「FFXIV」の仕掛け人、吉田直樹さんインタビュー! 新生「FFXIV」の魅力と開発裏話に迫る【後編】
ゲーム好きはもちろん、あまり知らないという人も一度は耳にしたことがある「ファイナルファンタジー」シリーズ。MMORPG(大規模大人数参加型オンラインゲーム)として生まれた「ファイナルファンタジーXIV」(以下、「FFXIV」)には、これまでの「FF」ファンも思わずニヤッとしてしまう仕掛けが盛りだくさん。「FF」を遊んだことがないという方はこの機会にぜひプレイを。新しい楽しみと驚きが待っています。
後編では、2010年から「FFXIV」指揮を執り作品を立て直した、プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹さんに、全世界でプレイヤー数が1800万人(※1)を超え、世界中で人気を博している「FFXIV」の魅力と開発裏話をお伺いしました。
(※1)日本・北米・欧州・中国・韓国の5 リージョンの累計アカウント数。フリートライアル版のアカウントを含む。
吉田直樹さん
ファイナルファンタジーXIVプロデューサー兼ディレクター。スクウェア·エニックス取締役第三開発事業本部長。専門学校卒業後、1993年に株式会社ハドソンに入社。天外魔境シリーズ、ボンバーマンシリーズなどの開発に携わる。2005年に株式会社スクウェア·エニックスに入社。「ドラゴンクエスト モンスターバトルロード」や「ドラゴンクエストX」を手がけ、10年12月に「ファイナルファンタジーXIV」のプロデューサー兼ディレクターに就任。「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」として作品を立て直した。
「FINAL FANTASY XIV」Twitter:@FF_XIV_JP
「FINAL FANTASY XIV」HP:https://jp.finalfantasyxiv.com/
主人公はモニターの向こうのプレイヤー
新生版「FFXIV」はサービス開始から約7年。常により良い状態を目指してバージョンアップがおこなわれ、新しい楽しみと驚きに溢れている
――「FFXIV」は吉田さんが関わられる前の旧版があり、2013年にリリースされ、現在も運営されている「新生」からプロデューサーとして吉田さんが陣頭指揮をとられています。その「新生」を担当するにあたり、オンラインゲームに重要な機能として優先したことなどは何だったのでしょうか。
僕はかなり初期からのオンラインゲーマーで、その進化や変遷を知っていたので、そもそも「時代に取り残されたゲームデザインだな」というのが旧「FFXIV」の感想でした。
最も重要だったのは、どんなゲームデザインにするかという点。それによってサーバの設計も変わりますし、使用するテクノロジーの選択にも違いが出てきます。「旧FFXIVをどうするか、ではなく、FFの最新MMORPGとはどうあるべきか」を考えた結果、「すべて作り直す=新生FFXIVを開発する」という結論になりました。
その中でも特に注意したのがユーザーインターフェースです。MMORPGはPCゲームとして生まれ、世界中で楽しまれていますが、その大部分のプレイヤーはマウス+キーボード操作に慣れています。むしろ、ゲームパッドでMMORPGをプレイするという概念自体がほとんどありませんでした。「FFXI」くらいでしょうか。そのため、家庭用ゲーム機で育った「FF」シリーズとして、ゲームパッドでしっかり遊べることに加え、グローバルスタンダードなマウス+キーボード操作を改めて用意しました。
2モードを並列に用意するというのは非常にコストの高いことではありますが、必須要件として、チームには徹底してもらいました。
――その2モードを用意するというのは高コストであると同時にリスクも髙かったと思います。「FFXIV」では様々なジョブ(※2)をそれぞれのフィーリングで遊ぶことができますよね。その「キーボード」か「コントローラ」などの入力デバイスが変わっても、それぞれのプレイ体験や気持ちよさが変わらないような配慮はどのようにされているのでしょうか。
ジョブ個別の操作感覚を、さらにゲームパッド/マウス+キーボードという2系統のUIに個別対応するのは事実上不可能です。なので、ジョブ個別に行うのではなく、使用するアクションの数をできるだけ統一し、そもそもキーボードに比べてボタン数の少ないゲームパッドで快適に遊べることをまず目指しました。
そうすることにより、マウス+キーボードであってもアクション数が抑えられ、煩雑なジョブアクションの取り回しが無くなります。その上で、そのジョブ固有のゲーム体験を作ることを心掛けています。「FFXIV」は拡張パッケージリリースのたびに、各ジョブにアクションの追加だけでなく、見直しや削除が入るのはこのためです。
