水冷式PCのメリット・デメリット〜こだわるなら自作PCがおすすめ!
PCのCPUを専用の冷却液で冷やす「水冷式PC」は、優れた冷却性能や静音性から人気が高まっています。本記事では水冷式PCの導入を検討している人に向けて、水冷式PCの仕組みやメリット、おすすめの水冷CPUクーラーなどについて解説します。
水冷式PCとは
水冷式PCは、「PCの頭脳」とも呼べるCPUを水冷システムで冷却するPCのことです。CPUの表面温度が高い状態が続くと、PC動作の不安定化や故障などの原因になります。こうした事態を回避するために取り付けられているのが「CPUクーラー」です。
ファンが回転して熱を逃がす空冷式のCPUクーラーとは異なり、水冷式のCPUクーラーでは冷却液を用いてCPUを冷却します。具体的には上記の画像のように、車のラジエーター同様にチューブ内を冷却液が通り、CPUの熱を放熱フィンまで逃がすというシステム。空冷式PCは一般的な空冷式PCより、効率的に冷却できると考えられています。
なお、水冷式PCには冷却ユニットやラジエーターなどのパーツが欠かせません。またグラボを水冷式にする場合は、後述するように簡易水冷一体型グラボが必要になります。
水冷式PCの仕組み
水冷式のCPUクーラーは、CPUに密着させた水冷ユニットと、冷却ファンが接続されたラジエーターで構成されています。水冷式PCには「簡易水冷」と「本格水冷」の2種類のものがありますが、まず簡易水冷の仕組みについて見ていきましょう。
水冷ユニットは熱を伝えやすい金属で作られており、内部には冷却液が充填されています。CPUから発せられる熱は冷却液に吸収されて、冷却液の温度が上がる代わりにCPUの温度は低下。熱くなった冷却液は、ホースを通してラジエーターに送られます。
ラジエーターには冷却ファンが付いていて、ファンの回転でラジエーター内部の冷却液が冷やされます。冷却された冷却液はポンプで汲み上げられて冷却ユニットに戻ります。このように、冷却液が冷却ユニットとラジエーターを循環してCPUを冷やすのが水冷式PCです。
引用元:マウスコンピューター
本格水冷の場合の仕組み
先ほどは簡易水冷の仕組みを解説しましたが、本格水冷も基本的な仕組みは同じです。ただし、冷却水がラジエーターから冷却ユニットに戻るまでに、冷却水が「リザーバータンク」を通る点で大きく異なります。リザーバータンクの存在によって、冷却水がさらに冷えやすくなり、冷却性能が向上することがポイントです。
水冷式PCのメリット
本章では、水冷式PCのメリットについて下記2つの観点から紹介します。なお、簡易水冷・本格水冷ともに基本的なポイントは同じです。
- 冷却性能の高さ
- 静音化
冷却性能の高さ
ファンの回転でCPUの熱を排出する空冷式PCと比べて、熱交換の原理を応用した水冷式PCは冷却性能が高いです。空冷式PCは、ケースに搭載されたファンでCPUの熱を拡散させるため、ケース内部に熱がこもることがあります。
一方で水冷式PCの場合、熱を持った冷却液はホースを介して冷却ユニットとラジエーターを循環するため、ケース内部に熱が拡散されることがありません。CPUの発熱がダイレクトに外部へ排出される構造なので、総合的な冷却能力は空冷式を大きく上回ります。
静音化
空冷式PCの場合、発熱量の多い高性能CPUを冷却するには、大きなファンを高速回転させる必要があります。ファンのサイズと回転数が上がるほど回転音も大きくなるので、PCの動作音はどうしても大きくなってしまいます。
水冷式PCの場合もラジエーターに冷却ファンは接続されていますが、これはあくまで熱交換の原理で冷却液を冷やすためのもの。大きなファンを高速回転させる必要がないので、水冷式PCの冷却ファンは小型で静かなものがほとんどです。
CPUのスペックが高ければ高いほど発熱量が多くなるため、水冷式PCがもたらす静音化の効果を実感しやすくなります。ハイエンドモデルのゲーミングPCを購入する際は、ぜひ水冷式CPUクーラーの採用を検討してみてください。
水冷式PCのデメリット
メリットの多い水冷式PCですが、いくつかのデメリットもあります。下記3つのポイントはとくに重要なので、簡易水冷・本格水冷を導入する際は確認しておきましょう。
- こまめな掃除が必要
- 空冷式よりも高価
- 取り付けできない場合も
こまめな掃除が必要
水冷式PCに限ったことではありませんが、空気を循環させるファンにはほこりが溜まりがちです。定期的にファンを掃除しないと、ファンの回転速度やラジエーターへの送風量が少なくなり、冷却液の温度が下がりづらくなることがあります。
