PCゲームをするなら「Ryzenはやめとけ」って本当?ゲーム向けCPUの選び方
ゲーミングPCを組む際はCPUとGPUとの組み合わせが重要ですが、PCゲーム向けのCPUを選ぶとき「IntelとAMD、どちらを選ぶべきか」と迷う方も多いのではないでしょうか。特にAMDが手掛けるRyzenは「PCゲームをするならやめておいた方が良い」という声が少なからず聞かれます。
結論から言えば「ゲーム用途の場合は、IntelよりもAMDを優先して選ぶ理由は無い」のですが、本当にRyzenはゲームに不向きなのでしょうか。そこで今回は、その理由を1つ1つ解説します。
PCゲームをするなら「Ryzenはやめとけ」って本当?
筆者は現役でRyzenを使っています。そんな筆者としては「Ryzenがゲームに不向きだったのは昔の話。でもゲーム用途でRyzenを優先して選ぶ理由も特に無い」と考えます。
Ryzenは登場当初「シングルスレッド性能は苦手だが、マルチスレッド性能に優れた多コアCPU」という位置付けのCPUでした。こうした性能のCPUは、ただ単純にゲームをするには不向きです。ゲームではシングルスレッド性能も重要なためです。
2022年現在でも「Ryzenはゲームにどちらかと言えば不向き」という位置付けは変わっていません。理由はIntelが第12世代 Core CPUを投入し、新アーキテクチャ採用によってシングルスレッド性能がさらに大きく向上したこと。特にハイエンドになればなるほど、Ryzenとの差が大きく、『エルデンリング』『FF14』など処理が重いゲームではベンチマーク測定をすると、数値に違いが現れます。
引用元:エルデンリング公式
逆に言えば、処理性能がさほど要求されないゲームであれば差が小さいのもまた事実です。具体的には『VALORANT』などのタイトルではどちらを選んでもさほど遜色はないでしょう。
引用元:VALORANT公式
ベンチマーク例は記事の後半で紹介します。
総論:PCゲームをするならCPUは「Core i5-12400」以上がおすすめ
PCゲーム向けにゲーミングPCを組むならば、6コア12スレッドの「Core i5-12400」以上のものがおすすめです。
特におすすめなのが省エネ高効率なEコアが搭載された「Core i7-12700」で、12コア20スレッドながら発熱も控えめで扱いやすいCPU。ハイエンドGPUを搭載しても十分にその力を発揮してくれます。
主なPCゲームの推奨スペック(CPU/GPU)
ここでは主なPCゲームを例にして、必要とされるPCスペックを紹介します。ゲーミングPCを組む場合に、CPU選びの目安となるでしょう。
FF14 | CPUはCore i5-12400以上がおすすめ
引用元: https://jp.finalfantasyxiv.com/lodestone/
国内外から評価の高いファイナルファンタジーシリーズのMMORPG。2013年のサービス開始よりアップデートを重ねたことで、当初よりも要求スペックは高いです。
CPU | Intel® Core™i7 3GHz 以上 |
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GPU | NVIDIA® Geforce® GTX970 以上 AMD Radeon™ RX 480 以上 |
RMA(メモリー) | 8GB以上 |
ストレージ(SSD/HDD) | 80GB以上 |
OS | Windows® 8.1 64 bit Windows® 10 64 bit Windows® 11 64 bit |
引用元: https://jp.finalfantasyxiv.com/system_requirements/
CPUがi7となっていますが、世代の表記がない点がCPU選びではネック。実際には公式の推奨スペックよりも、FF14「推奨パソコン」を参考にするのがよりおすすめ。
推奨パソコンでは6コア12スレッドのCPUが選ばれていることから、第12世代なら「Core i5-12400」でも大丈夫でしょう。GPUはフルHD環境を想定するのであれば、RTX3060辺りがおすすめです。FF14の推奨PCに関しての過去記事は下記をご覧ください。
フォートナイト | CPUはCore i5-12400以上がおすすめ
引用元: https://www.epicgames.com/fortnite/ja/chapter-3-season-3
バトルロワイヤル系TPSのフォートナイトは、比較的軽めのゲームタイトルといわれています。
推奨スペック(クオリティプリセット「最高」用要件)
CPU | インテル Core i7-8700 AMD Ryzen 7 3700x、または同等のプロセッサ |
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GPU | Nvidia GTX 1080 AMD Radeon RX 5700 XT または同等のGPU |
RMA(メモリー) | 16GB RAM以上 |
ストレージ(SSD/HDD) | NVMe SSD(容量については言及無し) |
OS | Windows 10 64-bit |
引用元: https://www.epicgames.com/help/ja/fortnite-c75/c118/pcmac-a3332
i7-8700は第8世代の6コア12スレッドのCPUなので、第12世代の6コア12スレッドである「Core i5-12400」で同等以上になります。こちらのCPUと組み合わせるのであれば、RTX3050やRTX3060辺りが良いでしょう。
仮に8コア16スレッドのRyzen 7 3700Xと比較した場合でも、「Core i5-12700」であれば、12コア20スレッドで上回ることができます。フォートナイトの推奨PCに関しての過去記事は下記をご覧ください。
