VTuberの歴史と変遷~初期から現在までの有名VTuberをおさらい
VTuberの歴史
VTuberの元祖は2016年末から活動を開始したキズナアイだといわれています。彼女は「世界初のバーチャルYouTuber」を自称しており、彼女の登場がVTuberという言葉が生まれるきっかけとなりました。
キズナアイ誕生の背景には、さまざまなムーブメントがあると考えられます。
- 1990年代中盤から後半に起こったバーチャルアイドルブーム
- 2007年にリリースされたDTMソフトウェアのキャラクターである初音ミクの活躍
3DCGなどで描かれたキャラクターにリアルタイムで声をあてたバーチャルアイドルや、合成音声を使っての歌唱やトークで話題を集めた初音ミクをはじめとするボイスロイドの人気が、VTuberの誕生に大きく寄与したことは間違いありません。
キズナアイが活動を開始したばかりのころは、パイオニアである彼女のほか、キズナアイに近い活動をしていたキャラクター数名がVTuberとして位置づけられる程度でした。しかし、VTuberのランキングサイト『バーチャルYouTuberランキング』を運営するユーザーローカルによると、2017年には1,000人に達していたとのことです。さらに2018年には6,000人にまで増え、現在は1万人を超えるVTuberが活動しています。
昨今では、これまでVTuberとして活動していなかった動画投稿者もVTuberに転身しており、ゲーム『モンスターハンターダブルクロス』の動画に参加していた有名プレイヤーのライ兄貴もVTuberとして活動をはじめるなど、参入者は引き続き増加傾向にあります。
●参考資料:バーチャルYouTuberランキング
VTuberの始まり
キズナアイが登場する以前の2011年には、海外でバーチャルブロガーと呼ばれることになる3DCGキャラクターのAmi Yamamotoが、現在のVTuberとほぼ同じ形式でYouTubeに動画を投稿していました。
Ami Yamamotoはロンドン在住の日本人という設定で、自身の日常をビデオブログとしてYouTubeに投稿するスタイルをとっています。彼女は現在も動画の投稿を続けており、チャンネル登録者数は15万人、総再生回数約811万9823回と、トップクラスの人気を誇っています。
ほかにも2014年には、株式会社ウェザーニューズが天気予報番組『SOLiVE24』で、ウェザーロイドのAiri(アイリ)を登場させており、彼女も現在ではVTuberとして認知されています。
同じ2014年には、ニコニコ動画を中心に活動する、みゅみゅが初音ミクのCGモデルであるMMDを使った動画の投稿を開始しています。こちらも現在のVTuberに近いスタイルの動画となっており、2017年から2018年にかけてはオリジナルキャラクターを使ったVR動画もアップしています。
みゅみゅも現在は活動の場をYouTubeに移し、チャンネル登録者数1万5,400人、総再生回数7万897回と古くからのファンに支持され続けています。
キズナアイの登場までVTuberと呼称されていなかっただけで、彼女たちは昨今のVTuberと同様のスタイルで活動していたのです。
2016年の動向
画像引用元:YouTube
2016年末から2017年初頭にかけては、キズナアイが話題を独占していました。
2016年の11月29日に、キズナアイがはじめて動画を投稿。投稿をはじめた当初から週5回のペースで動画をアップしていたことなどもあり、すぐにチャンネル登録者数1,000人を達成して話題を集めましたが、まだまだマイナーな存在でした。
しかし、熱狂的なファンがキズナアイの動画に英語の字幕をつけはじめたことをきっかけに、海外での認知度が高まり、チャンネル登録者数は数千人へと達しました。
そんな折、2017年の1月に投稿した動画で「私、常に全裸みたいなものなんで」と語ったことが問題になったのかアカウントが停止されてしまいます。アカウントが停止されている間は、ニコニコ動画に活動の場を移し、エンタメカテゴリで1位を獲得しました。
同年2月にYouTubeのアカウントが復活すると、ニコニコ動画での人気や、アカウントの停止がネットで話題になったこと、英語字幕をつけた動画が海外で人気を博したことなどが重なり、チャンネル登録者数は1万人を突破。加速度的にチャンネル登録者数を増やしていき、2017年4月下旬には50万人を超えました。
2017年の動向
画像引用元:ニコニコ大百科
キズナアイのブレイクを受けて、2017年中盤から後半にかけて、多くのVTuberが活動を開始しました。
