キータッチが軽やかでかわいいキーボードを作りたい! おとはすが自作キーボードに挑戦!
【おとはすの自作やろうぜ!! 第9回】
2021年4月からはプロゲーミングチーム「魚群」にストリーマーとして参加するなど、アイドル以外の活動の幅もさらに広げているおとはす。今回は、「自作PCは組んだことがあるけれど、自作キーボードは未知の世界!」ということで、自作キーボードの聖地と言われている秋葉原の遊舎工房さんへ! お店の方に教えていただきつつ、自作キーボードに初挑戦してきました!
十束おとはさん
アイドルグループ「フィロソフィーのダンス」メンバー。愛称「おとはす」。ファミ通4代目ゲーマーズエンジェルとしても活動し、ゲーマー・自作PC好きアイドルとして活躍中。2020年にメジャーデビュー。7月には約1年半の有観客ワンマンライブ「Dance with Me TOUR 2021」を開催。8月18日に発売される3rdシングル『ダブル・スタンダード』は、TVアニメ『魔法科高校の優等生』エンディングテーマに! アイドルとしても大躍進中。
YouTube「おとはすチャンネル」:https://www.youtube.com/c/otohasuchannel
Twitter:@ttk_philosophy
Instagram:https://instagram.com/otohasu/
フィロソフィーのダンスHP:https://danceforphilosophy.com
遊舎工房さん
世界でも珍しい自作キーボードの専門ショップ。自作キーボードキットの販売のほかに工作室も運営し、キット選びから組み立てまでサポート。工作室は2時間1500円。延長料金1時間500円で工作室にある工具などは自由に使える。また、主に個人を対象にしたレーザーカット、UVプリントサービスも実施。自分でデザインしたオリジナルキーキャップなども作成できる。
Twitter:@yushakobo
遊舎工房HP: https://yushakobo.jp/
自作キーボードの聖地・遊舎工房におとはす降臨!
秋葉原のほど近くの末広町にある、日本初の自作キーボード専門店・遊舎工房さんに到着! 店内には珍しいキーボードやパーツがあふれていて、お店に入るなり、「かわいい! すごい!」とテンションが上がるおとはす。まずは遊舎工房さんに自作キーボードについていろいろと教えていただきました。
遊舎工房:店内にはキーボードができあがった状態のサンプルが並んでいますが、基本的にはキットで必要なパーツを自分で選んで組み立てていきます。
おとはす:コンパクトなキーボードが多いですね。
遊舎工房:一般的にみなさんが使っているキーボードは「フルキーボード」といって、「Enter」キーの右側に、「Delete」や矢印などのキーがあり、その右に数字のテンキーが並んでいます。エンジニアの方などはコンパクトなキーボードを好む方が多いので、必要なキーだけを残して最短距離で動かせるようになっています。
おとはす:なるほど。エンジニアさんたちのキーボードはコンパクトなんですね。
遊舎工房:そういう方が多いですね。説明すると、テンキーが省かれたものが「テンキーレス(TKL)」または「80%」といって、これは市販のキーボードでもよく見かけるタイプです。さらに「Enter」キーの右側全部とファンクションキーをなくしたものが「60%」といわれているものです。エンジニアなどに好まれていて、当店で扱う多くの製品がこのサイズです。
市販では、PFUのHappy Hacking Keyboard(HHKB)というのが有名な60%のキーボードですね。さらに数字キーも省いた40%などもあります。キーボードによって細かい配列はさまざまなので、50%や65%、片手用などいろいろなものがあります。
おとはす:左右が分かれているキーボードもありますね。
遊舎工房:左右分離できるタイプは特に人気があります。エンジニアの方は長時間キーを打つので、窮屈な姿勢でなく自然な位置に両手を置いて入力できるほうが疲れないんですよ。左右分離型は市販品にはあまりないので、自作する方が多いですね。
おとはす:お客さんはやっぱりエンジニアの方が多いんですか?
遊舎工房:エンジニアも含めキーボードを仕事道具として使われている方が多い印象ですが、ゲーマーの方もいらっしゃいますよ。
おとはす:私のように、かわいいキーボードが作りたいという人もいますか?
遊舎工房:たくさんいらっしゃいます。こちらのコーナーも見てください。
おとはす:なんだかカラフルですね! 中にはリップパレットみたいなのもあってかわいい!
遊舎工房:この化粧品のようなキーキャップはSNSでかなりバズっていたみたいです。
おとはす:いろいろな種類があって楽しいですね。値段の違いはどういう理由があるんですか?