Apex Legends | CPUはCore i7-127000以上がおすすめ
引用元: https://www.ea.com/ja-jp/games/apex-legends
バトルロワイヤル系FPSであるApex Legendsは、状況によってフレームレートが変動しやすいです。
推奨スペック(60fps)
CPU | Intel i5 3570Tおよび同等品 |
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GPU | Nvidia GeForce GTX 970 AMD Radeon R9 290 |
RMA(メモリー) | 8GB |
ストレージ(SSD/HDD) | 22GB以上の空き容量 |
OS | Windows 7 64ビット版 |
引用元: https://www.ea.com/ja-jp/games/apex-legends/about/pc-system-requirements
公式には60fpsでの環境を推奨環境としていますが、この手のゲームタイトルで60fpsは物足りないのもまた事実です。
快適にApex Legendsをプレイできる「フルHD低設定で144fps以上安定」の場合には、GPUにはRTX3060Ti以上が視野に入ってきます。
RTX3060Tiとの組み合わせでは、「Core i7-12700」辺りが候補となるでしょう。Apex Legendsの推奨PCに関しての記事は下記よりご覧ください。
VALORANT | CPUはCore i3-12100以上がおすすめ
引用元:https://playvalorant.com/ja-jp/
2020年に登場した超軽量級FPSであるVALORANTは、逆に動かないパソコンを見つけるのが難しいのでは?と思わせる動作の軽さが魅力。ハイスペックなゲーミングPCが無くともハイレベルな勝負が出来ます。
推奨スペック(ハイエンドスペック/144fps以上)
CPU | Intel i5-9400F 2.90GHz Ryzen 5 2600X |
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GPU | GTX1050Ti Radeon R7 370 |
RMA(メモリー) | 4GB |
ストレージ(SSD/HDD) | 約26GB(筆者PC上の容量で確認) |
OS | Windows 7/8/10 |
引用元:https://playvalorant.com/ja-jp/specs/
第12世代Intelであれば「Core i3-12100」以上とGTX1650相当のエントリークラスGPUがあれば200fps以上は楽に出してくれますので、安く済んだ分は高リフレッシュレートモニターに投資しましょう。VALORANTの推奨PCに関しての記事は下記からご覧ください。
筆者の構成例 | Ryzen 7 5800X3DでVALORANTで1200FPS
CPU | Ryzen 7 5800X3D |
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GPU | GIGABYTE AORUS GeForce RTX 3090 XTREME WATERFORCE 24G |
RMA(メモリー) | DDR4-3200 32GB |
CPUクーラー | サイズ 超天→DeepCool AK620(更新後) |
OS | Windows 10 Pro |
筆者のパソコンでゲーム中のフレームレートを計測してみます。筆者は2022年7月現在、Ryzenを使用しているのですが、結論から言えば『VALORANT』であればIntelと遜色ないものの、『FF14』ではIntelに換装するとより高いベンチマーク結果を得られたであろうと感じます。
VALORANTの練習場においては最高設定でも1200fpsを記録する場面もあり、500fps以上は余裕という印象です。
筆者の構成例 | Ryzen 7 5800X3DでFF14ベンチマークで『非常に快適』
次にFF14ベンチマーク。設定はフルHD最高品質の仮想フルウィンドウ。
こちらもフレームレートを観察したところ140fps以上でほぼ安定し、高い所では300fps以上となりました。
結果はスコア33000程度に。
レポート出力を確認したところ、ベンチマーク全体を通しての平均フレームレートは226fps、ロード直後に記録されたと思われる最低フレームレートは85fpsとなっていました。
このようにゲーム性能が強化された5800X3Dですが、実は放熱性が悪くなった分動作クロックが下げられており、シングルスレッド性能は通常の5800Xのほうが高くなる傾向にあります。
そのためCPUパワーが重視されるゲームタイトルでは、第12世代 Intelなどに劣る面が大きいです。もしこの記事を読んでいる方がゲーミングPC向けのCPU選びに迷っているならば、素直に第12世代 Intelを選んだ方が良いでしょう。
まとめ
第12世代のIntel Core CPUはシングルスレッド性能が大きく向上しており、PCゲーム向けCPUとしてはもっとも優れたCPUと言えます。Core i5-12600K以上のモデルでは、高パフォーマンス型のPコアの他に、高効率型のEコアを内蔵したハイブリッド仕様であることも特徴の一つ。
このEコアは軽い作業を担当することができ、例えば「ゲームはPコア+ボイスチャットはEコア」という負荷が違うマルチスレッド作業を行うのに適しています。
2022年現在では、Intel製CPUは「ハイエンドになるほど」おすすめで、特別な理由がない限りRyzenを選ぶ必然性はゲーミング用途としては薄いでしょう。