またラジエーターと冷却ユニットを繋ぐホースが劣化することも、水冷式PCのデメリットです。ホースが劣化してひび割れて漏れ出た冷却液により、CPUやマザーボードなどがショートして修理不可能な状態になってしまうこともあります。
水冷式PCを使う場合は、少なくとも半年に一度はホースの点検を行いましょう。ホースが劣化しているようならホースを交換するなど、丁寧なメンテナンスが必要です。
空冷式よりも高価
水冷式PCは、冷却ユニットやラジエーターなど多くのパーツで構成されているため、空冷式PCより高価になりがちです。簡易水冷より冷却性能が高い本格水冷は、リザーバータンクやポンプなど本格的なパーツが必要なため、さらに高額になります。
空冷式PCの導入を検討する際は、手間とコストに見合うかを考えることが重要です。空冷式PCでも十分な冷却性能がある場合は、水冷式の導入でコストパフォーマンスが低下することも少なくありません。
取り付けできない場合も
空冷式PCは通常の冷却ファンを取り付けるだけなので、コンパクトなケースにも搭載できます。しかし水冷式PCの場合、ケースのサイズに余裕がないと、そもそも取り付けることができない可能性があります。
市販モデルのPCの場合は、スペースの制約がとくに厳しいので注意が必要です。現在のPCに水冷システムを搭載できない場合は、市販の水冷式PCを新調するか「自作PC」の制作を検討してみる必要があるでしょう。
水冷式PCなら自作がおすすめの理由
水冷式PCを新調する場合は、市販品の購入より自作PCの制作をおすすめします。価格やカスタマイズ性などの点で、自作PCのほうが有利だからです。
自作すると最安値のパーツを選べるので、市販の水冷式PCより安く構築できます。予算に余裕がある場合は、最新の水冷用パーツも搭載すると市販モデルより高い冷却性能を実現可能です。グラボやケースにこだわりたい場合も、自作PCのほうがいいでしょう。
おすすめの水冷CPUクーラー
本章では、コストと冷却性能のバランスが取れた簡易水冷タイプのCPUクーラーを、ドスパラ・ツクモ・パソコン工房から1点ずつ紹介します。なお、いずれもIntelとAMD双方のCPUに対応しています。
- ドスパラ|Corsair iCUE H100i RGB PRO XT
- ツクモ|MSI MAG CORELIQUID 280R
- パソコン工房|ASUS TUF GAMING LC 240 ARGB
引用元:ドスパラ
ドスパラの「Corsair iCUE H100i RGB PRO XT」は、240mmラジエーター1基と、120mmファン2基を搭載した簡易水冷CPUクーラーです。税込10,980円で購入できるお手頃さでありながら、静音性と冷却性能を両立させています。初めて水冷式PCを導入する人におすすめです。
引用元:ツクモ
ツクモの「MSI MAG CORELIQUID 280R」は、280mmラジエーター1基と、140mmファン2基を搭載した簡易水冷CPUクーラーです。実質280mmの大きなファンサイズで、余裕のある冷却性能を実現しています。税込13,290円の本モデルのほかに、ラジエーターが240mmと360mmのモデルもあるので、コスパを追求したい人におすすめです。
引用元:パソコン工房
パソコン工房の「ASUS TUF GAMING LC 240 ARGB」は、120mmファンを2基を搭載した簡易水冷CPUクーラーです。「TUF Gamingラジエーターファン」による優れた静音性や、補強されたチューブで耐久性が向上しています。税込14,800円と少し高めではありますが、ハイスペックなCPUを搭載したい人におすすめです。
簡易水冷一体型グラボも存在する
CPUだけではなく、グラボも水冷化することができます。ただし、グラボはCPUと違って自身で水冷クーラーを取り付けるのが非常に難しいので、「簡易水冷一体型グラボ」がおすすめです。簡易水冷一体型グラボの概要やおすすめ製品については、次の記事で詳しく解説しているので参考にしてみてください。
まとめ
水冷式PCは、冷却性能や静音性が空冷式PCより高いので、ハイエンドなCPUやグラボを搭載する場合におすすめです。一方で、空冷式より高価になることや、メンテナンスの手間がかかることが気になります。水冷式PCの導入を検討する場合は、メリットとデメリットを理解したうえで、自作PCにぜひチャレンジしてみてください。