8月には電脳少女シロが、10月にはミライアカリがそれぞれ活動を開始し、キズナアイとともに人気を博します。さらに11月には、可愛い女の子の外見ながら声はおじさんという異色のVTuber、バーチャルのじゃロリ狐娘Youtuberおじさんが活動を開始。12月には輝夜月が活動を開始し、ハイテンションな絶叫で注目を集めました。
キズナアイ、電脳少女シロ、ミライアカリ、バーチャルのじゃロリ狐娘Youtuberおじさん、輝夜月の5人は、視聴者から”バーチャルユーチューバー四天王”と呼ばれ、VTuberブームを牽引することとなります。
また、電脳少女シロは12月にバトルロイヤルゲーム『PUBG』の実況動画を投稿し、1週間で250万再生を記録するなどVTuberによるゲーム実況というジャンルを確固たるものとしました。
電脳少女シロ
画像引用元:YouTube
電脳少女シロは株式会社アップランドがプロデュースしているVTuberです。2017年6月から活動を開始し、12月に『PUBG』のゲーム実況で大ブレイクしています。
英語が堪能なことから日本語訳されていない海外のゲームも実況するなど、さまざまなゲームの実況で人気を博しています。また、「バーチャル界のアイドルとして武道館ライブを行うことを目指している」と本人が語っているように、”歌ってみた”動画などもアップしています。
2020年8月現在のチャンネル登録者数は70万2,000人とトップクラスの人気を誇ります。
輝夜月
画像引用元:YouTube
2019年に日清カップ焼そばのCMに出演し、そのテンションの高さで話題を集めた輝夜月。彼女は2017年12月4日に初めて動画を投稿し、2週間でチャンネル登録者数2万人を達成するなど、瞬く間に人気VTuberの仲間入りを果たしました。
現在はソニー・ミュージックレーベルズのSACRA MUSICに所属しており、ハイテンションなフリートークを中心とした動画を投稿しています。
詳細な設定は作られていませんが、本人へのインタビューによると誕生日は10月30日で143歳。血液型はクワガタ、好きな食べ物はチーズと、不思議なキャラ設定も人気の秘訣といわれています。
チャンネル登録者数は、2020年8月現在で99万5,000人と、キズナアイに次ぐ人数です。
2018年の動向
2018年になると、REALITYやバーチャルキャストといったVTuberとしての配信が簡単に行える動画配信サービスがスタートします。また、VTuberとして活動するためのアバターを簡単に作成できるカスタムキャストなどのアプリも登場し、VTuberになるためのハードルが一気に下がりました。
環境が整備されたことで、個人で活動をはじめるVTuberが増える一方で、現在多くのVTuberが所属する『にじさんじ』や『ホロライブ』といった企業が台頭し、企業プロデュースによるVTuberがチャンネル登録者数や再生数を伸ばすようになります。
月ノ美兎
画像引用元:YouTube
月ノ美兎は『いちから株式会社』が運営するVTuberのグループ『にじさんじ』に所属するVTuberです。2018年1月に『いちから株式会社』の公式バーチャルライバーオーディションに合格し、2月にVTuberとしてデビューしました。
16歳の高校2年生という設定で、「バーチャル界の委員長」を自称しています。委員長を自称するだけあって、「わたくし」という一人称を使うなど、真面目で清楚な語り口が特徴ですが、自身の18禁同人漫画に関するネタを扱うことも多く、そのギャップで人気を集めています。
また、『ムカデ人間』や『フリークス』などマニアックな映画も視聴しており、サブカルに関する深い知識でコアなファンも獲得しています。
チャンネル登録者数は、2020年8月の時点で、59万人。積極的な動画投稿により、勢いを増しているVTuberの1人です。
夏色まつり
画像引用元:YouTube
夏色まつりは、『カバー株式会社』が運営するVTuberのグループ『ホロライブ』に所属するVTuberです。2018年5月に専属VTuberオーディションに合格して6月にデビューしました
チアリーディング部に所属する新入生で、元気で明るく誰とでも仲良くなれる女の子という設定でデビューし、当初は設定とはかけ離れたハイテンションなトークで視聴者を驚かせましたが、その後は、おとなしい妹キャラを演じて自己紹介をしてみたり、「まつりママ」と称してお姉さんキャラを演じたり、他のVTuberの声真似をしたりと、高い演技力を披露して話題を集めました。