遊舎工房:素材や印字、加工方法の違いなどです。素材で言うと、ABS樹脂でできているものは比較的安価で成型しやすく発色もいいのですが、使い込むと表面がテカってしまいます。対してABS樹脂よりも高価なものが多いPBT樹脂は比重が重くしっかり打鍵できて、使い込んでも表面がテカリにくいです。ただ、値段に関しては製造国やメーカーによっても変わるので、材質だけでは値段を語れない部分もあります。
キーキャップに書かれている文字の印字もいろいろです。「UVプリント」は塗料で印字するのでキレイな色が出せるのですが、使い込むと印字がはがれてくることもあります。「レーザー刻印」はレーザーで表面を浅く削る方法です。「昇華印刷」は熱と圧力で特殊なインクを染みこませて印字するので、基本的に消えることはありません。「2色成型」は異なる色の素材を組み合わせて成型して作ります。素材の色で印字をあらわすので、文字が消えてしまうことはありません。
さらに職人が手作りで製作する「アルチザン」と呼ばれるものは、実用というよりはコレクション系ですが、一点ものなので、キーキャップ1個で数千円するようなものも珍しくありません。
おとはす:キーキャップの世界、奥深いです!!
「アルチザン」と呼ばれる作家さん手作りの1点もののキーキャップ。中には小さい錦鯉が泳いでいるものも!(非売品)
初心者でも作りやすい自作キーボートのパーツとは?
遊舎工房:今日はどんなキーボードが作りたいですか?
おとはす:キータッチは軽やかなほうが良くて、できればキーキャップの色とかを変えてみたいのですが……。とにかくかわいいキーボードが作りたいです!
遊舎工房:初心者でも簡単なのは、はんだ付けをせずに作れるタイプかなと思います。キースイッチがあとで交換できるソケット式のものはいかがでしょうか? 個人の好みが左右するスイッチとキーキャップについては実際に見て、触って選んでいただきたいと思います。実際にキースイッチテスターで打鍵感などを試してみてください。
おとはす:キーを押すとタブレットにスイッチの名前や詳細が表示されるんですね! わかりやすい! そもそも自作キーボードを作るにはどんなパーツが必要なのか、基本的なことを教えてください!
遊舎工房:自作キーボードは複数のパーツを組み合わせて作っていきます。必要なパーツについてご紹介しますね。
【自作キーボードに必要なパーツ】
◎PCB(Printed circuit board:プリント基板) キーボードの基本となる基板。ここにいろいろな部品を組み付けて作成していく。販売されているキットは、部品をある程度セットした形で販売。そこに自分の好みのスイッチなどを組み込むが、はんだ付けが必要になるものやソケット式でスイッチをはめ込むだけのものがある。ソケット式はあとでキースイッチの交換ができる。 ◎ケース 基板をおさめるケースで、PCBにあったものを選ぶ。プラスチックやアルミ、木製などいろいろなものがある。 ◎キープレート キースイッチを固定するプレートで、PCBやレイアウトによって種類が異なる。 ◎キースイッチ 打鍵感の決め手となるもので、重さや押したときの感触などがスイッチによって異なる。個人の好みによるところが大きいので、実際に触ってみるのが一番。 ※遊舎工房さんにはさまざまなキースイッチを押して確かめられる「キースイッチテスター」がある。 ◎スタビライザー シフトやスペースなどの幅広のキーを押すときに、安定して押し下げられるようにする部品。 ◎キーキャップ 見た目を大きく左右するパーツ。好みで左右されるが、使用する基板によって必要となるサイズのキーなどが変わってくる。 |
おとはす:ありがとうございます! 仕組みがよくわかりました!
キースイッチテスターで気に入ったKailh Speed Silver軸のキースイッチに、かわいいイラスト付きのキーキャップをセレクトしたおとはす。そして、ゲーム中のストレス解消のためにぐるぐる回せる、作家さん手作りのハンドスピナー付きキーキャップを発見し、「欲しい!」と追加することに!
遊舎工房さんのアドバイスを受けながら、おとはすがセレクトしたパーツはこちら!
◎おとはすがセレクトしたパーツリスト
基板 | DZ60 RGB V2 | 7480円 |
プレート | DZ60 CNCプレート | 2420円 |
ケース | 60%プラスチッククリア | 3300円 |
キースイッチ | Kailh Speed Silverスイッチ | 2772円 |
キーキャップ | NP PBT Crayon KEYCAPS SET | 9900円 |
キーキャップ | ハンドスピナー付きキーキャップ(委託品) | 2000円 |
スタビライザー | 黒 | 880円 |
合計 | 28752円 |
セレクトしたキーボードのパーツを組んでいこう!
隣接する遊舎工房さんの工作室に移動し、いよいよ組み立て作業スタートです!
おとはす:パーツを並べてみるとこれから組み立てるぞ感が出ますね!(笑)
遊舎工房:最初に基板にスタビライザーを取り付けます。簡易ガイドの画像を見ながら向きに気をつけてください。
遊舎工房:次にプレートを取り付けます。
遊舎工房:そして、キースイッチをはめ込んでいきます。キースイッチの裏側には端子が付いているので、向きを間違わないようにして差し込んでください。パチっと音がするまで押し込んでください。
おとはす:先生、結構硬くて力がいりますね! はまりました!
遊舎工房:いいですね。まずは始めに四隅のキースイッチをはめてプレートと基盤を安定させるのがコツです。ピンが曲がらないようにまっすぐ上から押し込むように気をつけてください。
おとはす:先生、上手くパチッとはまりません!