(※2)ナイトや黒魔道士、白魔道士などの職業のことを「ジョブ」といい、それぞれに盾役、攻撃役、回復役などの役割がある。
戦うための装備だけでなく、採集や製作をする装備もイメージにあわせて作り込まれている。装備を集めるのもひとつの楽しみ
――そういうことだったんですね。プレイするときに、そういった観点からアクションを触ってみると、また違った見え方、プレイ感覚になるかもしれません。実際にプレイをしていると、ムービーシーンだけでなくプレイしている画面も美麗で、映像への演出も非常にこだわっているように思います。そういった「FFXIV」における映像の美しさだけではない「映像演出」のこだわりは、どのようなポイントを念頭に作り上げているのでしょうか。
オンラインゲームではありますが、ナンバリングのついた「FFシリーズ最新作」ですから、「世界を救う冒険であること」を徹底しつつ、「自分自身が主人公である」ことにこだわっています。
誰かの冒険を追体験するのではなく、あくまでも主人公はモニターの向こうのプレイヤーです。演出上で自分が置いてけぼりになっている感覚や、感情表現を勝手に描かれることへの嫌悪感を持たれないよう、こだわりや工夫を行っています。
重視しているのは、細かいデザインよりもシルエット
装備の能力はそのままに、見た目だけお気に入りの装備にすることは可能。また、装備によっては染色も可能であり、その組み合わせは無限大
――自分自身が主人公であるという点においては「FFXIV」は装備の豊富さ、ユニークさも魅力のひとつになっていると感じます。MMORPGは運営される限り、続いていく物語です。壮大な時間のなかで、ジョブごとに武具のデザインのバリエーションを作り、種族においてはサイズも変わることで見え方も変わってしまうという大変な作業において、最も重要視しているポイントはどこでしょうか。
「FFXIV」はFFシリーズの中でも割合の少ない「自分自身が主人公になる」ゲームです。自分でキャラメイクしたキャラクターを操作することになるので、服装や髪形、装備デザインの組み合わせによる「おしゃれ(着飾ること)」というのは、冒険を続けていく上でとても重要です。それによって、プレイヤーのモチベーションが大きく高まると思っています。
――そうですね。武具投影という、見た目が好きな装備の外見だけを着飾ることができるシステムもプレイヤーの皆さんにとって大事なものになっていると思います。
その一方で、「FFXIV」のグラフィックス水準で装備グラフィックスを量産することはとても大変です。プレイヤーキャラクターの頭身が種族によりまちまちですし、男女で胸やお尻のサイズも異なります。
それぞれの種族がバトルをするために足を大きく開いたり、腕を振り回すため、各関節部分のデザインはポリゴン同士のめり込みを避けたり、物理演算を必要とする「揺れモノ」を多用しないなど、細かく仕様が決まっています。まず、この細かい仕様作りが徹底されていることそのものが工夫のひとつで、もうひとつはそれを把握したうえで描かれるアートワークチームの力量が高いことが挙げられます。キャラクターモデルチームとの連携がとても重要なんです。
その上で最も重視しているのは、細かいデザインよりも、やはりシルエットですね。同じ系統の装備でコーディネートをまとめたとき、どんなシルエットになるか、ということを重視し、細かい部分はある程度目をつぶるようにとお願いしています。多人数で遊ぶことが要求されるゲームなので、シングルプレイのゲームに比べて、物理演算などは贅沢に使えませんから。
――フィールドや街中、バトル時でも特徴がある装備やオシャレな服に目がとまりますし、もはや「FFXIV」の大きな特徴のひとつなのかなと感じます。装備が違和感なく、世界に溶け込み、それさえも演出のひとつになる統一感は本当に感心します。
ポリゴンの細かいめり込みなど、気にしすぎていると大胆なシルエットの装備が作れなくなることもあり、「思い切ってやってしまおう!」というのも、他のFFシリーズに比べて重視している点と言えるかもしれません。
「FFXIV」サウンドチームのこだわりはもはや職人芸
戦いは画面の演出とともに音楽がプレイヤーの気分を盛り上げ、その世界の説得力を一気に上げてくれる。「FFXIV」を支える超重要なファクター