現在はデビュー当初の素に近いトークをベースにしつつ、他の同性VTuberに求愛するなど、きわどい発言で人気となっています。
チャンネル登録者数は、2020年8月の時点で51万9000人と根強い人気を誇ります。
2019年の動向
2019年になるとVTuberの総数は1万に迫る勢いとなり、その結果、人気が分散する傾向が見られるようになりました。
1本あたりの動画の再生数が伸びにくい状況が生まれたことで、広告収入をベースとしていたVTuberの多くはライブ配信を増やし、視聴者が投げ銭で直接VTuberを支援できるスーパーチャット(スパチャ)での収入を増やす方向へと舵を切ります。
2019年にデビューしたVTuberは当初からライブ配信に力を入れており、2019年12月末にデビューした桐生ココは、ライブ配信を積極的に行うことで、翌年には毎月1,000万円近いスパチャを獲得する人気VTuberへと成長しました。
また、それまで男性が中心だったファン層にも変化が現れ、男性アバターのVTuberが女性ファンを獲得するようになります。『にじさんじ』に所属している男性VTuberの叶は、デビューは2018年ですが、この年に女性ファンの増加によりブレイクを果たしました。
桐生ココ
画像引用元:YouTube
桐生ココは『カバー株式会社』が運営するVTuberのグループ『ホロライブ』に所属するVTuberです。人間の文化に興味をもち、異世界から日本に語学留学中の子どものドラゴンという設定で、元気でテンションが高いトークが特徴です。
ライブ配信を頻繁に行いファンとの交流を大切にしていることもあり、多くのファンから支持されています。結果的に古くから活動するVTuberを抑え、スーパーチャットの収入はトップクラスの金額となり、毎月1,000万円近い金額を受け取っています。
2020年8月現在のチャンネル登録者数は55万6,000人と、2019年末にデビューして以来、わずか8か月で50万人を越えるチャンネル登録者数を達成。最も勢いのあるVTuberの1人です。
叶
画像引用元:YouTube
叶は『いちから株式会社』が運営するVTuberのグループ『にじさんじ』に所属する男性アバターのVTuberです。ふわふわの髪にネコのぬいぐるみを抱いた姿が印象的で、『PUBG』や『フォートナイト』といったバトルロイヤル系のゲーム実況動画を主に投稿しています。
甘いボイスで女性ファンから絶大な支持を集め、2020年8月の時点で、男性VTuberとしてはトップクラスの34万2,000人というチャンネル登録者数を達成しています。
デビューは2018年ですが、2019年から勢いを増し、ライブ配信で多額のスパチャを獲得するようになります。2020年現在では、毎月500万円近い金額を受け取っており、スパチャの獲得金額では、男性VTuberでは肩を並べる者はいないほどです。
2020年・最近のVTuberの動向
2020年に入ってから、VTuberの収益化が停止される問題が次々と発生しました。収益化が停止された理由は、チャンネル収益化ポリシーに反した「繰り返しの多いコンテンツ」と「再利用されたコンテンツ」の動画が投稿されたためだったようです。
たとえば、同じような背景でキャラクター(VTuber)がただトークをしているだけといった構成の動画が「繰り返しの多いコンテンツ」、トーク内容が異なっていたとしても構成が似ているため「再利用されたコンテンツ」と判断されたためです。
新たにVTuberとして活動する場合は、同じ背景でトークをするだけの単純な構成の動画は控え、ゲーム実況や商品紹介、チャレンジ系の動画など、バラエティに富んだ動画を配信する必要があります。そのためには、機材や備品の購入なども必要になるため、収益化を前提に個人がひとりでVTuberとしての活動を始めるためのハードルは高くなっているといえるでしょう。
一方で、アバターを作成するためのアプリや、配信を行うためのアプリは充実してきているので、収益化を前提とせず、トーク中心のVTuberとして活動を開始することは容易になりました。
まとめ
2016年末にキズナアイが登場してから約3年半で、日本国内で活動するVTuberの数は1万人にまで増えました。この間にさまざまな人気VTuberが生まれ、トレンドもトーク中の動画投稿からライブ配信中心へと変化して行きました。VTuberをプロデュースする企業も増加傾向にある中、今後どんなVTuberが登場し、どのような動画が人気を博すのか楽しみです。
※本記事に記載したチャンネル登録者数や再生回数は、2020年8月現在のものです。