「はじめて自作」第21回 これさえ見ておけばお店でも安心!初めての自作で知っておくべきパーツのポイント – CPU編
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自作パソコンの構成を考えたり、お店で実際にパーツを購入する時に必要なのが、「各パーツのスペックの見方と選び方」です。今回は、パソコン全体の性能を左右する、『CPU』についてです。
CPUのスペックを見る上で必要な知識
CPUの性能を知るうえで、まず基本的なものには以下があります。
①コア数:
CPUの物理コア数です。物理コアとは、CPUが実際演算を行う中心部分で、ここが「2コア」の場合、「1つのCPUに2つのコア」があることを示します。
②スレッド数:
スレッドは、「同時に行える処理の数」です。物理コアが「2コア」で、ここが「4スレッド」の場合、1つのコアで同時に2つの処理ができることを示します(1つのコアで同時に処理できる数は今のところ2つです)。
③キャッシュ:
CPUの中にある、一時的にデータを記憶しておける場所です。
④ベースクロック(動作周波数):
CPUがデータを処理する速さを表します。
⑤TDP:
Thermal Design Power(熱設計電力)の略で、CPUの最大放熱量を表します。
⑥ソケット:
CPUの形状です。マザーボードやCPUクーラーを選ぶときに重要になります。
また、CPUには、その性能を上げるためのいくつかの機能があります。まずは、「オーバークロック」です。その名の通り、CPUの持つ最大の動作周波数を引き上げることを言います。以前は自己責任で行うものでしたが、今はメーカーがオーバークロック対応のCPUをラインナップしていたり、そのためのツールを公開していたりと、「メーカー公認の仕様」になっています。
次に、「ブースト」です。オーバークロックとは異なり、必要時(たくさんの演算処理が必要になったとき)に、動的に動作周波数をベースクロックから引き上げる機能です。例えて言えば、料理をしているときに一時的に火力をあげ、仕上がりを早くするような機能です。ブーストに対応しているCPUは、スペックにベースの周波数と最大周波数が記載されています。
「マルチスレッド」は、先のスレッド数で説明した通り、1コアで2つの演算処理を行うことです。工場で作業を行うときに、1つの作業台につき人員を2名配置して、作業時間の短縮化をはかるのと同じです。
これらの機能には、メーカーごとに名前がついていたりしますので、次のメーカーごとの違いで説明します。
CPUの2大メーカー「Intel」と「AMD」の違い
パソコンを使ったことがあれば、おそらくこの2つのメーカーは聞いたことがあると思います。CPUの2大主要メーカー、「Intel(インテル)」と「AMD(エーエムディー)」です。 この2社が現在製造しているそれぞれのCPUには、まず性能差はほとんどありません。どちらが速くて、どちらが壊れにくい…といったことはなく、両社ともラインナップしているCPUに、それぞれ「性能ごとの製品ブランド」と、それぞれの「機能や特徴」があります。メーカーとしてのCPU特徴を強いて言えば、Intelは業界のシェアが高く、AMDはコストパフォーマンスが高い、という点かと思います。
Intel製CPUのブランドと機能
Intel製の一般ユーザー向けCPUには、現在「Core(コア) i7/i5/i3」、「Pentium(ペンティアム)」、「Celeron(セレロン)」の製品ブランドがあります。ブランドごとに大きく異なるのは、「全体的な性能」と、「機能」、そして「価格帯」の3つです。
・性能と価格帯
-Coreシリーズ:
現在主力の製品ブランドで、搭載している機能やスペックの違いにより、さらに「Core i7」「Core i5」「Core i3」の3つに分かれています。価格帯は約\15,000~\50,000くらいと、種類により様々です。
-Pentiumシリーズ:
CoreシリーズのCPUから、一部の機能を非搭載にすることで、\10,000前後の価格帯とコストを抑えています。
-Celeronシリーズ:
上記シリーズからさらに機能を非搭載にすることで、Intelの製品ブランドの中で一番低い価格帯を実現しています。
・機能
Intel製CPUに搭載されている機能はたくさんありますが、その中から主要なものをいくつかピックアップしてみましょう。
-インテル® ターボ・ブースト・テクノロジー
:インテルにおけるブースト機能です。パソコンを使用しているとき、必要に応じてCPUの動作周波数を動的に引き上げたり、ベースの周波数に戻したりします。
-インテル® ハイパースレッディング・テクノロジー
:インテルにおけるマルチスレッド機能です。通常1コアに対し1つの処理スレッドですが、この機能を搭載しているCPUは、倍の処理スレッドを持つため、結果としてパソコンの処理速度が速くなります。