――ダンジョンやレイドなどにいくときにプレイヤーに大きな影響を与えるのは映像だけでなく、流れてくる音楽も重要だと感じます。ダンジョンやボスを攻略しているタイムラインに合わせて、音楽が戦いや物語を彩っていますね。もはや劇伴を作るのに近いのかと思いますが、祖堅正慶さん(※3)をはじめとした音楽、映像チームと打ち合わせはどのように重ねているのでしょうか。
彼らとは初期に楽曲の内容の打ち合わせをした後は、常に開発中のゲームをプレイしながら楽曲や環境音調整をしてもらっています。それがサウンドディレクター祖堅のディレクションですし、「FFXIV」サウンドチームのこだわりでもあるからです。
組みあがってきたバトルやコンテンツを実際に数秒単位でプレイしながら、プレイヤーのその時の心理状態を予想しつつ、曲の切り替えタイミングや環境音を設定していきます。呆れるくらいのこだわりですが、それがプレイヤーのみなさんに届いているのだと思います。もはや職人芸ですね(笑)。
(※3)「FFXIV」サウンドディレクター兼コンポーザー。
――あのダンジョンの音楽。あのボスの音楽と、プレイヤーのみなさんに思い出があると感じます。その思いが届いたひとつの場所として、実際のオーケストラが「FFXIV」の音楽を奏でる「FINAL FANTASY XIV ORCHESTRA CONCERT」も開催されましたが、コンサートに限らず、カフェやグッズ展開など幅広く展開し、ゲームだけではないコンテンツが多くのファンに受け入れられています。こういった展開がファンの楽しみとなっていることは、開発する中で想像されていたのでしょうか?
エオルゼアカフェはパセラさんとの共同事業ですが、こちらからお話を持ち掛けさせていただきました。他の展開もすべて公式で行っていますので、「FFXIV」はゲームだけでなく、コミュニティやゲーム環境を含めて楽しむものというのは、新生以降にポリシーとして狙って行ってきた活動です。
「エオルゼアカフェ」ではプレイヤーからメニューのアイディアを募集。実際にメニュー化されるなどプレイヤー同士、そしてプレイヤーと運営の大事な中継地点となっている
でも、さすがにTHE PRIMALS(※4)というバンドの単独コンサートに発展できるとは思っていませんでしたが、プレイヤーコミュニティのみなさんの盛り上げが、僕らの当初計画の規模をどんどん押し上げて行ってくださっているのは事実です。
これからも、開発·運営チームだけでなく、プレイヤーのみなさんと「一緒に創り上げていく」ゲームでありたいと思っています。みなさん、いつもありがとうございます!
(※4)サウンドディレクター祖堅正慶氏率いるFFXIVオフィシャルバンド。
リアルイベントも積極的におこなっていて、文中にもあったTHE PRIMALSのライブを始め、チケット入手困難になる人気ぶり
新鮮で驚くべき体験をしにエオルゼアへ!
――新生が正式に開始してから7年です。7年経ったいまも新しいプレイヤーのみなさんが増えていますよね。これはすごいことだなと改めて思います。そういった新しいプレイヤーとなる方、これから「フリートライアル」を遊んでみようと思う方には、どのような気持ちで遊んでほしいですか?
もし、これまでに「FF」シリーズを遊んだことのある方には、「いつものFFなので安心してプレイしてみてください」とお伝えしていますので、先入観なく色々なものを見て回っていただけると嬉しいです。
オンラインゲームやFFシリーズ未体験、MMORPG未体験という方には、「未体験な分だけドキドキもあると思いますが、それを遥かに超える、未知のゲーム体験が待っています!」とお伝えしたいです。
僕が「Ultima Online」などで味わった、「この街の人たちがみんな他のプレイヤーなんだ!」という感覚は、とても新鮮で驚くべき体験ですので、ぜひ、それだけでも経験しに、エオルゼアへ遊びに来てください。お待ちしています!
「FFXIV」最大のイベント「ファンフェスティバル」2018~19年はラスベガス、パリ、東京で開催された
吉Pこと吉田直樹さんとオンラインゲーム、そして「FFXIV」に関するインタビュー、いかがでしたでしょうか。「FFXIV」の世界では、このインタビューを読んでいる最中にも新たな冒険が始まり、さまざまな思い出が生まれ、プレイヤーの数だけ物語が紡がれています。数ある「MMORPG」の中でも「FFXIV」は、もっとも手にしやすく遊びやすい作品のはず。少しでも興味が湧いたなら、ぜひフリートライアルをお試しください!
世界中の光の戦士への栄光を祈るとともに、今回の企画にご協力くださった吉田直樹さんに感謝いたします。本当にありがとうございました!
「ファイナルファンタジーXIV」フリートライアルはこちら!
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