:メーカー保証が受けられなくなる
もう1つのデメリットとして、CPUのメーカー保証が受けられなくなるという点も念頭に入れておきましょう。万が一CPU自体に初期不良などがあったとしても、殻割りをした時点で交換保証などは受けられなくなります。
おすすめのCPU殻割りの方法・手順
- 殻割り専用ツールやカッターなどでCPUを分解する
まずはカッターなどを使って、CPUを分解してください。おすすめは1000円台で入手できる、CPU殻割り専用ツールを使うことです。失敗しにくくなるので初心者はもちろん、ベテランの殻割りユーザーも今はほぼツールを使うようになりました。
- 元々塗ってあったグリスを除去
CPUとCPUファンの間のグリスを除去するときは、ドラッグストアなどで数百円で購入可能な無水エタノールがよく使われます。ティッシュに染み込ませてグリスを拭くだけでたいていの場合は除去できます。CPU内部のグリスは、無水エタノールではなかなか除去するのが難しいです。無理に除去しようとするとCPUのコア部分を傷つけてしまいがち。ベテラン殻割りユーザーの間では、電子パーツ用の液体クリーナーなどで丁寧に除去していく方法が最も一般的です。CPU内部のグリスの除去は、殻割りの中でもっともCPUを壊しやすい手順となっているので注意してください。
- 熱伝導率の高いグリスに変更
元から塗ってあったグリスを除去したら、さらに熱伝導率の高いグリスを塗りましょう。なお、液体金属グリスを使えばさらに熱伝導率が高まり、温度を下げることができます。ただし、絶縁処理という難易度の高い工程が必要となるため、殻割りユーザーの中でも経験値が高い人しか手を出すべきではありません。
- CPUを再度くっつける
最後にヒートスプレッダを接着すれば、殻割りによって新しく生まれ変わったCPUの完成です。
CPU殻割りは諸刃の剣!本番前に安い中古CPUで練習しておこう
ここまでを見て、「CPUの殻割り、怖すぎ・・・」と思った人が多いかもしれませんね。分解、グリス除去、接着。手順としてはこの3つだけで非常にシンプルなのですが、1つ1つの手順に細かい落とし穴が多数存在します。それぞれのCPUによって仕様が異なりますし、同じCPUでも「コスタリカ製」と「マレーシア製」で内部の仕様が異なるなんてこともザラ。いざ分解してみたら想像と違う構造で、途方にくれてしまうなんていうことも殻割りユーザーの間では日常茶飯事なのです。
殻割りは1つでも手順をミスすれば、CPUが全く起動しなくなってしまいます。中古のCPUなどで実験しながら、徐々に殻割りスキルを高めていきましょう!