Intel製CPUのスペックの見方と選び方
① 製品ブランド名
② 世代数:ここの数字が大きいほど、最新のCPUです
③ 型番:一般的にここの数字が大きいほど、同じ製品ブランド・世代内で高性能になります
④ 仕様を表すアルファベット
K:オーバークロック対応
S / T:省電力プロセッサ(TのほうがSより省電力)
Intel製CPUのスペック項目は基本以下のようになっています。
*HT:ハイパースレッディングの略
各ブランドごとに、スペック項目がどのようになっているか比較してみましょう。
ゲーム向け、クリエイティブ向けなど、画像映像処理には、Core i7~i5あたりで、クロック数が高くキャッシュ容量が大きめのCPUがおすすめです。Officeソフトなど、ビジネス向けのソフトウェアであれば、Core i5~i3あたりを、逆に、ネットサーフィンなど、ブラウジングやメール、SNS程度しか利用しない、という場合は、Pentium~Celeronあたりでも動作には問題ありません。
AMD製CPUのブランドと機能
次にAMD製のCPUです。Intelに比べ、一般ユーザー向けのCPUブランドの主力は「Ryzen(ライゼン) 7/5/3」になり、ハイエンド向けに「Threadripper(スレッドリッパー)」というブランドがあります。こちらも、ブランドごとに全体の性能と機能、価格帯が異なります。
性能と価格帯
-Ryzen 7:
シリーズ最高性能のブランドで、シリーズ各製品ごとに純正のCPUクーラーが付属しています。グラフィック機能が非搭載なので、グラフィックカードを必ず用意する必要があります。ラインナップにより、約\30,000~40,000の価格帯になります。
-Ryzen 5:
グラフィック機能が搭載されているものと、されていないものがあります。最新の第2世代の製品には、CPUクーラーが付属しています。\20,000をきるものから、\25,000前後の価格帯のものがあります。
-Ryzen 3:
マルチスレッド非対応の代わりに、\10,000台前半と、シリーズ中一番廉価なラインナップです。
-Threadripper:
ゲームや動画・画像編集など、さらにパフォーマンスを求めるユーザー向けCPUです。価格も\100,000を超えます。
・機能
AMD製CPUにも、性能をアップする複数の機能が搭載されています。
-AMD SenseMIテクノロジー:
省電力機能や、リアルタイムでのクロック周波数の調節、使うデータを予測し処理の高速化をはかるなど、CPUの性能を総合的にアップする機能の集まりです。
-AMD Ryzen™ Masterユーティリティ:
RyzenブランドのCPUは、すべてオーバークロック可能で、このユーティリティーでユーザーが自由にカスタマイズできます。
AMD製CPUのスペックの見方と選び方
① 製品ブランド名
② 世代数:ここの数字が大きいほど、最新のCPUです
③ 型番:一般的にここの数字が大きいほど、同じ製品ブランド・世代内で高性能になります。
④ よりスペックが高いことを表すアルファベット
AMD製CPUのスペック項目は基本以下のようになっています。
各ブランドごとに、スペック項目がどのようになっているか比較してみましょう。
こちらも、ハイエンド向けのRyzen 7は、高スペックな構成を要するPCゲームユーザーや高解像度な映像編集やエンコードを行うクリエイティブ向け、それほどグラフィック性能を要求しないゲーム等や静止画編集ならばRyzen 5~3などがおすすめです。両メーカーとも、グラフィック機能を搭載しているCPUをラインナップしたり、処理能力アップや省電力のためにいろいろな機能を搭載しています。その特徴や全体的な性能バランス、予算などを考慮して、最適なCPUを選びましょう。
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次回は「CPUクーラー」
CPUを冷却するために必須のCPUクーラー。その種類は、メーカーの違いから冷却方法の違いなどで多岐にわたります。次回は、CPUクーラーの種類と選び方をお送りします。
★ オマケ:「コードネーム」って何だ?
CPUの記事などを読んでいると、よく「Pinnacle Ridge(ピナクルリッジ)」や「Coffee Lake(コーヒーレイク)」など、聞きなれない単語を目にすることがあると思います。これは、CPUメーカーがまだブランド名や型番が決定していない段階(製品の開発時)の製品に使用している名前です。前者は第2世代Ryzenの開発コードネーム、後者は第8世代Intel CPUの開発コードネームです。CPUは、1つ1つ製品を発売するのではなく、その世代の製品ブランドを数種類まとめて発売します。そのため、便宜上、記事やスペック情報にコードネームが使われることがあります。
※価格帯、スペックなどは2018年7月の情報を元にしております