遊舎工房:プレートも一緒に押し込んでしまった感じですね。横から見てはまり具合をチェックしてみてください。
始めのほうでは「端子が曲がっちゃったかも!」と言いながら、不安げに作業していたおとはすですが、だんだん慣れてきて、黙々とキースイッチをはめていきます。その姿はまるで職人のよう!
おとはす:先生、できました!
遊舎工房:では、スイッチがきちんと動作するか通電のチェックをしてみましょう。
おとはす:LEDが光ってますね! かわいい!
遊舎工房:この基板はLEDが光って色やパターンが変えられるんです。キーコンビネーションで光り方が選択できます。
遊舎工房:問題なさそうなので、この基板をケースにはめ込みましょう。ケースに入れたらネジで固定します。
おとはす:ネジがとても小さいですね! むずかしい!!
遊舎工房:ネジで固定したら、ケースの裏面にシリコンの底面ゴム足を貼り付けます。
遊舎工房:ではいよいよ、キーキャップを取り付けていきましょう。
おとはす:やったー! まずはこのかわいいハンドスピナー付きのキーキャップを付けたいです。ゲームをやっていてストレスがたまったときなどにガンガン回したいので、どこにしよう…。やっぱり左上かな。
遊舎工房:いいですね! あとはキーキャップをはめていくだけです。プレート上に差し込んだキースイッチと合う大きさのキーキャップを選ぶように注意してください。キーキャップのセットの中には、一部サイズの合わないものも含まれています。
おとはす:サイズがあっていれば、ハートやかわいいイラストが印字されているキーキャップでも大丈夫ですか?
遊舎工房:大丈夫です。キーの配置は先ほど通電確認に使用したソフトで自由に変更できるので、お好みで配置してください。
おとはす:できました! なにこれ、超かわいい! ハンドスピナーも回るしLEDも光るし、超打ちやすいです!!
黙々と作業をしていたせいか、完成時にはテンション高めのおとはす。かわいくてクールな仕上がりのキーボードに大満足です。
聖地・遊舎工房でおとはすもハマった自作キーボードの世界!
完成したキーボードを手にしたおとはすと指導してくれた遊舎工房さんに感想を聞いてみました!
──実際にキーボードを作ってみていかがでしたか?
おとはす:今回ははんだ付け作業のないキットでやらせていただいたので、思ったより簡単にできるんだなと思いました。価格も普段、私が使っているキーボードの値段と変わらないので、自分好みのデザインやキータッチにできるならむしろお得な感じがしました。
あとは、今日初めて遊舎工房さんに来てみて、こんなにもいろんなキーボードがあるのに驚きました。実際に作ってみて、自作PCよりは簡単にできるので、PCデスク周りのDIY初心者の人はまず自作キーボードから始めてみるのもいいのかもしれません。
──確かにそうですね。遊舎工房さんにお伺いしたいのですが、自作キーボードにはどんなメリットがあるのでしょうか?
遊舎工房:やはり自分の好みを追求した、こだわりのキーボードが作れることだと思います。実は私自身もまったく違う業界で働いていたのですが、電子工作が得意だったこともあり、自分のこだわりのキーボードを作ってみたことがきっかけで、ついには店まで持ってしまいました(笑)。
おとはす:それはすごい行動力です!!
遊舎工房:今も販売しているこのアイテムが、私が最初に作って販売したキーボードです。このキーボードがたまたま売れたことをきっかけに通販でパーツの販売などを行っていたのですが、お客様から「見学に行きたい」「実際にサンプルが見たい」という声をたくさんいただくようになり、「自作キーボードの世界をもっと広めたい」と実店舗での販売、その後には工作室の開設に至りました。世界的に見ても自作キーボード専門店というのは珍しいと思います。
おとはす:素敵なお話ですね! 工作室がついているのも特徴だと思うのですが、どうして工作室を開こうと思ったのですか?
遊舎工房:組み立てに不安を持っていたり、買ったけど作れなくて置いたままだったりするお客さまも少なからずいらっしゃったんです。売るだけでなく、作り上げるまでサポートできればと思って作りました。
おとはす:他にもいろいろなサービスがあるんですよね。
遊舎工房:レーザーカッターやUVプリンターもあるので、お客様が作成したデータで、好みのオリジナルキーキャップを作れるサービスも行っています
おとはす:私もやってみたいです。オリジナルのキーキャップを作れば、自分だけのオリジナルキーボードをさらに極めていけそうですね!
遊舎工房:ぜひ、かわいいキーボードをさらに極めていってください!
おとはす:はい! キーボードは一番使うアイテムなので、もっとこだわっていきたいです。次はフルスケルトンの光るキーボードを作ってみたいです!
こだわったハンドスピナーを、「楽しい〜!」と嬉しそうに何度も回していたおとはす。自作キーボードの世界の入口を体験して思ったよりも手軽にできることを知り、俄然、自作キーボードに興味が湧いたようです。
この記事を見て「自分もこだわりのキーボードを作りたい!」と思ったあなた、すでにキーボード沼にはまりはじめているかも……!?
PHOTO BY_橋本千尋